
春はイケメンクズ男
春が、急にアクセルを踏み込んできた。
まだ2月なのに、近所では梅が咲き乱れ、日当たりのいいお宅では桜までほころんでいる。
季節が前のめりだ。カレンダーが追いついていない。
暖かくなると、もれなく私の天敵もやってくる。
花粉症だ。
ほんの少し外に出ただけで、くしゃみが連発し、鼻水が止まらない。
今年は薬の効きもいまひとつな気がする。
それでも副作用の眠気だけは、律儀にやってくるのだから困る。
春は、見た目は完璧だ。
梅も桜も、空の色も、風までも。全部が美しい顔をしている。
けれど実態はなかなか手強い。
虫は出てくるし、今日は暖かいと思えば翌日は冷え込む。
強風で洗濯物は飛ばされ、土埃で喉をやられる。
体も気分も自律神経も、ことごとく振り回される。
きれいなだけじゃない。
むしろ、きれいだからこそ厄介だ。
遠目には完璧。
近づくと、だいぶヤバい。
春は、イケメンのクズ男みたいだ。
わかっている。
どうせ今年も、満開の桜を見たら「やっぱり好きかも」と思ってしまう。
そうやって毎年、まんまと心をつかまれる。
理不尽だ。
それでも、鼻をかみながら見上げる空はやっぱり明るい。
悔しいけれど、少しだけ気分が持ち上がる。
春は、こちらのコンディションなどお構いなしにやってくる。
優しそうな顔をして、毎年同じことをする。
これだから、モテる男は厄介だ。