
ライブ帰りの夜、AI画像生成で黒狼の怒りを分解しはじめた|感情の文法を探す制作ノート
ライブの帰り道だった。
さっきまで東京ドームのステージには、筋肉質の男たちがいた。
光を浴びて、腕や肩や胸の輪郭が動きとして見える。踊っている、というより、身体そのものが情報を持っているように見えた。
どのアーティストとは言わないが、事務屋はそういう方向性が好きである。
現在、ペンライトを振り回した腕は筋肉痛、声は枯れ果てている。
そのせいか、帰りの電車の中でふと思った。
人間の肉体表現ではなく、動物の身体で感情を表現したらどうなるのだろう。
たとえば、自分がよく使うモチーフである「黒狼」の怒り。
(なんで怒りかって?・・・純粋に、表現上わかりやすい感情だと思ったから。それだけ笑)
ただ牙を剥いた狼ではない。怒っている。だが、怒りだけではない。
警戒している。威嚇している。こちらの動きを読んでいる。次にどう動くか分からない。
そういう一瞬を、AI画像生成でどこまで言葉にできるのか試してみた。
もう入り口からして正直テンションがおかしいのだが、ライブ後の高揚感ということにしておいてほしい。・・・便利な言葉である笑

威嚇、不穏、動く直前の気配がかなり出た。
最初は単純に、「怒った黒狼」を作ろうとしていた。
だが、やってみるとすぐに分かった。
angry と書くだけでは足りない。
もちろん、angry と入れれば、怒ったような狼は出る。
牙を見せたり、唸ったり、目つきを鋭くしたりする。
でも、それだけだと、どこか記号的になる。
怒っている。
……しかし、何に対して怒っているのか。
自分より小さい相手を威圧しているのか。
対等な相手と睨み合っているのか。
自分より大きい脅威に対して、恐れを飲み込みながら一歩も引かずにいるのか。
同じ怒りでも、対象が違えば、姿勢が変わる。
目が変わる。耳の向きが変わる。首や肩の張り方が変わる。前脚に乗る重心も変わる。
ここで、ようやく気づいた。
感情は、ただ内側にあるものではない。
多くの場合、感情には対象がある。
怒りは、何かに向いている。
恐れも、警戒も、威嚇も、観察も、何かとの関係の中で立ち上がる。
つまり、画像生成で「怒り」を出したいなら、単に怒りという言葉を投げるだけでは足りない。
何に向いた怒りなのか。
相手との力関係はどうなのか。
怒り以外に何が混ざっているのか。
そこを考える必要があった。

ここから、怒りを強めるより分解する方向に移った。
今回、黒狼で一番しっくり来たのは、純粋な anger ではなかった。
むしろ近かったのは、
不穏。
警戒。
威嚇。
抑えた敵意。
次の一手を測る目。
黒狼は、怒りを爆発させるよりも、怒りを内側に圧縮している方が似合った。
牙を剥いて大暴れする狼も出せる。
ただ、それはすぐに「怒っている猛獣」になる。
一方で、頭を少し低くし、耳を少し後ろに倒し、首と肩に力をため、片前脚を前に出す。
すると急に、「このあと何かが起こる」気配が出てくる。
狼は、ただ怒っているのではない。
何かを見ている。何かを判断している。次の一手を決めかねている。
あるいは、こちらが一歩でも動けば、即座に動く。
その未決定の瞬間が、たぶん一番強かった。

怒っている目というより、相手を測っている目に近づいた。
もう一つ分かったことがある。
フォトリアルな狼は、構造を確認するには向いている。
首の太さ、肩の量感、耳の角度、前脚の出方。そういう身体の情報を見るにはかなり役に立つ。
だが、完成形としては、完全なフォトリアルでは少し物足りなかった。
僕が欲しかったのは、現実の狼そのものではなく、現実の狼を踏まえたうえで、感情と不穏さが絵として強調された黒狼だったのだと思う。
だから最終的には、painterly realism に寄っていった。
写実的な骨格や毛並みを残しつつ、最後に乾いたブラシのような筆致が乗る。毛並みがただ柔らかくなるのではなく、直線的に削られたような、ひっかき傷のような、薄いベールのようなタッチが入る。
これが、不穏さをかなり強めた。

