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妊娠⑰|自己貯血


    8月11日。

    日常に戻った私たちだったが、隔離期間中に「34週」を迎え、先述の “手術の目安” の時期に入っていた。


    私のコロナ感染により、前週の妊婦健診はスキップ。

    そして、この日は約10日ぶりの病院となったが、この日は[自己貯血]の1回目でもあった。

    ■自己貯血
    出産前に自分の血液を保存し、大量出血に備えておくこと

    国立成育医療研究センター


    まずは、健診からスタートし、前回行った “MRIの結果報告” 。

     “胎盤が上に動いているかどうか” の最終確認であり、この結果によって、分娩方法が確定する。


    結果は…

     “当初より少し動いてはいたが、依然として子宮口は覆っている” 

    という判定であった。


    MRIの画像を私たちも実際に見たが、胎盤の大半は確かに側面に移動していたものの、一部が子宮口に覆い粘り強く残っている…

    これにより「9月2日に予定帝王切開での分娩」が確定したわけだが、母体のリスクを考えると、やはり “経腟分娩” の方が望ましいし、それに向けて数か月歩んで来ただけに、夫婦としては正直悔しかった。


    ただ、幸いなことに「癒着胎盤の可能性は低い」という判定も出た。

    全前置胎盤のリスクの中でも、この「癒着胎盤」に対しては特に不安が大きく、“子宮全摘出” だけは本当に避けたかった。

    もちろん、当日の状況次第だが、現時点では心配ないとのことだったので、そこだけは本当に良かった。


    そしてもう1つ。

    これまでずっと懸念されていた「体重」。

    なんと「1,907g」まで増加し、発育曲線内にまた戻ることが出来た。
    (やはり、私の実家のご飯が良かったのか…)


    日を追うごとに、懸念点が1つ1つ解消されていく…

    私たち夫婦だけでなく、家族や医療チーム全員が、最善を尽くしていることが徐々に報われ始めている。

    そして、それに応えるように、息子も懸命に大きくなろうと頑張っている…

    改めて、私たちの想いが “ちゃんと息子にも届いている” と感じた。


    そして、健診が終わり、そのまま「自己貯血」へ。


    自己貯血は、2回に渡って行われ、「 合計600ml(300ml×2)」の血液を保存する。

    妻の「全前置胎盤」は、帝王切開時の大量出血の可能性が極めて高いが、実際に当日起こった際は[ 自己血輸血(回収式)]と[輸血用血液製剤]で対処するとのことであった。

    ■自己血輸血(回収式)
    手術中や手術後に出血した血液を回収し、患者に戻す方法

    ■輸血用血液製剤
    日本赤十字社が献血により得られたヒトの血液から作られ、赤血球成分製剤 赤血球製剤は血液から血漿、白血球及び血小板の大部分を取り除いたもの

    日本自己血輸血・周術期輸血学会、厚生労働省、日本女子医大

    だが、医学も進歩したとはいえ、後者の感染リスクは0ではない。

    従って、可能な限り前者… すなわち “自分の血液のみ” で対応するのが望ましく、主治医からも必ず保存しておきたいと言われていた。


    しかし、妻は「低血圧」で「貧血持ち」。

    毎年の健康診断の採血でも横になりながらの処置で、採血後も30分ほど安静にしないと動けない。

    また、採血は通常「1回:10~15ml」程度だが、自己貯血は「1回:300ml」。

    ”約20~30倍” もの差があり、それも恐怖の1つだったが、それ以上に、妻は学生時代に献血で失神してしまったというトラウマを持っていた。


    そういった背景もあり、主治医も当初は少し悩んだようだが、やはり “出産時のリスクは1つでも減らした方が良い” とのことで、自己貯血が出来るように妊娠中期から「鉄剤」を服用したりと対策を打ってきた。

    また、当日担当する輸血部にも事前に連携し、万全の体制で自己貯血に臨めるように準備してくれた。


    そんな中で、この日を迎えたわけが、妻も直前までかなり恐怖だったようで、その緊張感は私にも犇々と伝わってきていた。


    そして、緊張した面持ちで処置室に入る妻を見送り、私は待合室へ。

    処置終了は “約30分後” と伝えられ、祈るような気持ちで待っていた私だったが…


    「もう中入って大丈夫ですよ~」

    と、ものの10分も経たないうちに呼ばれ、恐る恐る処置室へ…


    ぐったりしている妻の姿を想像する私だったが、目に飛び込んできたのは、

     “楽しそうに看護師と女子トークを繰り広げている妻の姿” であった(笑)


    「鉄剤」の服用、万全の管理体制、そして気さくな看護師たちのサポートのおかげで、無事貯血することが出来ようだった。

    そして、私もそのトークに混ざり(笑)… しばらく安静にした後、処置終了。


    2回目は、1週間後の「8月22日」…

    「この感じなら2回目も問題なくいけそう」と、妻の不安も1つ解消して、この日は病院を後にすることが出来た。



    つづく



     
     
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