メインコンテンツへスキップ
見出し画像

該当作梨、毎週ショートショートnote、412文字


    芥川直木は激怒した。必ず、かの直木賞の審査員を除かなければならぬと決意した。

    自らの作品が、今年度の直木賞に選ばれることを疑わなかった。候補作の中では最も完成度が高く、時代性に富み、批評性と娯楽性を兼ね備えていた。実際、複数の書評では受賞確実と謳われ、新聞記者からは事前取材の申し入れさえあった。

    にもかかわらず、結果は「該当作なし」。

    だから、除くと決めた。殺すのではない。憎しみからでもない。全会一致で選ばせる。作品を認めさせる。

    選ばなかった審査員を除く、つまり、次回、全会一致で選ばせることで生かしてやろうということだった。それこそが「除く」ことの意味だった。

    前作を遥かに凌駕する作品を書いた。怒りと冷笑と祈りとで編まれた、純粋にして暴力的な文章を。完成した作品の名は、『該当作梨』。

    皮肉のつもりだった。あるいは呪詛かもしれない。

    全会一致で選ばれた。

    報道各社が第一報を打った。
    「直木賞、今年も該当作なし」

    芥川直木は激怒した。

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

    あなたへのおすすめ