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The Beatles『Rubber Soul』60年聴き比べ〜IKESUKAライナーノーツ #001

    1965年に発売されたThe Beatles『Rubber Soul』。

    このアルバムには、モノラルとステレオのミックスがあり、その後1987年にはCD化にあわせて新たなステレオ・ミックスが作られました。そして2026年、さらに新しいステレオ・ミックスが登場しました。

    同じ『Rubber Soul』なのに、時代によって音の聞こえ方が違います。

    とりわけ昔のステレオは、ボーカルや楽器が左右にはっきり分かれて聞こえる曲があります。

    2026年版が入荷されたIKESUKA Favorite Shop。試聴会が始まりました。


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    目次

    1. 2026 Stereo Mix

    2. 1965 Original Mono

    3. 1965 Original Stereo

    4. 1987 Stereo Remix

    5. 4つの『Rubber Soul』を聴いて分かったこと

    6. あとがき


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    1. 2026 Stereo Mix

    オーナー「『Rubber Soul』2026年のデラックス・エディション。2枚組のアナログ盤が届きました」

    ニッキー「1枚目が新しいステレオ・ミックス。2枚目にはセッション音源などが入っています」

    オーナー「今日はまず、この新しいステレオを聴いてみようかと」

    ニッキー「いいですね」

    オーナー「ただ、何十年も聴いてるアルバムだからね。新しくなったと言われても、私に何が分かるのか(笑)」

    ニッキー「早速聴いてみましょう」

    オーナー「そうしましょう」

    オーナー「では針落とします」

    ニッキー「どうぞ」


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    A1「Drive My Car」

    イントロが鳴って、最初に出てくる言葉はこれです。

    オーナー「ベース」

    ニッキー「まずそこですか」

    オーナー「んー、これが『Drive My Car』か。言われればそうだな」››

    新しいミックスだからといって、いきなり別の曲に聴こえるわけではありません。ただ、聴いているうちに音の位置が気になってきます。

    オーナー「ギターソロ、右チャンネル」

    ニッキー「はい」

    オーナー「ピアノも右」

    ニッキー「右側の音が気になってきましたね」

    オーナー「ジョンのコーラス、左右」

    最初に出てくるのは「音が良くなった」でも「新しくなった」でもなく、ベース。そして、どこから音が聴こえてくるのかです。

    A2「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」

    シタールやアコギがどこから聴こえるのかを追いかけていると、またベースが気になります。

    オーナー「ベースがしっかり歌ってますね、若干左寄り」

    ニッキー「『大きい』じゃなくて、『歌ってる』なんですね」

    A3「You Won't See Me」

    ここでも、

    オーナー「ああ、ベースの動きがよくわかるなあ」

    どうも2026年版は、ポールのベースを追いかけるのが楽しい。

    その一方で、聴き進めるうちに別の遊びも始まります。楽器だけではなく、ボーカルがどこから聴こえてくるのかが気になってきます。

    そして、A5「Think For Yourself」。

    オーナー「メインボーカル、真ん中だったのが左右に振られた」

    しばらく聴いていると、

    オーナー「ボーカルの配置を追っていくと楽しいな」

    ニッキー「なんか新しい聴き方を見つけましたね」

    その聴き方のまま、**A6「The Word」**へ。

    オーナー「ボーカル、左右に振ってる。サビだけジョン真ん中」

    オーナー「チャッチャってギターは真ん中」

    途中、聞き慣れない音が気になります。

    オーナー「これ何の音?」

    ニッキー「ハーモニウムですね。ジョージ・マーティンが弾いています」

    オーナー「ああ、それは真ん中に出てきたな」

    名前を教えてもらうと、さっきまで正体不明だった音を今度は意識して追いかけられます。

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    2026年版デラックス・エディションの見開きジャケット。

