
字を綺麗に書くのが苦手な弟に、字を褒められることが多い私が伝えた言葉。
私には、専門学生の弟がいる。
今年で20歳になる、弟が。
先日、そんな弟の内定が無事、決まった。昨夜、一緒に夕食を摂っていると、内定先に出すお礼状とやらの文章を書くらしく、その内容を一緒に考えてもらえないか、と頼まれて。弟から頼み事をされるのは滅多にないから、よっぽどの事だな、と瞬時に思って、分かった、いいよ、と答えた。ただ、昨日は私も仕事で、プライベートな自分一人の時間も欲しかったから、1時間でもいい?と伝えて、始める事になった。
書く前に、まず、幾つか弟に質問を投げた。質問をしたのは、弟の気持ちや考え方、価値観を知るために。普段は業務連絡と挨拶以外での話を、しないから。でもここぞ、とばかりに質問を投げた。ほんとうは話したかったのかもしれないね、私。それに対して答えてもらっていくうちに、弟の中での軸というのか、弟が就活するにあたり大事にしていたこと、が、見えてきて。それを知った時、そっか、弟はそういう風に考えていたんだな、と言うのと、その考え方が私ととっても似ているな、と思ったから、それを率直に伝えた。
予てから弟は、字を相対的に綺麗に書く事や、気持ちの言語化だったり書き表す事について、苦手意識がある。それで昔から、特に字で指摘を受ける事が多くて。今回の就活でも、数十枚にわたってイラつきながら履歴書を書いた、と言う話を聞いた時、その苦労を察した。昨夜、ポツリ、と、じつはあのときすごく大変だった、と言っていたから、そっか、大変だったね、頑張ったね、と返してみた。
話をしていく中で、気づけば、私の経験談も交えてた。そうしたら、実際に働いている私の話には重みがある、説得力がある、聞けてよかった、と言ってくれて。サラッと、特例子会社勤務であることと私が障害者である事を言った。じつはちゃんと向き合って伝えたのははじめてだった(と思う…)のだけれど、特に何かの反応をされることはなかった。あれ、話してたのかもしれない。
自分で言うのは厚かましいけれど、私は文章を書いたり言語化したり気持ちを書き表したりするのは得意で、語彙力豊富(ほんとに自分で言うのは厚かましいな、おい)。そんな私と、やると決めたら投げ出さない弟の2人の力が組み合わされば、無敵で。あーでもないこーでもない、あっ、これはどう?ってしていくうちに、双方が、めっちゃいい!となるお礼状の本文を作成する事が出来た。
19時から始めて、気づいたら20:30になってて。終わりが見えて来たから、じゃあ私は部屋に戻るね、と言って、一旦退いた。しばらくして、扉をノックする音が聞こえてきて。入っていいか、と言ってくれたから、いいよと答えると、下書きが完成したから、と見せに来てくれて。見せてくれてありがとう、と伝えて、一通り読んだ。一つだけどうしても気になった漢字の指摘はしたけれど、字を書くのが苦手な弟の、それでも丁寧に書いたのが伝わってくる、立派な作品に仕上がっていた。
弟に、私は言った。事実として、私は字を褒められることが昔から多い。だから、字を書くのが苦手な弟の気持ちは、きっと分からない、申し訳ないけど、って。そしたら、逆に弟に聞かれた。手元にあった、当時の弟が書いた履歴書を差し出しながら、「美咲から見て、(弟が)書いた履歴書を見て、どう思うか」、って。だから伝えた。字を書くのが決して得意ではないんだろうなって言うのは伝わってくる、だけどそれ以上に、時間をかけて丁寧に書こうってして書き上げたんだろうなって言うのが伝わってくるよ、って。それから、私がもし人事で、数多の履歴書を見る立場だとして、履歴書1枚、その1枚にどれだけ想いと時間をかけたかは、その人が書いたその字を見れば一発で分かる、って。たとえ綺麗であったとして、手を抜いているのも見る人が見れば分かる、って。今思えば私ったらほんと、いや貴様何様だよ死ねよって思うけど、気づけばそんな事をペラペラと、ほざいてた。
今日、無事に校正が終わったらしい。帰宅早々、弟が、美咲が考えてくれたやつ、よかったよ、って教えてくれて。ほとんど赤は入らなかった(直しが必要ない)、らしい。今もまだ、弟はリビングでお礼状の本書きをがんばっている。ファイトだ、弟。