構図、暗部、筆致によって、「このあと動く」気配が強くなった。
ただし、ここにも落とし穴があった。
「絵画的に」と言いすぎると、狼の威嚇が丸くなる。
作品として綺麗にはなるが、怒りや不穏が引っ込んでしまう。
Midjourneyは、どうにも被写体を守ろうとする。
狼本体はきれいに残し、ブラシの荒れや傷のような表現を、背景へ逃がすことがあるようだった。
今回、そこもかなりはっきり見えた。
つまり、感情の文法と、仕上げの文法は別物だった。
まず、狼の中に怒り・警戒・威嚇・判断を作る。
そのあとで、作品として閉じるために仕上げの筆致を乗せる。
順番を間違えると、絵としては綺麗でも、狼の刃が丸くなる。

painterlyにはなったが、狼の怒りが背景に下がった。
最終的には、もう一度威嚇を戻した。
上唇を持ち上げる。
牙を部分的に見せる。
目は光らせるが、光らせすぎない。
耳は少し後ろ。
首と肩に力をためる。
片前脚を前に出す。
そして、「動く直前」の一瞬に置く。
そのうえで、硬い筆致を短く入れる。
これでようやく、黒狼の怒りが戻ってきた。

ポーズ、怒り、不穏、前脚、ブラシのバランスがかなり良くなった。
今回分かったのは、画像生成において大事なのは、単に強い言葉を入れることではない、ということだった。
「angry」と書けば、怒った狼は出る。
でも、どんな怒りなのかは決まらない。
誰に向けた怒りなのか。怖がっているのか。見下しているのか。
対等な相手と睨み合っているのか。次の一手を測っているのか。
その感情は、目に出るのか、耳に出るのか、首に出るのか、毛並みに出るのか。
そこまで考えたとき、ようやく狼の表情が変わり始めた。
これは、黒狼に限った話ではないと思う。
黒豹なら、怒りよりも静かな支配が似合うかもしれない。
馬なら、緊張や気高さが首や胸に出るかもしれない。
ワタリガラスなら、苛立ちや知性が羽の乱れと目に出るかもしれない。
動物ごとに、似合う感情がある。
そして、その感情は、その動物の身体と表面に翻訳される。
今回は、その最初の実験として、黒狼の怒りを分解してみた。
たぶん、この話はまだ完成ではない。
その代わり、なんとなく生成していた画像に対して、かなり大事な入口に立てた気がしている。
あ、先にもう少し完成品を置かせてほしい。



さて、ここから先の有料部分では、実際に使ったプロンプトと、A〜Lまでの試行錯誤、うまく効いた言葉・失敗した言葉、そして今回整理した「黒狼の怒り文法」と「他動物へ横展開するテンプレート」を制作ノートとして残しておく。
同じ画像を再現するための魔法のプロンプトではない。
抽象的な言葉をどう分解し、画像生成に効く文法へ変えていったかの記録です。
ご興味がある方はどうぞ。
(正直無料部分で全部語ると、長文すぎてみんな逃げていく気がしたから2段構成の記事にしたというところが正しい。)
ここから有料部分:黒狼の怒り文法ノート v1
ここから先は制作ノートです。
完成画像だけではなく、どの言葉が効き、どの言葉が外れ、どこで表情が丸まり、どこで威嚇が戻ったのかを記録しています。
一発で神画像を出すための魔法のプロンプトではありません。
むしろ、抽象的な言葉をどう分解し、画像生成に効く文法へ変えていったかの記録です。
有料部分に含まれるものは、以下です。
黒狼の怒りを分解した制作ノート
A〜Lまでの試行錯誤と代表プロンプト
うまく効いた言葉/失敗した言葉の整理
黒狼の怒り文法チェックリスト
他動物へ横展開する汎用テンプレート
1. 出発点:「感情 × 身体 × 表面」
今回の出発点は、かなり単純でした。
人間の顔ではなく、動物の身体で感情を表現してみたい。
そこから、次の3つを軸にしました。