    A7「Michelle」

    オーナー「ボーカルもコーラスも真ん中だ」

    左右へ動く声を追った直後なので、今度は動かないことが耳に入ります。

    そして終盤。

    オーナー「ベースソロ?」

    ところが聴いていると、ベースは別に鳴っています。

    オーナー「ベースと別だね」

    「ベース」の一言から始まったA面は、最後には「これは何の楽器だ?」まで来ています。

    B面に入ると、少し聴き方が変わります。

    B1「What Goes On」

    オーナー「リンゴのうた」

    ニッキー「今度はいきなり人ですね」

    オーナー「ギターがごりっとしてる」

    A面では音の位置を追いかけていましたが、ここではギターの手触りそのものが耳に入ってきます。

    B2「Girl」

    オーナー「ジョンのボーカル」

    そして、ジョンが息を吸う音。

    オーナー「スー」

    ニッキー「そこ拾いますか(笑)」

    この曲では、左右よりもジョンの声そのものが気になります。

    B4「In My Life」

    途中で耳に飛び込んでくる音があります。

    オーナー「ピアノ? きた」

    ニッキー「それ、ジョージ・マーティンのピアノです。半分のテンポで演奏して録音したものを、倍速で再生しているんです」

    オーナー「だからあの音なのか」

    聴こえた後から正体を知る。これもなかなか楽しい。

    B7「Run for Your Life」

    オーナー「軽やかなアコギから」

    少しすると、

    オーナー「これはエレキだぞ」

    さらに、

    オーナー「みんなで歌ってる感じ」

    最初の一言は「ベース」。そこから楽器の位置が気になり、ボーカルの配置を追いかける遊びを見つけ、気になる音をひとつずつ拾いながら最後の曲まで来ました。

    オーナー「こんなにちゃんと聴き込んだことないから、これかって感じだ」

    ニッキー「なるほど。昔のミックスを細かく覚えているわけじゃないから、『ここが変わった』とはならないんですね」

    オーナー「そうなんだよ」

    オーナー「CDがあるから60年前に戻りますか」

    ニッキー「戻りましょう。一気に1965年へ」

    2. 1965 Original Mono


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    『The Beatles in Mono』収録の『Rubber Soul』。1965年オリジナル・モノ・ミックス。

