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誤解陸上、毎週ショートショートnote、410字


    スタートラインに立つと、観客席からのどよめきが波のように押し寄せてきた。
    世界陸上のトラックでの緊張はハンパない。
    左右を見れば、隣には世界記録保持者、もう片方にはオリンピック王者。二人とも硬い表情で地面を見つめ、スタートの瞬間を待っている。

    心臓が高鳴る。鼓動が耳の奥でドクドクと響き、世界中の視線が背中に突き刺さる。
    深呼吸を一つ。地面に指をつき、腰を高く上げる。トラックの粒が指先に食い込み、足裏にスターティングブロックの冷たさが伝わる。

    パンッ!

    号砲が響くと同時に、全身のバネを解き放った。
    スタートが命だ、一歩、二歩、三歩。

    どかっ。

    衝撃が額から全身を駆けめぐり、視界がぐるりと回る。気づけば尻もちをついていた。

    耳に届くのは歓声ではなく、エアコンの低い唸り。
    目の前には自室の壁。

    足元にはVRゴーグルが転がっている。壁にぶつかった拍子に外れたらしい。
    汗ばんだ額をぬぐいながら、僕は苦笑した。

    陸上競技は、VRでやるもんじゃない。

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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