メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bymirecat

ECMO②|一夜明けて


    「昨夜ICUに入って以降、容態は安定しており、今も落ち着いています」

    昨日と比べて落ち着いている外科医。
    むしろ、少しばかり明るい印象すら感じる声だった。


    “ひとつ目の峠” を越えることが出来、私もほっと胸を撫で下ろす。


    しかしながら、先述したECMOのリスクである「血栓」が僅かながら出来始めており、今朝から “凝固防止の薬” を投与しているということだった。

    簡単に言えば、「凝固防止=血をサラサラにする」ということである。

    ただ、それをすることで “大量出血” という新たなリスクも生じてきてしまうが、血栓を解消しなければ循環が出来ず、そもそも血液が回らない。


    「ECMO離脱」は本当に険しい道のりだということを改めて痛感する…


    身体の負担を考えれば、当然早く離脱した方が良いが、心肺が回復出来ていない限り、自発的な生命活動は出来ない。

    しかしながら、装着中は装着中で、別のリスクで身体は蝕まれていく…

    本当に細心の注意を払い、バランスを保ちつつ、経過観察していく必要があるようだった。


    一応、離脱に関しても “目安の数値” はあるようだが、それが絶対というわけではない。

    ましてや、息子は新生児であるだけでなく、肺機能の低下は “原因不明” であったため、その基準値を超えたからといって、必ずしも離脱出来るとは限らないのだ。


    そのため、あらゆる角度から、離脱するためのベストなタイミングを導き出す必要があるが、医療チーム全体で、昨夜から何度も議論を重ねた結果、

    週末はECMO継続。
    “月曜日の午前中” に離脱トライ。

    という段取りで進めていくということであった。


    そして、この後の午後の面会で日中の経過報告も含め、今後の流れも改めて説明してもらうこととし、一旦通話は終了。

    (凰理、よく頑張ったな…)

    改めて息子に想いを馳せ、“息子の生命力は衰えていないんだ” と再確認した。


    しかしながら、ECMOに乗っている限り、身体は蝕まれ続ける…

    今この瞬間も息子は闘っているということも改めて実感した。


    そんな中、私の会話が聞こえたのか、妻が目を覚ましていた。

    私の声のトーンや表情で、何となく察しただろうが、妻にも全て共有した。

    妻も昨日と比べて大分落ち着きを取り戻し、ECMO離脱への闘いに対しても、覚悟が決まったような感じであった。


    また、家族や状況を知っている人にもすぐに報告。
    皆、息子の状況が気になっていたようで、ひとまずホッとしたようだった。

    親としては、“気にかけてくれる” だけで嬉しい。

    それが息子へのエールにもなるし、私たちの支えにもなっていたのは間違いない。


    そして、午後の面会に向けて準備を進める。


    妻は、この日も「搾乳」を欠かさない。

    もっと言えば、昨日の崩壊した精神状態でも、息子の帰還を信じ、涙を流しながら “凰理の栄養・成長のために” と行っていた。

    心から妻が報われてほしいと思ったし、“愛情たっぷりの母乳” を早く息子に口から飲ませてあげたいと思った。


    息子が離れていても、妻は立派に “母親のつとめ” を果たしていたと思うし、本当に芯が強い女性である。


    (この強い血を継いでいるから、きっと凰理も大丈夫だ…笑)


    と、改めて思う私であった。



    つづく



     
     
    【鳳凰の奇跡】新生児死した長男の話 【惟神の虹】ペリネイタルロスと次男誕生の話

    あなたへのおすすめ