    A1「Drive My Car」

    オーナー「躍動感」

    ニッキー「2026年版の第一声は『ベース』でした。今度はいきなり曲全体ですね」

    オーナー「全体にぐわって感じだ」

    ところが、勢いだけではありません。

    オーナー「でも1枚幕がかかってる感じもするね」

    ニッキー「『ぐわっ』と来るのに、『幕』もある。両方あるんですね」

    オーナー「さっきと比べてベースが追えないですね」

    ニッキー「2026年版ではベースを一本の線みたいに追えたのに、今度は演奏全体がひと塊で来る感じですか」

    一曲目から、2026年版とは耳の使い方が変わってきます。

    A2「Norwegian Wood」

    オーナー「はい真ん中w」

    ニッキー「そりゃそうです。モノですから(笑)」

    2026年版では「シタール右」「左もシタール?」と忙しく追いかけていたのに、全部真ん中です。

    オーナー「こっちから聴いた方が良かったかな」

    ニッキー「でも2026年版を先に聴いたからこそ、『はい真ん中』が比較になってますよ」

    しばらく聴いて、

    オーナー「シタールが印象的。以上」

    位置がなくなると、残るのは音そのものです。

    A3「You Won't See Me」

    オーナー「これもギターのリフとかがぼやっとしてるわ」

    ニッキー「最初に言っていた『一枚幕』とつながりますね」

    ところが、

    オーナー「やっぱりさっきのはベース!ですね」

    一度2026年版で見つけたベースは、モノの塊の中でも探せるようになっています。

    A4「Nowhere Man」

    オーナー「楽器のパートが主役になるって感じ」

    ニッキー「面白いですね。個々の楽器を追うというより、演奏そのものが前に出てくる」

    その直後、

    オーナー「ジョンの声がでかいっつうか、割れてんだよw」

    ニッキー「配置も何もなく、今度はジョン本人が来ましたね(笑)」

    2026年版では声の場所を聴いていた曲です。モノになると、場所ではなく声の存在感が気になります。

    A5「Think For Yourself」

    2026年版では、ここで「ボーカルの配置を追っていくと楽しいな」と言っていました。

    ところが今回は、

    オーナー「ファズがメインなのか」

    オーナー「全編ファズだね」

    ニッキー「同じ曲なのに、何を主役だと思うかまで変わりましたね」

    2026年版では声の配置が面白かった曲が、1965年のモノではファズ・ベースの曲として耳に入ってきます。

    B面へ。

    B2「Girl」

    オーナー「スー」

    ニッキー「そこは今回も拾う(笑)」

    オーナー「ジョンが前に出てるね」

    そして、

    オーナー「全面ジョン」

    ニッキー「全面ジョン(笑)」

    オーナー「顔がデカイ、みたいな」

    左右の話はすっかり消れました。今度はジョンの顔がデカい。これはこれで、ずいぶん具体的です。

    B3「I'm Looking Through You」

    オーナー「真ん中でパタパタ。パタパタが目立たない」

    2026年版では右側から聞こえていた「パタパタ」です。

    そして、ここで最初の「一枚幕」がもう少し具体的な言葉になります。

    オーナー「枠からはみ出せないで潰れちゃってる感じ」

    ニッキー「なるほど。『幕』から今度は『枠』になりましたね。音が大きくなっても、その外へ広がらない」

    オーナー「シャウト感もさっきの方があるね」

    「古い音」と一言で済ませるより、ずっと変な感じです。勢いはあるのに、音が大きくなると枠の中で押し合っているように聞こえます。

    B4「In My Life

    オーナー「やっぱりジョンが収まってない感じ」

    ニッキー「『Nowhere Man』では『割れてる』、『Girl』では『全面ジョン』『顔がデカイ』。ずっとジョンが枠に収まってませんね」

    モノを聴き始めたときには「全部真ん中」で終わるかと思っていましたが、真ん中にもいろいろあります。

    B7「Run for Your Life」

    オーナー「雑なアコギから」

    ニッキー「2026年版では『軽やかなアコギ』でしたよ(笑)」

    オーナー「みんなで歌ってる感も無くなった」

    ニッキー「それも2026年版ではありましたね」

    オーナー「ジョンが頑張ってる」

    最後まで、やっぱりジョンの顔がデカい。

    1965年のモノを一枚聴くと、2026年版で楽しかった「右」「左」はなくなります。その代わりに出てくるのは、「ぐわっ」「幕」「ぼやっと」「主役」「顔がデカイ」「枠からはみ出せない」。

