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急性カーテンコール中毒、毎週ショートショートnote、439文字





    歳をとってようやく主役を任された。
    舞台が終わり、聞こえる拍手。
    生まれて初めての自分主役のカーテンコールだった。

    手が震え、うまく喋ることができない。
    鳴りやまない拍手で気分が悪くなり、そのまま倒れて救急車で運ばれた。

    医者の診断は、急性カーテンコール中毒。
    今まで経験のない称賛を浴びて、アレルギーのような症状が出たらしい。
    自分への拍手を聞くと発症し、他人への拍手では大丈夫だという。
    発症時にすぐ自己注射をすれば症状を抑えられると、注射を処方された。
    それから、恐ろしくて主役を降りた。

    次の舞台では、ほんのちょい役だった。
    カーテンコールが始まり、盛大な拍手が起こる。
    少し気分が悪くなり、膝をつく。
    俺は主役じゃない。なぜ――と思いながら、太ももに注射を打った。

    注射をすれば、原因の拍手は聞こえなくなるという。
    けれど、注射前後で拍手の音は変わらなかった。
    この観客の中で、一人か二人、僕に拍手をくれたのだろう。

    少しうれしかった。
    この病気にならなければ、僕は一生、僕への拍手を聞き分けられなかった。

    #毎週ショートショートnote
    #急性カーテンコール中毒

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

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