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Photo bytetratimo0515

さらばカップル~哀愁に包まれた鳩~

    近くのカフェでひと休みすることにした。
    音楽を聴きながら、ぼーっとする。
    こういう時間がなによりの癒しで、最高に贅沢。

    座ってる席からは窓の外がよく見えて、いろんな人が歩いてる。
    誰にだって帰る場所があって、それぞれに生活があるんやなぁって、そんなことをぼんやり思ったりして。

    イヤホンから流れてきたのはサザンオールスターズのミス・ブランニュー・デイ。
    「街でよく見るタイプの君よ」ってフレーズが印象的な曲。
    確かに最近の人って“街でよく見るタイプ”っぽいなぁとか思ったけどこれ80年代の曲でね。
    ってことは、今も昔も人ってそんなに変わらんのかもな〜なんて思いながら、1人用のソファ席に深く腰をかけて、お腹の前で指を組んで、ただ目を細めて、外を見てた。

    よしよし、ぼーっとしてきた。
    気持ちもじんわり乗ってきて、このまま完全にぼーっとできる!

    って時に、俺と窓の間の席に若いカップルが着席した。
    あー、そっちに俺が座っとけばよかったなぁ…って思った。
    まさにその瞬間。

    着席から10秒でまさかのキス。
    いやいやいや、嘘やろ。
    めちゃくちゃ自然に、口と口やで?

    ぼーっとの世界から引き戻されて、現実に連れ戻された上に非日常に放り込まれた。

    頭が追いつかへん。
    鳩が豆鉄砲食らったってこういうことか。
    鳩の気持ちが痛いほどわかった。
    そりゃ突然豆鉄砲食らったら驚くわ。

    そのカップルは大学生くらいかな。
    彼氏は高校球児みたいな短髪で、
    彼女はギャルっぽくてちょっと派手。

    彼の方はおとなしくて、彼女が引っ張ってる感じかな〜とか思ってたけど、そんなのどうでもよかった。

    とにかく、キスしてる。

    コーヒーを飲んでは、キス。
    ケーキを一口食べては、キス。

    さすがにそれ食べにくない?
    自分のお腹の奥、1番素直な部分から出た感想がそれやった。

    まぁまぁ、若いしね。
    そういう愛の表現もあるわな。
    ここは俺も落ち着かなあかん。
    そんなんで慌てふためく俺じゃない。
    とりあえず座り直して、コーヒーをひと口。
    それと深呼吸も忘れずに。

    大きく息を吸って〜
    キスしとる。

    吐いて〜
    キスしてた。

    なんやねんこれ!
    俺は一体なに見せられてるんや!
    しかも、5分で20回はしてたね。ほんまに。

    もうわかった。
    そっちがその気ならこっちもやる気よ!
    何回するか数えてやんよ!
    暇人を、、甘く見なよ!

    と、意気込んだと同時に俺は初めて人を見て胃もたれを起こした。

    向かい合って座ってたカップルが、気がつけば隣に並んで座ってる。
    彼女は彼氏の膝に足を引っ掛けて、首に手を回してる。
    ソファでお姫様抱っこされとる。
    カフェでやることか???
    それもうネカフェでやったらどうやろか???
    そんなことを考える俺が変なのか…?

    あかん、これ以上見てたら胃がヤラレる。
    その瞬間。

    まさにギョッとした。

    公共の場で服に手を入れるなああああああああ!!!!

    さすがにこれ以上は身の危険を感じた。
    ここにいたら危険や。
    そう判断して、俺は席を立った。

    その時、彼氏と目が合ったのよ。
    ニヤッてしてた。
    なんかすんごい負けた気がした。

    俺なんか罰当たるようなことした?
    知らず知らずのうちになんかした?
    んなわけねえ!!

    とにかく店を出て近くの喫煙所へ。
    呆然としながらタバコを咥える。

    雨が降ってきた。
    ライターが濡れて火がつかへん。
    泣きっ面に蜂ってこれか…。

    これはしばらく引きずりそう。

    人の振り見て我が振り直せって先人は言ったけど、
    人の振りを見るにも限度があるって初めて知ったよ。

    負った傷は鋭く深いけど、俺も行き交う人々の群れに飛び込んで、自分の生活に戻ることにする。
    雨に打たれながら。

    ほなな、カップル。

     
     

    雲呑

     
     
    ひっそり書き出す訛りの効いた一人言

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