
芸名|ショートショート『マッチョ華道』
プロボディビルダーとしても世界的な実績を持つ俳優の尾上ケンタウロスさん(30)が来年2月、いけばな尾上流の七代目を襲名する。
華道の稽古を続けながらボディビルダーに憧れ、15歳からマッチョ俳優の道を歩んできた。「前々から両方やれたらうれしいと思っていた。人の2倍努力したい」と意気込む。
また無類のカレー好きとしても知られる尾上さんは、このたびカレー愛を綴った3冊目のカレー本を出版するという。
俳優、ボディビルダー、華道家、そしてエッセイスト。
4足のわらじを履くことになった尾上さんに訊いた。
「4足とも自分ですからね。どれか一つを本業とは考えていません」
――しかし、4つの活動を続けるのは大変では?
「バランスが大事なんです。一本でも浮くとうまく立てませんから」
――3冊も本を出すほど、カレーがお好きなんですね。
「カレーはボディビルダーにとって、めちゃくちゃ都合のいい食べ物なんですよ。肉も野菜も炭水化物もまとめて摂れますから。具材ですか? そうですね、特にニンジンにはうるさいです。一日3本は食べ比べていますから」
尾上さんは大きな前歯を見せて笑った。
――そして、やはりものすごい筋肉ですね。
タンクトップも似合っています。
「でも、タンクトップは甘えなんですよ。上半身だけ見せれば、誰だってそれなりにマッチョに見えるでしょう? 今日は撮影があるということで、わかりやすくタンクトップを着ていますが、自分でも甘えだと思っています」
――なるほど……さすがのプロ意識です。
「胸、肩、背中。もちろん下半身も含めて、身体は全体で評価されるべきですから。まあ僕の場合、下半身にはかなり自信がありますけどね」
尾上さんは立ち上がってくれた。
やはりその巨躯には圧倒される。
――身体づくりは、華道にも通じるものがありますか?
「ありますね。花も人も立ち姿が大事です。上半身だけでなく下半身もしっかり意識すること。これは門弟の方にもお伝えしています」
――今後、新しく挑戦したいことはありますか?
「さすがに5足目は履けませんけどね」
そう言って尾上さんは、緩んだ左後脚の蹄鉄を直した。
「今度は流鏑馬にも挑戦しようと思っています。
なんといっても私は上半身が安定していますから。
弓の扱いも、なんだか昔から得意な気がするんですよね」

(了)
芸名|ショートショート『マッチョ華道』
945文字
先週に引き続き田原にかさんの『毎週ショートショート』に参加しました!
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