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発達障害はなぜ増えたのか?|本人の特性だけでは説明できない「生きづらさ」の正体

    「最近、発達障害の人が増えている」

    そんな話を耳にすることがあります。

    実際、子どもだけでなく、大人になってからADHDやASDと診断される人もいます。

    では、発達障害そのものが増えているのでしょうか。それとも、これまで見過ごされていた特性が見つかるようになったのでしょうか。

    今回、精神科医の益田裕介先生と精神科医さわ先生らによる対談「発達障害はなぜ増えたのか」を視聴し、興味深いと感じたことを整理してみます。

    発達障害が増えたのか、社会が変わったのか

    対談で印象に残ったのは、「社会で求められる能力の水準が上がっている」という指摘です。

    以前であれば、一つの能力に秀でていれば、それ以外の苦手さがあっても働ける環境があった。

    しかし、現在はどうでしょうか。

    専門的な技術だけでなく、コミュニケーション能力、協調性、時間管理、マルチタスクなど、さまざまな能力が同時に求められます。

    一つの仕事が得意でも、別の仕事が苦手であれば、そこが問題になる。

    つまり、本人の特性が変わっていなくても、環境が変わることで「困りごと」が大きくなる可能性があります。

    もちろん、対談では認知度の向上や診断機会の増加、親の年齢、養育環境などにも触れられています。ただし、それぞれが実際の増加にどの程度影響しているかは、この対談だけでは判断できません。

    私が興味深かったのは、発達特性と社会環境の関係でした。

    「できない」のではなく、求められていることが違う

    例えば、仕事を丁寧に仕上げようとする人がいます。

    本人は一生懸命です。

    しかし、上司は「そこまで完璧にしなくていいから、次の仕事に進んでほしい」と考えている。

    この場合、本人の丁寧さは長所でもあり、状況によっては困りごとの原因にもなります。

    対談では、こうした場合に仕事の全体像を見える化し、どこまで取り組むのかを共有することが紹介されていました。

    ここで重要なのは、単に「こだわりを減らしましょう」と指導することではないと思います。

    何を、どの程度、いつまでに求められているのか。

    それが本人と周囲で共有されているかどうかです。

    先延ばしは、やる気だけの問題ではない

    もう一つ興味深かったのが、先延ばしについての話です。

    やらなければいけないと分かっているのに、なかなか取りかかれない。

    対談では、その背景として疲労、報酬の分かりにくさ、作業の見通しの立てにくさなどが挙げられていました。

    例えば、「部屋を片付けなさい」と言われても、何から始めればよいのか分からない。

    そこで、

    「まず机の上のものを分ける」

    「次に不要なものを捨てる」

    というように作業を細かくする。

    これだけでも、取りかかりやすくなる場合があります。

    最近では、こうした作業の分解やスケジュール作成にAIを活用する方法も紹介されています。

    本人の努力を増やすのではなく、取り組みやすい形に環境を変える。

    この視点は、発達障害の有無にかかわらず役立つのではないでしょうか。

    自立とは、何でも一人でできることなのか

    対談の中で、私が最も考えさせられたのは「自立」についての話です。

    例えば、忘れ物が多い人がいるとします。

    忘れ物をしないように何度も練習することも、一つの方法です。

    一方で、チェックリストを使ったり、誰かに確認してもらったりする方法もあります。

    では、後者は自立していないのでしょうか。

    私は、必ずしもそうではないと思います。

    自分でできることを増やすのは大切です。

    しかし、すべてを一人でできるようになることだけが、支援の目的ではありません。

    できないことを克服する支援と、できないことがあっても生活できるようにする支援は、同じではない。

    この違いは、子育てでも、教育でも、職場のマネジメントでも重要だと思います。

    本人を変えるのか、環境を変えるのか

    発達特性による困難があるとき、私たちはつい「本人がどうすればできるようになるか」を考えます。

    もちろん、本人が新しい方法を学ぶことには意味があります。

    しかし、それだけでは十分でない場合もあります。

    本人の特性を理解し、仕事の進め方を変える。指示を具体的にする。必要なところには道具や他者の支援を取り入れる。

    対談を通じて、改めて考えたのは、困りごとは本人の中だけに存在しているわけではないということです。

    本人と環境との関係の中で、困りごとは大きくも小さくもなります。

    だからこそ、「どうすれば本人を変えられるか」だけではなく、「何を変えれば、その人が生活しやすくなるのか」という問いも必要なのでしょう。

    発達障害について理解することは、特定の人を分類するためではなく、人によって異なる困りごとと、その支援の方法を考えることなのだと思います。

    皆さんは、「自立する」という言葉を、どのように捉えていますか?


    ※本記事は、精神科医の益田裕介先生、精神科医さわ先生らによる対談「発達障害はなぜ増えたのか」の内容をもとに、私自身の考えを交えて整理したものです。対談で示された見解のすべてについて、個別の研究による検証を行ったものではありません。

     
     
    田中大介 | 訪問看護・在宅医療・介護保険の“わかりにくい”を、理学療法士/訪問看護所長の視点でやさしく整理。制度、難病、在宅リハ、子育てや発達特性まで、“暮らしの意思決定”に役立つ情報を発信しています。

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