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Photo byhidemaro2005

 待つ時間は退屈だ。
飯田橋で鈴木さんを待っている。
約束の時間までは、まだ少しある。
ベンチの近くで立ったり座ったりしながら、何度も腕時計を見ている外国人がいた。

 ずいぶん苛立っている。
僕は少し迷ってから、英語で声をかけた。

「Are you OK?」
英語で声をかけると、男は怪訝そうに僕を見た。通じないのかな。

「Sind Sie in Ordnung?」
今度はドイツ語で聞いてみた。男の顔に、さっきよりはっきりとした警戒が浮かんだ。
「なんだ、こいつ」そういう顔だった。

 すると男は、ため息をついてフランス語で言った。
「私はフランス人だ」

 ただでさえ、彫りが深い顔立ちの男性がドヤ顔をするから、負けずに
「あ、そうなんですね」
僕がフランス語で返すと、男は黙った。今度は、別の意味で怪訝そうな顔をした。

「日本人は時間にだらしない。こっちは今朝フランスから来たんだ。お客様を待たせて悪いと思わないのか」
大きな目が不機嫌を際立たせている。

「連絡は?」
「日本に着いたばかりでeSIMがうまく繋がらない。先月はシンガポールにいたんだが、あっちはすぐに繋がるのに。ところで、何か用事か?」

「迷子かなって思って。
どなたを待ってるんですか?」
「仕事相手だ」
「どこで待ち合わせを?」
「ここだ、板橋」

 僕は一瞬黙り、聞き間違えたかなと思い
「……今、なんて?」
「板橋だ」
「ここ、飯田橋です」
「同じじゃないのか?」

 スマホのスクショを見せてもらうと、確かに「板橋駅」と書いてある。ここから板橋か……。

「ここは飯田橋。板橋ならJRに乗ってください」
「地下鉄では?」
「JRです」
「なんだよ、東京は!紛らわしい地名をつけやがって」

 そんなのを僕に言われても。
「フランスも似たようなもんですよ。カンヌとカーンとか」
とりあえず、笑っておいた。


「お〜い、キンクマくん!珍しい、遅刻か」
再び待ち合わせ場所に行くと鈴木さんが来ていた。
「板橋へ行く人を飯田橋から送り出してました」

#小牧幸助さん
#シロクマ文芸部
#待つ時間

 
人の淋しさは対象によって癒される、淋しさ わたしの淋しさは 万物でも癒されない定めの淋しさ 手に握る砂が指から零れてしまう 狂人には沈黙を、佳人には微笑みを わたしはわたしの道を歩んでいるだけなのに ©️ももまろうめこのnoteは私に著作権があります 無断転載禁止です

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