
15年前を振り返ると、15年後が少し見えてくる
15年前と今を比べると、仕事の仕方も、生活の仕方も、かなり変わりました。
スマートフォンは当たり前になり、動画は好きな時間に見られる。
買い物は店の営業時間に合わせなくていい。
銀行に行かなくても振り込みができる。
会議のためだけに移動しなくてもいい。
分からないことは、その場で検索できる。
今ではAIに聞けば、調べるだけでなく、整理したり、考えを深めたりするところまで手伝ってもらえます。
こうして並べると、テクノロジーによって便利になった、というだけではないように思います。
もう一つ、大きな変化があります。
自分でコントロールできる範囲が広がっている。
昔は、テレビ局が決めた時間に番組を見るしかありませんでした。
今は、自分が見たい時間に、見たいものを見ることができます。
昔は、お店が開いている時間に買い物へ行く必要がありました。
今は、深夜でもECで注文できます。
仕事もそうです。
会社に行かなければできなかった仕事が、クラウドやオンライン会議によって、場所を選べるようになりました。
情報収集も、詳しい人に聞いたり、本を探したりしていたものが、検索、SNS、そしてAIによって、自分でたどり着ける範囲が広がっています。
発信も大きく変わりました。
以前は、新聞、テレビ、雑誌、出版社など、誰かに選ばれなければ、多くの人へ自分の考えを届けることは難しかった。
今は、SNSやnoteを開けば、自分で発信を始められます。
ただし、読まれるかどうかまではコントロールできません。
ここは重要です。
自分で発信することはできる。
でも、誰かが読むかどうかは相手の領域です。
提案資料を作ることはできる。
でも、採用するかどうかは相手が決めます。
連絡することはできる。
でも、いつ返信が来るかまでは決められません。
つまり、
テクノロジーによって、自分がコントロールできる範囲は広がった。
でも、他人までコントロールできるようになったわけではない。
むしろ、他人が関与する範囲を正確に理解すると、自分が動かせる領域が見えてきます。
相手が承認するかどうかは決められない。
でも、判断材料を揃えることはできる。
期限を伝えることもできる。
事前に懸念点を聞くこともできる。
結果はコントロールできなくても、その手前には自分で動かせることがかなりあります。
そして、もう一つ大きいのは、こうした変化によって、私たちの世界観そのものが変わっていることです。
好きな時間に動画を見られることが当たり前になると、放送時間に合わせる感覚は薄れていく。
深夜でも買い物ができるようになると、店の営業時間に自分を合わせる感覚も弱くなる。
分からないことをその場で調べられるようになると、「知らないから仕方がない」という前提も変わっていきます。
つまり、テクノロジーは便利さを増やしただけではない。
人が「何を当たり前だと思うか」という世界観を変え、その結果として「何に価値を感じるか」という価値観まで変えている。
以前は便利だったものが、今では当たり前になる。
以前は我慢していたことが、今では不便に感じる。
世界観が変われば、求めるものも変わります。
ここまで考えると、もう一つ面白い問いが生まれます。
今、私たちが他人に委ねているものは何だろう。
病院へ行かなければ分からないこと。
専門家に聞かなければ判断できないこと。
修理業者に見てもらわなければ原因が分からないこと。
会社や上司に委ねているキャリアの機会。
学校や塾に委ねている学習設計。
不動産会社に聞かなければ分からない住宅の価値。
行政に問い合わせなければ分からない手続き。
今はまだ、自分だけでは判断できないことがたくさんあります。
でも、これらも15年後にはどうなっているでしょうか。
AI、センサー、ロボット、データ連携。
さまざまなテクノロジーによって、
「分からないから誰かに聞く」
「できないから誰かにお願いする」
「相手の都合に合わせる」
という領域の一部が、また自分の側へ移っているかもしれません。
そして、その変化が進めば、世界観もまた変わります。
今は「専門家に任せるのが普通」と思っていることが、15年後には「なぜ自分でできないのか」と思われているかもしれない。
今は「待つしかない」と思っていることが、「すぐできるのが普通」に変わっているかもしれない。
そう考えると、新規事業にも一つの見方ができます。
今、顧客は何を他人に委ねているのか。
そして、
それは本当に、これからも他人に委ね続ける必要があるのか。
さらに、
それが自分でできるようになったとき、人の世界観や価値観はどう変わるのか。
ここに、新しいサービスの芽があるのかもしれません。
新規事業というと、つい「未来に何が流行るか」を考えたくなります。
でも、未来をゼロから想像するのは難しい。
それよりも、過去15年間で、
誰かに任せていたことが、
どれだけ自分でできるようになったかを見る。
店の都合から、自分の都合へ。
専門家から、個人へ。
企業から、ユーザーへ。
作ってもらう側から、自分で作る側へ。
この流れを理解すれば、
次に何が自分の側へ移ってくるのか
を考えやすくなります。
未来を見ることは、未来を当てることではないのかもしれません。
過去から現在まで、何がどちらへ動いてきたのかを見る。
そして、その変化によって、人の世界観と価値観がどう変わってきたのかを見る。
その延長線上に、未来の輪郭が少し見えてくる。
まだ誰かに委ねたままになっているもの。
まだ「仕方がない」と思っているもの。
まだ「そういうものだ」と受け入れているもの。
そこに、15年後の当たり前をつくる新規事業が眠っているのかもしれません。