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氷河期世代AD、テレビの片隅で。#9「LAロケ、ホントはADになりたかったメジャーリーガー」

    海外ロケにも、
    よく行った。

    グアム。

    香港。

    ロサンゼルス。

    大学生の頃、
    僕は海外が大好きだった。

    スノーボードをするために、
    スイスやカナダ、
    ニュージーランドにも行った。

    知らない景色。

    知らない匂い。

    空港に降りた瞬間の、
    「ああ、外国来たな」
    って感じが好きだった。

    でも、
    ADになってから、
    海外が嫌いになった。

    理由は簡単だ。

    海外でも、
    ずっと仕事だからである。

    朝からロケ。

    移動。

    仕込み。

    寝る時間もほとんどない。

    ホテルは、
    ただシャワーを浴びて、
    気絶する場所だった。

    たぶん海外でも、
    殴られていたと思う。

    でももう詳しく覚えていない。

    パンチドランカーみたいになっていたのかもしれない。

    そんな中でも、
    時々、
    大物芸人は優しかった。

    「ADも休ましたれよ」

    その一言で、
    本当に1日休みになったこともある。

    ロサンゼルスでは、
    日本人メジャーリーガーとロケをした。

    野球少年だった僕にとって、
    メジャーリーガーは憧れの存在だった。

    テレビで見ていた人が、
    目の前にいた。

    しかも、
    めちゃくちゃ身体が大きかった。

    肩幅だけで、
    僕の人生より広そうだった。

    ロケ終わり、
    みんなでご飯を食べている時だった。

    そのメジャーリーガーが、
    なぜか僕らADに話しかけてきた。

    「ADって大変?」

    「どんな仕事してるの?」

    妙に興味津々だった。

    そして笑いながら言った。

    「俺ほんとは、
    野球じゃなくて、
    テレビの仕事やりたかったんだよね」

    さらに、

    「ADやりたいなぁ」

    とも言った。

    不思議だった。

    こっちは、
    メジャーリーガーなんて
    憧れの憧れなのに。

    向こうは、
    ADに興味を持っている。

    人は、
    自分にない人生を
    少し羨ましく思うのかもしれない。

    もちろん、
    そのメジャーリーガーが
    本当にADをやったら、
    3日で辞めると思う。

    いや、
    サブウェイ20人分の時点でキレる気もする。

    でも、
    なんだかうれしかった。

    ロサンゼルスの夜だった。

    ホテルへ戻る車の窓から、
    ヤシの木が見えた。

    こんな景色の場所にいるのに、
    僕はずっと眠かった。

    #テレビ業界 #創作大賞2026  
    #お仕事小説部門 #実話


    👉 続きはこちら

    #10  「ヒッチハイクとマリファナおじさん、僕にはテレビしかない!」

    大学時代、一人で海外を旅し、
    ヒッチハイクやスノーボードに夢中だった僕。
    世界を見て、自分の限界も知りました。
    そして最後に残った夢は、やっぱりテレビでした。

    👉 第10話はこちら



    📚 シリーズを最初から読む方はこちら

    『氷河期世代AD、テレビの片隅で。全話まとめ』

    ▼第1話〜最新話まで一覧はこちら


     
     
    バラエティー番組のディレクター。東北出身の氷河期世代。「元気が出るテレビ」に憧れバイトADからテレビ業界へ。佐久間さんでもマッコイさんでもない普通の僕。AD時代の過酷な経験、震災、家族の事、ほぼほぼ実話の話を書きました。今もテレビの現場で働いています。登場人物や設定は一部変更。

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