
#183【介護雑記】高齢者の「誤嚥性肺炎」は”終末期”のはじまり。
2025年3月、日本人の死因が、従来の「癌」や、「脳卒中」、「心臓疾患」などを抑え、「認知症」が首位になったと日経新聞が報じた。

「認知症で死ぬことはない。」という日本人の根も葉もない認識を覆す結果だと思われる。
厚労省の人口動態統計は死亡届を基に集計している。誤嚥性肺炎や肺炎のほか、いわゆる自然死である老衰が死因の上位を占める。認知症はこうした死因のきっかけとなる。認知症に詳しい東京大学の岩坪威教授によれば「認知症の原因となる病気では嚥下障害が合併症として現れることが多いほか、寝たきりでは飲み込み自体も難しくなり、誤嚥性肺炎などにつながる場合がある」という。
やはり「認知症は”迎えの舟”」なのだ。
※誤嚥性肺炎とは?!
食べ物や唾液などが気管に入り込んで細菌が肺に入り込むことで起こる肺炎。高齢者や神経疾患などで寝たきりの患者さんに多く見られる。
◼️「認知症」を発症すると「誤嚥性肺炎」のリスクが高まるのは何故?!
ー 理由その1.
「認知症」は、「身体機能」が低下する為、「嚥下機能」=「食べ物を飲み込む力」が衰える。(嚥下を支える筋力の低下、唾液の分泌量の低下)
ー 理由その2.
「認知症」は、「免疫機能」が低下する為、本来、唾液である程度、除菌できる、口や鼻から入ってくるウィルスや雑菌を口腔内で除菌できなくなり、ウィルスや雑菌が、ダイレクトに肺に流入しやすくなってしまう。
認知症が中度~重度になると、寝ている間に自分の唾を飲み込んでいるだけでも、「誤嚥性肺炎」を発症してしまう症例もある。こうなるともう、無菌室にでも入れておかないと、誤嚥性肺炎は防げない。
ー 理由その3.
「認知症」で身体機能が衰えると転倒事故が多くなる。骨折などによる手術や療養を切っ掛けに「寝たきり」になりやすい。「寝たきり」になると、「嚥下機能」の衰えが加速する。➡️「誤嚥性肺炎」のリスクが高まる。
◼️「認知症」+「誤嚥性肺炎」は、治癒できない。
認知症を発症していない、一般的な健常者であるなら、誤嚥性肺炎は治癒できる。
しかし、「認知症」を発症している場合においては、「誤嚥性肺炎」を治癒することはできない。抗生剤の点滴などで、一時的に回復しても、また再発を繰り返す。
何故なら、前途に述べた様に、「認知症」による「身体機能の低下」や「免疫機能の低下」は、治癒することが出来ないからだ。
◼️「誤嚥性肺炎」の治療は、「食べさせないこと」
誤嚥性肺炎で病院に入院すると多くの場合、「栄養剤の点滴」と「抗生剤の点滴」が中心となる。
「栄養剤の点滴」は、「本人が食欲がないから。」ではなくて、まず「経口摂取」を止める「絶食治療」が、「誤嚥性肺炎」の治療として必要だからだ。
これは、高齢者ではなくて、食欲や体力のある若い患者に対しても、基本的に同じ処置が適用される。
しかし、これが、認知症を発症している高齢者には、文字通り、”命取り”になっていく。
◼️「認知症患者」が「栄養剤」を点滴されるとどうなるか?
