メインコンテンツへスキップ
見出し画像

たいてい序盤に、毎週ショートショートnote裏お題、410字



    彼女とはよくつるんでいた。でも、住む世界が違う人間だと思っていた。常に冷静で、勉強も運動も優秀だった。

    だから屋上で、彼女の口から「好きです」と告げられて驚いた。

    危うく即答しそうになったが、反射的に「ちょっと考えさせて」と言った。なんとか俺の理性が働いてくれたからだ。

    だが、教室に戻ると、様子がおかしかった。

    親友はニヤつきながら「よう、主人公」とか言うし、後ろの席の女子は机に突っ伏して「ついにこの日が来たぁぁ……」と謎の感涙を漏らしていた。

    「え、なに? みんな知ってたの?」

    「は? 逆に知らなかったの?」というリアクションが返ってくる。

    「いや、俺、まったく気づいてなくて、映画や小説では、たいてい序盤に日常の描写の後、さっきの俺みたいに事件が起きて……俺の物語、これから始まるのかなって」

    「違うよ」友人が真顔になる。「みんなずっと見守っていたんだよ。もうお前がうんって言ったらエンディングなんだよ。エンドロール流れるよ」
    (410文字)

     
     
    ・ソニー・ミュージックエンタテインメントのドラマ原案コンテストにてグランプリ受賞。ドラマ化。 ・第20回Yomeba!で優秀作 ・エブリスタ超・妄想コンテスト年間選出数11位(2021年) ・島根県文芸公募 金賞 その他はプロフィールページで

    あなたへのおすすめ