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「もしかして認知症?」だけじゃない。高齢者に多い精神疾患5選と支援のコツ

    「最近、高齢の利用者の様子が変なんです!」
    まだ対人援助をはじめて間もないケアマネジャーが、そう話してくれました。
    「同じ話を1日に何度も繰り返すんです。『あれ?さっきも聞いた気がするな』って思うことが増えてきて…。それに、買い物に行ったのに財布を忘れてしまい、レジで立ち尽くしたことも。昔はそんなことなかったのに…。だんだん心配になってきました。」

    さらに、こんな変化も感じているそうです。
    「急に疑い深くなったり、ちょっとしたことで怒りっぽくなったりして…。以前より外出も減ってきた気がします。」
    高齢の利用者にこのような変化が現れると、「もしかして認知症かも…」と不安になるのは、ごく自然な反応です。
    特に「もの忘れ」が目立つと、「認知症では?」と早合点してしまうことも少なくありません。

    対人援助のセンスを磨くうえで大切なのは、早い段階で「決めつけないこと」。

    認知症に似た変化は、ほかの精神疾患でも起こり得るのです。
    この記事では、高齢者支援において見落としがちな「認知症以外の可能性」と、支援時に押さえておきたいコツをご紹介します。
    「気づく力」「寄り添う力」を高めるためのヒントとして、ぜひお役立てください。

    認知症に似た症状を引き起こすもの


    支援の現場では、「認知症らしさ」に見える変化が、実は別の病気によるものだった、というケースにしばしば遭遇します。
    例えば

    • うつ病

    • せん妄

    • 不安障害

    • 統合失調症(若い時に発症して高齢になった)

    • アルコール関連障害

    これらの疾患でも、認知機能や行動に変化が見られるのです。
    自宅のテレビの映りが悪くなった時に例えると理解しやすいです。

    もし、あなたの自宅にあるテレビの映りが悪い時、原因をどうやって探しますか?

    家のテレビの映りが急に悪くなったとします。画面がちらついたり、音が途切れたりしている。

    このとき、原因の可能性を考えてみると、
    • 「もしかしてテレビ本体が壊れたのかも(=認知症など脳の変性そのもの)」
    • 「いや、アンテナの接続が悪いだけかもしれない(=環境要因やうつ病、せん妄など他の精神的要因)」
    • 「あるいは、リモコンの設定が間違ってるのかも(=薬の副作用や身体疾患の影響)」

    「症状」は同じように見えても、原因が全く違うということがあるのです。
    そして、対応の仕方も「原因」によって大きく異なります。

    支援のセンスとは、「症状」だけでなく「背景」を丁寧に見極め、正しい対応をすることです。
    見立てがズレると、支援の方向も大きく変わってしまうからです。

    高齢者に多い精神疾患5選


    ここで、支援現場でよく遭遇する「高齢者に多い精神疾患」を押さえておきましょう。

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    高齢者に多い精神疾患5選

    このように、症状は似ていても、原因も支援アプローチも異なります。
    「違いに気づけるかどうか」それが、対人援助のセンスを磨く大きなカギになります。

    受診を促す声かけの工夫


    受診を促すとき、つい焦ったり、決めつけた言葉を使ってしまうことがあります。
    しかしそれは、本人のプライドを傷つけ、不安を高めてしまい、かえって受診拒否を招くことがあります。

    NG例
    「認知症かもしれないので、心配なので早く病院に行きましょう!」

    センスのある言い方
    「最近眠れないっておっしゃっていましたね。念のため病院で診てもらって、何もなければ安心ですね。よかったら受診の予約を取らせていただけませんか?」

    本人の尊厳を守る声かけが、信頼関係を築く第一歩です。

    本人と関わるときのポイント


    支援の質を高めるには、次のような「センスの良いかかわり方」を意識しましょう。

    1. 変化を「病気」前提で決めつけない
      • 「最近もの忘れが多くなってきた=認知症」と早合点せず、“どうしてそうなったのか”という背景に目を向ける姿勢が大切です。
      • 声かけの例:
      →「最近ちょっと元気がないように見えるけれど、何か気になることはありますか?」
      →「眠れていますか?食欲はどうですか?」

    2. 症状の“質”と“経過”に着目する
      • 認知症は徐々に進行する記憶障害が主ですが、うつ病やせん妄は急激に現れる変化や波があります。
      • 声かけの例:
      →「前は楽しんでいた〇〇が、最近はあまりやらないみたいですが、何かお変わりになったことがありますか?」

    3. 否定せず、“気づき”に寄り添う
      • 「それは認知症じゃないよ」「気のせいだよ」といった否定的な言葉は避け、本人の感じている不安や困りごとに共感を示しましょう。
      • 声かけの例:
      →「ちょっと気になることがあるようでしたら、念のために先生に相談してみることはとても良いことだと思います」

    4. 「できていたことができなくなった背景」を探る
      • 買い物に行けない、通院を忘れるなど、行動の変化があれば生活のどこでつまずいているかを一緒に確認していきます。
      • 声かけの例:
      →「買い物の時、何か困ったことがありましたか?お荷物が重い?道が分かりづらい?など困っていることがあれば、一緒に考えたいです」

    5. 「認知症以外」の可能性も選択肢に
      • 特に高齢者のうつ病は「身体がだるい」「頭がはっきりしない」など身体症状が前面に出ることがあり、本人も周囲も気づきにくいです。
      • 声かけの例:
      →「最近、身体の調子だけじゃなくて気分の方も落ち込むことはありますか?」

    6. “対話の積み重ね”で信頼関係を築く
      • 一度の声かけで本音を話すことは少ないので、短い会話を何度も重ねて安心感を与えることが重要です。

    これらを実践することで、「気づく力」「寄り添う力」が自然と磨かれていきます。

    まとめ


    インターネットやChatGPTをはじめとするAI技術の発達により、わたしたちは容易に情報を手に入れられる時代に生きています。
    けれども、どれだけ情報が豊富でも、「診断」を下すことは支援者の役割ではありません。診断を行うのは、あくまでも医師だけです。

    対人支援に携わるわたしたちが本当に大切にすべきなのは、先入観を持たず、目の前の事実を丁寧に見つめる姿勢です。

    「決めつけず、柔らかく問い直す」

    この謙虚な態度こそが、対人援助のセンスを磨くうえで欠かせない基本となります。

    わたし自身も、かつて支援現場でこんな経験をしました。
    あるとき、収集した情報をもとに「○○病の可能性があるかもしれません」と医師に報告してしまったのです。
    そのとき医師は、こう優しく伝えてくれました。

    「情報はとてもありがたい。でも、診断に関わることは、わたしたち医師に任せてほしい。」

    この言葉は、わたしの支援観を根本から見直すきっかけになりました。
    「決めつけず、柔らかく問い直す」。
    この姿勢を忘れずに、これからも一つひとつの支援に向き合っていきたいと思います。

    そして、支援者としてのセンスを、日々丁寧に磨き続けていきたい
    そう心から感じています。

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    認知症疾患医療センター副センター長 職業:鶴岡八幡宮(鎌倉市)→精神科病院→精神科クリニック(対人支援職) 資格:精神保健福祉士・公認心理師・社会福祉士