    同じ演奏なのに、気になるものだけでなく、それを表す言葉まで変わってきます。

    3. 1965 Original Stereo

    1965年のモノを聴き終えて、次は同じ1965年のオリジナル・ステレオです。

    オーナー「これも同じCDに入ってるんだよね」

    ニッキー「はい。この『Rubber Soul』のモノCDには、ボーナスとして1965年のオリジナル・ステレオ・ミックスも収録されています」

    オーナー「じゃあ今度は、1965年のステレオを聴いてみましょう」

    ニッキー「モノと同じ年ですからね。どう違って聴こえるか」

    オーナー「行きます」

    A1「Drive My Car」

    曲が始まって、まず気になったのはやっぱり左右です。

    オーナー「ボーカル右。楽器左」

    ニッキー「いきなり分かれましたね」

    オーナー「人が右にしかいない(笑)」

    ニッキー「左には演奏、右には人。かなり思い切った分け方ですね」

    しばらく聴いて、

    オーナー「真ん中に誰もいない」

    2026年版で楽器や声の位置を追いかけていたときとは、ちょっと様子が違います。

    位置を探す必要がありません。

    最初から、ものすごく離れています。

    A2「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」

    オーナー「これも右に歌、左に楽器」

    ニッキー「また同じように分かれましたね」

    オーナー「真ん中いないんだよ」

    しばらく聴いているうちに、左右の離れ方そのものが気になってきます。

    オーナー「ヘッドフォン縦にしたい」

    ニッキー「縦(笑)。ヘッドフォンでそんな聴き方できませんよ」

    オーナー「右と左が離れすぎなんだよ」

    音楽を聴いているはずなのに、だんだんヘッドフォンの形に文句を言い始めます。

    A3「You Won't See Me」

    オーナー「耳おかしくなりそう」

    ニッキー「まだ3曲目です(笑)」

    オーナー「聴き辛え」

    ところが、悪いことばかりでもありません。

    オーナー「でも音はキレイなんだよ」

    さらに、コーラスの奥で鳴っている音を追いかけます。

    オーナー「tititititiが追える」

    ニッキー「左右が極端だからこそ、個々の音は見つけやすいんですね」

    聴きづらい。でも音はキレイ。そして細かい音は追える。

    1965年のステレオ、だんだん妙なことになってきました。

    A4「Nowhere Man」

    オーナー「やっぱり右に歌、左に演奏なんだよな」

    ニッキー「ここまで来ると、もう配置のルールが分かってきましたね」

    オーナー「普通にやれ(笑)」

    ニッキー「さっきまで位置を追いかけて楽しんでたのに(笑)」

    オーナー「工夫しろ」

    ニッキー「ビートルズに言ってます?」

    左右に分かれていること自体が、完全に鑑賞の中心になっています。

    それでも聴いていると、左右に分かれたことで見えてくる音もあります。

    オーナー「やっぱり音はキレイなんだよなあ」

    ニッキー「聴きづらいのに、音はよく見える」

    オーナー「そう。おかしなアルバムだぜ」

    1965年のオリジナル・ステレオは、結局この一言に落ち着きました。

    「人が右にしかいない」「真ん中に誰もいない」「ヘッドフォン縦にしたい」「耳おかしくなりそう」。

    ここまで、音楽そのものより「音がどこにいるのか」を喋った版はありません。

    そして次に聴くのは、その22年後。

    オーナー「じゃあ1987年に行きますか」

    ニッキー「行きましょう。ただ、その前にひとつだけ。1987年版は、1965年のステレオをそのままCDにしたものではありません」

    オーナー「違うんだ」

    ニッキー「ジョージ・マーティンがCD化にあたって、新しくステレオ・ミックスを作っています」

    オーナー「じゃあ22年後に、もう一回作り直したわけね」

    ニッキー「そういうことです。1965年のあの左右から、どう変わったのか聴いてみましょう」

    4. 1987 Stereo Remix


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    1987 Stereo Remix。ジョージ・マーティンによるCD化時のリミックス。

    A1「Drive My Car」

    オーナー「あ、真ん中」

    ニッキー「いますね(笑)」

    オーナー「聴きやすい」

    1965年版では「真ん中に誰もいない」と言っていたのに、22年後のミックスではまず真ん中の存在に気づきます。

    オーナー「左右にはいるんだけど、住んでるとこが真ん中寄りになった感じ」

    ニッキー「なくなったわけじゃなくて、距離が縮まったんですね」

    オーナー「そうそう」

    A2「Norwegian Wood (This Bird Has Flown)」

    オーナー「これも聴きやすいな」

    ニッキー「もうヘッドフォンを縦にしなくて大丈夫そうです(笑)」

    オーナー「さっき『工夫しろ』って言ってたのに(笑)」

    左右に音があることは変わりません。でも1965年版を聴いた直後だと、その距離の違いがよく分かります。

    何曲か聴いて、

    オーナー「これなら普通にアルバムとして聴ける」

    ニッキー「1965年版では定位そのものをずっと聴いてましたからね」

    オーナー「あれは音楽聴いてる場合じゃなかったからな(笑)」

    1987年版は、ここで終了。

    1965年のオリジナル・ステレオほど左右に振り回されることもなく、2026年版ほど一つひとつの音を追いかけることもありませんでした。

    ただ、1965年版の直後に聴いたことで、「真ん中」「聴きやすい」「住んでるとこが真ん中寄り」という言葉が自然に出てきました。

    そして、ここまでで4つの『Rubber Soul』を聴いたことになります。

    5. 4つの『Rubber Soul』を聴いて分かったこと

    4つを続けて聴いてみると、同じ『Rubber Soul』なのに、こちらが喋っていることがまるで違いました。

    2026 Stereo Mixでは、最初の一言が「ベース」。そこから楽器の位置、ボーカルの配置、ハーモニウムやピアノなど、気になる音をひとつずつ拾っていきました。

    1965 Original Monoでは、「ぐわっ」「一枚幕」「顔がデカイ」「枠からはみ出せない」。音の位置ではなく、演奏や声がひとつの塊としてどう迫ってくるのかを喋っています。

    1965 Original Stereoになると、「右」「左」「真ん中に誰もいない」。ついには「ヘッドフォン縦にしたい」。曲の感想より、音がどこにいるのかの話ばかりになりました。

    そして1987 Stereo Remixでは、「真ん中」「聴きやすい」「住んでるとこが真ん中寄り」。

    同じ14曲を聴いているのに、ミックスが変わると、耳が拾うものも、そこから出てくる言葉も変わっていました。

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    60年分の『Rubber Soul』、IKESUKA Favorite Shopに集合。

    6. あとがき

    ニッキー「結局、どれが一番良かったんです?」

    オーナー「それ決めなきゃダメ?」

    ニッキー「別に決めなくてもいいです」

    オーナー「じゃあ決めない」

    ニッキー「はい(笑)」

    少し考えます。

    オーナー「でも1965年のステレオはおかしい」

    ニッキー「そこだけは決まってるんですね」

    オーナー「おかしなアルバムだぜ」

     
     
    RECORDS / MOVIES / BOOKS / DETOURS 大宮の部屋から営業中。 レコードと映画と、そこから始まった寄り道の記録。 There’s No Place Like My Room Today.

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