
歳をとるほど、初心者でいる時間が大事になってきました
ベンチプレスを初めてやった日、バーだけの20kgで潰れました。
一人では持ち上げられなくて、助けてもらって、なんとか起き上がったんです。
あの頃は、下手でいることが全然苦じゃなかった
2016年の秋、僕は176cmで52kgでした。
Web系の仕事で独立はしていたものの、収入は不安定で、先が見えない感じがずっとありました。そんな時期に筋トレを始めたんです。
初心者講習会に出て、あとはネットで調べながらの自己流でした。
でも、楽しかったんですよね。下手なのに、楽しい。
昨日できなかった重さが、今日は少し上がる。努力が数字で返ってくる感覚は、仕事ではなかなか味わえないものでした。
経営を始めてからは、初心者でいる時間が消えていった
パーソナルジムを始めたとき、僕は非トレーナー出身でした。床の傾斜を直して、内装も自分たちで貼りました。ゴムマットは1回目で失敗して、敷き直しています。
当時は隠す余裕もなかったので、初心者でいるしかなかったんです。
それが、少しずつ変わっていきます。お客様が増えて、スタッフが増えて、「ここは自分が判断する場所だ」と思うようになる。わからないことがあっても、わかっている顔をしてしまう。
パン事業のときもそうでした。お菓子とパンは似たようなものだろう、と素人考えで入って、気温や湿度で生地が変わることを後から知りました。「わかったつもり」で入った結果です。
怖いのは、失敗よりも下手な自分を見ることだった
今年の6月ごろ、自分のことを書き出していて気づきました。
会社のウェイトが、人生の中で大きくなりすぎている。筋トレは仕事にしてしまったので、仕事の外に「下手でいられる場所」がなくなっていたんです。
新しいことが怖い。その正体は、失敗ではありませんでした。下手な自分を、自分で見ることが怖かったんです。
正直、これはかなり効きました。
気づけば、AIとWebでは完全な初心者に戻っていた
ただ、振り返ると、ひとつだけ例外がありました。
AIを使った仕組みづくりを、自分で手を動かして覚えているんです。音声メモの自動文字起こし、経理の仕訳の自動化、会社HPの移行。分からない用語だらけで、最初は何度もつまずきました。
エラーの意味が読めない。何が分からないのかが分からない。経営者になってから、こんなにできない自分をさらしたのは久しぶりでした。
でも、不思議と嫌じゃなかったんです。動かなかったものが動いた日は、バーを少し持ち上げた日と同じ顔をしていたと思います。
最近、創業理念を「フィットネスとWebに救われた恩義を〜」と改めました。Webも、あの不安定だった頃の自分を救ってくれたものだった。そう素直に思えたのは、初心者として触り直したからかもしれません。
20kgで潰れた頃に戻れるのか
歳をとると、「初めて」は自然には来なくなります。経験が積み上がるほど、判断は速くなるし、失敗も減る。それは良いことなんですが、裏返すと、意識して取りに行かない限り、初心者でいる時間は減っていくんですよね。
見附市で事業をやっていると、わからないのにわかったふりをすれば、案外すぐ見抜かれます。「まだわかっていない」と言える柔らかさは、意識しないと手放してしまうものだと思っています。
筋トレと同じで、使わない筋肉は落ちます。
初心者でいる筋力を、これからも使い続けられるのか。正直、まだ答えは出ていません。ただ、下手なまま楽しめた頃の自分が確かにいたので、そこに戻れる場所を、もう少し探してみるつもりです。