メインコンテンツへスキップ
見出し画像

溜め息、風まかせ文芸部、356文字


    放課後、体育館の前。
    部活帰りの彼が、友達と笑いながら歩いていた。

    その笑顔が、まぶしかった。汗で乱れた髪さえ、私にはかっこよく見える。
    ほんの数秒なのに、目が離せない。

    その姿を見た瞬間、胸の奥からふっと空気が漏れた。
    「はぁ〜」

    自分でも驚くくらい大きな溜め息だった。
    届くはずのない想いが、息と一緒に外へ流れ出た。

    すぐ隣で友達が首をかしげる。
    「なに? どうしたの?」

    慌てて顔をそらし、弁当袋をぎゅっと握りしめた。
    「か、から揚げ、美味しかったの、思い出した。また、食べたいなって」

    友達は一拍おいて、ぷっと吹き出した。
    「なにそれ! 食いしんぼだね」

    笑われながら、心臓の鼓動はまだ速いまま。
    本当は、好きって言えないため息。
    でも、から揚げのせいにできたなら、それでいい。

    彼が振り返る気配はなくて、もう一度溜め息が出そうになった。

    #溜め息
    #風まかせ文芸部

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

    あなたへのおすすめ