元々、「身体的機能の低下」と「免疫機能の低下」が、始まっている「認知症患者」に、「栄養剤」を点滴しても、多くの場合、もう身体が受け付けない。
必要以上の大量の水分が体内に入ってくるため、異常に身体が浮腫んだり、吸収しきれない水分が足のつま先から、したたり落ちてくる場合もある。
また、栄養剤の投与により、吸収しきれない水分を、自然に身体の外へ排出させようと、「痰」の量が増える。しかし、「認知症」で「嚥下能力」が低下している為、自分で「咳払い」をして、痰を取り除くことが出来ない。
喉元にどんどん溜まっていく「痰」を、適宜、取り除いてやらなければ、患者は「窒息死」してしまう。
よって、「医療器材による痰吸引処置」が必要となり、看護・介護は24時間体制に突入せねばならない。かつ、医療器材による痰吸引は、看護師など医療資格保持者でなければ出来ない。家族による「在宅介護」では厳しくなる。
「栄養剤」の投与を止めれば、余分な水分が身体に入ってこなくなるので、「痰」の量も軽減され、器材による痰吸引処置はしなくても済む。
しかし、「絶食治療」により、嚥下機能がさらに萎んでしまった高齢患者では、「経口摂取」を復帰させることは難しい。無理に食べさせれば、また「誤嚥性肺炎」を再発させてしまう。
食事は離乳食と同じく、全てペースト状にして、少しづつ、ゆっくりと食べさせなければならない。「食事介助」の負担が格段に増える。
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抗生剤が効いて、熱が下がり、肺の炎症も治まれば、「誤嚥性肺炎」については、一応の治療が完了することになる。しかし、「認知症」による、「身体機能の低下」や「免疫機能の低下」は治癒できない為、「誤嚥性肺炎」のリスクが消えることはない。
むしろ、「栄養剤」や「抗生剤」の点滴治療の為、1週間もベッドに寝たきりにされれば、高齢者の筋力はたちまちの内に低下して、完全に「寝たきり」となってしまう。
よく入院時には、自力で歩けていた高齢者が、退院時には、「寝たきり状態」になって、認知症のステージも、要介護度も上がって、自宅又は施設に帰ってくるのはこの為だ。
自宅や施設で、どんなに苦労して「食事介助」をしても、認知症が進行していく限り、ほんのわずかな加減で、誤嚥性肺炎は再発してしまう。
そうして入退院を繰り返す度に、衰弱が進み、最後は死に至る。
「認知症」でなくても、癌や他の疾患で「身体機能」や「免疫機能」が低下している高齢者であれば、やはり「誤嚥性肺炎」の発症リスクは高い。
◼️誤嚥性肺炎の「絶食治療」が、「延命処置」に繋がりやすい。
「誤嚥性肺炎」の「絶食治療」を切っ掛けとして、「食事の経口摂取」ができなくなり、そのまま、人工栄養〔経管栄養(経鼻,胃瘻いろう)、静脈栄養〕などの「延命処置」に繋がりやすくなる。
それにプラスして、1日中、何度も口の中に固い異物を突っ込まれて「痰吸引」されるという、拷問の様な苦痛を患者に与えることとなる。
一方、海外の医療機関では、認知症患者または、高齢患者が「誤嚥性肺炎」を発症した場合は、解熱剤や抗生剤の飲み薬を処方する程度で入院はさせない。
その他、身体に痛みがある場合には、鎮痛剤や安定剤を処方して対応する「緩和ケア」=「終末期ケア」に移行する。食事も、本人が食べる意志がなければ、無理に与えることはしない。
認知症が及ぼす自然の摂理に添って、最期までQOL(生活の質)を、低下させることなく、穏やかに旅立てるのを見守るのみだ。ここが海外の医療や介護体制とは違うところ。
しかし、高齢者にとって、「誤嚥性肺炎」は、「終末期のはじまり」であることは、海外でも日本でも同じなのだ。
そしてそれは、いつ発症するかわからない。
例え、毎日、普通に食事を食べて、様子が穏やかであっても、微熱がずっと続いているようであれば、「誤嚥性肺炎」を疑ってみなければならない。
その時、「延命治療」をどうするのか?「看取り介護」をどうするのか?
日頃から、案を練っておく必要性を私は強く感じている。
知識は武器。
介護とは、戦略なのだ。