
【ショートショート】天から南瓜 未確認飛行パンプキン [毎週ショートショートnote]
天から南瓜 未確認飛行パンプキン
ある山の上の庵に、隠者が棲んでいた。自らも畑を耕しながら、麓の小さな村の人々が神殿に供える物をこっそりと、ありがたく頂戴し、糊口をしのぐ。村の人々は、供え物が無くなるのは、山の神が召し上がるからだと信じていた。
ある年、隠者は、友人の魔法使いから贈られた作物を、斜面の畑に植えた。南瓜というその作物は、丸く大きな、ずしりとした実をつけた。
これは、食べ応えがありそうだ。嬉々として、隠者は、荷車に実を積み上げた。そして、庵へと運ぼうとする。
途端、荷車の車輪の一つが軋み、弾け飛んだ。傾いだ荷台から勢いよく投げ出され、南瓜は、斜面を転がっていく。そして、止める間もあらばこそ、斜面の先の断崖から、次々と、楽しげに飛び出していった。次いで、遥かな崖下から、恐ろしい叫び声が上がった。
すわ一大事、村人に当たってしまったのだろうか。隠者は、急いで麓の様子を見に行った。
「天の助けじゃ! 山の神が、天から礫を降らせて、我らを助けてくださった」
麓には、南瓜の礫に打たれ、人を襲って喰らう魔物が、骸となって横たわっていた。
それから、人々は、南瓜を神聖な作物として栽培するようになった。神殿にも、人々を救った山の神への感謝を込めて、懇ろに、南瓜を供えた。
南瓜は毎年、自分の畑で充分に採れるから、以前のように、他の物を供えてくれた方がありがたいのだが。ともあれ、日頃世話になっている村人の役に立てたならば、それもよし。
今も、隠者は、山の神と間違われつつ、村人の供え物を糧に、暮らしている。
了 632字
今回、こちらのお題に参加させていただきました。
どうもありがとうございます。
長くなってしまって、すみません。
本作は、拙作長編ファンタジー小説〈隻翼の竜の書〉の世界の昔話です。
前回の作品はこちらです。