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『ゴッホを子守り』-向日葵と海

    ゴッホと卓球をしてるのだが、まじで下手。

    そもそもサーブは自分側のコートにワンバンさせろって言ってるのに、一向にそれをやりゃしない。

    そしてそれを度々注意すると、癇癪を起こして自分の耳をラケットで削ぎ落とそうとする。

    俺はじっとコイツを観察する。
    服は汚い。歯はボロボロ。
    眼光は鈍く光り、口は半開きだ。

    卓球にウンザリした俺はゴッホを連れて、上の階のカラオケに向かう。

    ゴッホは教会で流れてる音楽しか聴かないのだの、はやく家に帰ってデッサンをやりたいだの言っている。
    俺が流行りの曲で盛り上げようと思っても、手拍子のひとつもしやがらない。
    あと飲み物を飲む時のストローを啜る音がうるさい。
    なんていうか不潔感がある。
    盛り上がる気がしなかったので、カラオケは僅か30分で切り上げた。

    ゴッホをバイクの後ろに乗せて、2人で海を見に行こうという事になった。
    そして爽快な風を感じながら海に向かっていたのだが、石につまづいて激しく横転した。

    ゴッホは左手の外側と膝を激しく地面に擦り、血だらけになっている。
    俺は無傷だった。

    ゴッホは激しく呻いている。

    「痛いんだなぁ。」

    俺はそんな事を思うが、はやく海に行かなければ陽が沈んでしまう。
    仕方がなく俺はゴッホをそのまま置いて、ひとり海へと向かった。

    ──海は圧巻の美しさだった。
    居るはずもないイルカやクラゲまで俺には見えた気がした。

    ゴッホを連れて来てれば、人類がまだ見ぬ美しい絵が生まれただろうに。

    俺はヤツを置いてきたことをやや後悔し、電話をかけてみるがゴッホは出ない。


                        完


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