
「Rain」のたった2拍について、30年間考えている
私はザ・ビートルズが好きだ。
30年間聴き続けてきたが、まったく飽きない。
ジョン・レノンの常軌を逸した変人ぶりや、「Ob-La-Di, Ob-La-Da」の嫌われ具合、F1ドライバーのデイモン・ヒルが古舘伊知郎に「顔面ジョージ・ハリスン」と呼ばれていたこと・・・。
書きたいことは山ほどある。だが、私がまずとにかく書きたいのは「Rain」の2拍について。「あれは一体なんなんだ」と、30年間ずっと頭の片隅に引っかかっていた。このことを書かずに他のことは書けない、というくらいに。
早速、ビートルズ公式の「Rain」を聞いてみよう。
動画の0:44秒あたり。
ここだけ聞いてもなんのことだかわからないと思うので、ちょっと説明させて欲しい。
2回「♪When a Sunshine〜」を繰り返したあと、サビで「♪Rain〜」と歌い出す直前。注意して聴くと、2回目の「♪Sunshine〜」のあとに「ウン、ウン」と2拍余分に入っていることがわかるはずだ。
この曲は基本的に4/4拍子なのだが、ここだけなぜか6拍ある。
(曲の終わりの方にも一ヶ所あるが、そこは割愛)
さらに不思議なことに、2番では4/4拍子のまま「♪Rain〜」に突入する。
なぜ、1番だけ2拍多いのだ・・・?
実は、1番の「♪When a sunshine〜」が4/4拍子でも、曲としては成立する。別におかしなことにはならない。
だから、この追加された2拍を「録音時の偶然で、それが結果的によかったから採用されただけでは」と推測する人もいる。
しかし、何の根拠もないが、私は断言する。
これはジョンがわざと延ばした、と。
ギターで弾き語りをするとわかりやすいかもしれないので、お恥ずかしながら私の演奏で実演してみる。
(前半が原曲どおりの6拍、後半が2拍削った4拍バージョン)
お分かりだろうか。
4拍でも成立するのだが、なんとなく無理に詰め込んだ雰囲気になるのだ。
これは別に、新しい表現を目指したとかそういうものではなく、単にジョンが「窮屈で気持ち良くない」と、2拍足しただけの気がする。
そして2番サビの入りは「ここは間延びするからやめておこう」と4拍に戻しただけではないか。
以上が私の推理である。
もっとも、ジョンがこういうことをするのは「Rain」だけではない。
例えば、「All You Need Is Love」。
歌が始まると7/4拍子を基本に進み、サビになると普通の4/4拍子になる。
弾いてみるとわかるが、こちらもAメロを全部4拍子で弾いても、そこまで違和感がない。
(歌下手なのでこれ以上の実演は中止。想像してください)
ところがレコードでは、4拍+3拍と数えられる7拍子が使われている。つまり、4/4拍子が2小節続く場合よりも1拍短いのだ。
ここは「余った1拍を待つのがダルいから3拍にしよう」と削ったのではと睨んでいる。
もう一つ、「Don't Let Me Down」。
ビートルズお得意のサビから入る楽曲だが、Aメロの導入部でなぜか1拍多くなる。0:28あたり、「♪Nobody ever Loved me〜」のところから拍を数えてみて欲しい。
ここは「歌詞が入らないから1拍増やそう」とした疑いが強い。
さらに拍どころか、小節の数からしておかしい楽曲も山ほどある。
ポピュラー音楽はだいたい8小節・4小節単位で推移していくのだが、変態曲として知られる「I am the Walrus」のAメロなどは、なぜか3小節単位で推移している。あの異様な雰囲気は、この無茶苦茶さによるところが大きい。
ここからさらに私の推察。
ジョンはおそらく、拍子や小節をあまり気にしていなかった。
「自分が演奏していて(歌っていて)気持ちいいかどうか。違和感があったら延ばしたり縮めたり自由にやる」
という感じだったように思う。
つまり、私が30年間考えてきた「Rain」の2拍は、ジョンにとっては単に「ここは6拍の方が気持ちいい」という、ただそれだけの話だったのかもしれない。
それでも若き日に「あれ?ここちょっと長くない?」と発見した私の驚きと興奮、それを人に話した時に「ふーん、で?」みたいなリアクションを受けた時の落胆ぶりとを想像してみて欲しい。
で?じゃない。
で?じゃないのだ!
なにしろ30年だ。この2拍に関しては、おそらくジョンよりも私の方が気にしている時間が長いはず。そのことを誇りに思う。
ここまでお付き合いいただきありがとう。これで成仏できます。