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Photo byasuka_kobo

『株式会社リストラ』#ショートショートnote杯

     その男に声を掛けられたのは、場末の小さなバーだった。仕事がつらく、ヤケ酒をしていた俺の横で、同じように痛飲していたのがそいつだった。

     男は俺と似た境遇だと言い、やれ激務だとか、人を騙すようなことをして気分が悪くなるだとか、会社に対する愚痴を散々浴びせてきた。
     どんな仕事かは聞かなかったが、文句を言いながらも会社にしがみつくその姿があまりにみっともなくて、俺は不思議と気が楽になった。
     こいつよりは前向きに生きられるはずだ。明日、辞表を出してしまおう。きっと輝ける場所は他にもある。
     それを告げると、男は羨ましげに笑った。

     ターゲットが店を出たのを確認した男は、上司に電話を掛ける。
    「終わりました。明日辞めるそうですよ」
    「よくやった。クライアントも社内のリストラが進んで喜ぶだろう。さすがはウチのエースだな」
     何か辞めさせるコツはあるのかと聞く上司に、男は「正直でいることです」と答えて、また深く酒をあおるのだった。

     
     
    エッセイや短編小説を書きます。明るく優しく楽しくがモットー(書くものの内容がそうだとは限りませんぜ)。 ショートショートコンテスト「空想競技2020」銀賞/伊藤園フォト俳句大賞入賞 など。 悪天候に育てられた1992年生まれ。横浜在住。短歌では斐鳥。

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