メインコンテンツへスキップ
見出し画像

偏平足和紙、毎週ショートショートnote裏お題、454字


    空中都市が見つかった。
    だが、誰もいなかった。

    家々は整っていたのに、人影だけがすっかり消えていた。

    調査員が拾い上げた古い文書には、こう記されていた。

    昔、山奥の紙漉場に、一人の女がいた。女が漉いた和紙は不思議な力を持っていた。足裏に貼ると、重さが消え、身体がふわりと浮かびあがる。ただし、足の裏が平らな者、偏平足の人にしか使えなかった。

    その技術をもとに、研究者たちは地に触れぬ都市を空に築いた。偏平足の者たちが空へと移住し、そこに暮らしはじめた。

    彼らは歩くことをやめた。
    偏平足和紙を足につけて滑るように移動し、やがて移動という感覚そのものが変わっていった。
    「歩く」という行為を支えていた筋肉は使われなくなった。

    そして、偏平足ではない、空に浮くことができない子どもが生まれた。誰も歩き方を教えることができず、地上に下ろした。

    やがて扁平足の人々は数が減り、いなくなった。

    今も空にその都市はある。
    人のいないまま、静かに、雲のなかを漂っている。

    「紙に支えられたものは、いつか紙のように消える」
    それが空中都市の戒めだった。

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

    あなたへのおすすめ