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Photo byhidemaro2005

 借りた本の内容が重くて、考え事が増えた。
 
 僕が気軽にコーヒー豆を挽き、ふわっと上がる香りに満足して、多少濃い目だったかなと思いつつも、「お客さんは気づかない」くらいに考えていた自分が気まずく思った。

 陽や雨を受けて、幹を伸ばしたコーヒーは人間の都合で刈り取られる。それは米やトマトも同じで、命の時間をこちらの都合で終わらせて、こちらの命につなぐ行為。
そんなことが頭をぐるぐる廻る。
 

「どうした。神妙な顔つきで飯食って。
身体の調子が悪いのか?」

 箸を止めてタツジュンが僕を慮る。
「ううん。全然そんなことないよ」
汁椀を握り直し、ふと浮かんだ。

「ねぇ、『いただきます』って食べる前に言うのは食べ物への感謝でしょ?
じゃ、『ご馳走様』はなに?」
 
 タツジュンは眉間に皺を寄せ、たくあんに手を伸ばした。
「キンクマ、どうした?ご馳走様?
ああ、あれはな。食事がここに届くまでに関わった人たちの手間や働きへの感謝よ」

 軽い咳払いのあと、
「昔は今みたいに、欲しいもんがすぐ手に入るわけじゃないだろ。客をもてなすために、あっちこっち走り回って食材を集めた。だから『馳走』なんだってさ。食べ物だけじゃなく、そこまでしてくれた人の手間にも礼を言うんだよ」と、タツジュンは説明してくれた。

 僕は汁椀の中を見た。
だしも、味噌も、ねぎも、豆腐も、ここに来るまでにそれぞれの時間があったんだろう。

「じゃあさ、食事って最初も最後も、ありがとうなんだね」
 タツジュンはたくあんを噛みながら、
「まあ、そういうこったな」とだけ言った。

 僕はもう一度、箸を持った。
さっきまでと同じ味噌汁なのに、少しだけ味が違って感じた。

#小牧幸助さん
#シロクマ文芸部
#借りた本

 
人の淋しさは対象によって癒される、淋しさ わたしの淋しさは 万物でも癒されない定めの淋しさ 手に握る砂が指から零れてしまう 狂人には沈黙を、佳人には微笑みを わたしはわたしの道を歩んでいるだけなのに ©️ももまろうめこのnoteは私に著作権があります 無断転載禁止です

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