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交差する孤独【告りびと】


    「交差する孤独」

    彼は告りびとだった。恋する誰かの代わりに告白する仕事。

    「告りびとの俺は誰からも告られない。寂しいよ。告白対象のやつが困惑するのを見ると贅沢だと思うよ。お前は好かれてて、俺は頼まれた。喜べよ」

    ぽつりとこぼしたその言葉に、彼女は眉を寄せた。

    幼馴染の彼女は、じっと彼を見た。

    「あんたさ」彼女は呆れたように言った。「ほんと、鈍感すぎる」

    かすれた声だった。

    「ずっと、あんたのこと好きなんだよ。初恋をずっと引きずってんだよ、私、馬鹿みたいだね。笑ってよ」

    目を見開いたまま、彼は動けなかった。声をかけることも、手を伸ばすこともできなかった。

    彼女は、ひとつ息を吸うと、潤んだ瞳で彼を睨んだ。

    「自分だって、困惑してるじゃない」

    そう言い捨てて、彼女は踵を返した。小さな靴音が、アスファルトに響く。彼はその場に立ち尽くし、ただその背中を見送るしかなかった。

    彼は、ずっと動かないまま、目を伏せていた。長く伸びた影の上に、彼の小さな溜息が落ちた。

    (410字)

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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