
10月30日× 赤地の円窓を破る気魄

柴田是真《円窓鍾馗》
鮮やかな赤色の背景の中央に、ぽっかりと白い円窓が開き、鋭い眼光を放つ鍾馗(しょうき)の姿が覗いている。円窓の下方、赤地の空間へ飛び出すように描き出された、逃げ惑う小さな赤鬼。
魔除けや神話画という劇的な主題であるにもかかわらず、画面全体には奇妙なほどの静けさと、デザイン的な端正さが漂っている。
観察者は、鍾馗の凄まじい怒気や、鬼との間で繰り広げられる退治のドラマへと感情を重ねようとする。
しかし、視線はその物語の熱量へと到達できない。
鍾馗の上半身は完全に「円窓」という幾何学的な枠の内部に閉じ込められており、そこから外に出るのは手元と剣の気配のみだ。円窓の縁と鮮烈な赤の平面が、画面を冷徹な「デザインの構造体」へと固定している。
近づこうとする視線は、円という完璧な閉鎖図形と、平坦な色彩のレイヤーによって、表面で滑走させられる。
この画面が放射する圧倒的な「触れられなさ」は、おどろおどろしい怪奇性によるものではない。なぜこの物語性の高いモチーフは、観客を寄せ付けない自足した装飾秩序として成立しているのか。
ここから先では、円窓という幾何学的フレーム、赤と白の図底関係、そして「記号の遠さ」を形作る視覚の骨格を解剖する。