メインコンテンツへスキップ
見出し画像

読書記録『聖女の救済』/2026/10/16

    東野圭吾作、2008年発行。ガリレオシリーズ五作目。
    ネタバレ有りの感想です。

    読んだきっかけ

     『永遠の記憶』を読み、改めてガリレオシリーズを読み直したくなったため、図書館で借りました。中学生時代に何作品か読んだことがあるけれど、この作品は読んだことがなかった気がする。
     ドラマ版で天海祐希さんが犯人役をやっていた、というのはなんとなく覚えていたのですが、天海祐希さんが綺麗だったことしか覚えていないので実質初見でした。

    感想

     タイトルの回収の仕方が美しいなと思いました。ガリレオシリーズはたいてい犯人が最初からわかっているため、どのようにこの犯人まで辿り着くか?を考えて読むことが多かった気がするのですが、何が「救済」なのか?という答えが最後にわかっておぉ、となりました。
     殺すことが誰かにとっての救済なのかな、と思っていたのですが、まさか「殺さないでいたこと」が救済だったとは。
     真柴義孝(被害者であり犯人の夫)は魅力的でありながら、女性を「子供を産む道具」としか捉えていない、強めの思想をお持ちのタイプの人間。
     物語後半では、彼の元交際相手が子供をなすことができなかったことが理由で別れを切り出され、自殺を遂げたことが明かされる。
     元交際相手は子供を産めないから、友人の綾音(今回の犯人)と二股かけられていた、とか色々すごいですが詳細は割愛しますが、ここまで交際相手に対して「子供を産む」を求め続けられるのは逆にすごいと思います。いっそ清々しいまである。
     その後義孝は綾音と結婚し、綾音にも「一年以内に子供ができなかったら離婚」という条件を突きつける。これを受けての会話が冒頭だったんだ、というのがわかった時はグッときました。
     綾音は、自分が元々子供を産めない身体であることを知っている。そして、友人の自殺の真相も知っている。
     その上で、義孝の手のひらの上で「子供ができる」という救済を待ち続ける主婦に成り下がるのではなく、義孝の考えが変わることを信じて彼を殺さないでいてあげる、すなわち「救済」する立場にまわり、逆に彼の命運を掌中に収める、というのがすごいなと思いました。
     だからあえてお家の中にずっといるような生活をしていたわけですね。結婚によって活動的でなくなったわけではない、むしろ彼に対して精神的優位な立場を保つためにあえて主婦やってるというのが、月並みですが現代の聖女像って感じがしました。

     トリックはすごいなと思いましたが、動機についてはあまりピンときませんでした。単に友人を死に追いやったことに対する仇討ち的な動機なのかと思っていたら、そうではない。
     義孝の考え自体はなかなかぶっ飛んでいてそこを擁護するつもりはありませんが、相手がこれほどまでに子供を望んでいることがわかってなお、彼の考えが変わることに期待してしまうのはよくわからないなと思いました。妊娠が望めない身体であり彼の切望は果たしてあげられない、それでも彼のそばにいたい、と思わせるだけの魅力が義孝にはあったのですかね。(確かに根拠に裏付けられた自信に満ち溢れている人は魅力的に見えますが。)
     とはいえ、義孝の価値観が一人の女性を死に追いやったことは事実で、おそらく彼が目的を達成する日が来るまで、彼のために苦しむ女性は生まれ続ける。そういった未来の被害者への「救済」という意味でも、綾音は彼を殺すことを選んだのかな、とも思いました。何よりそれが、なくなった彼女の友人に対する贖罪にもなると考えたのでしょうか。

     それ以外に印象に残ったのが草薙が綾音に惹かれてつつも、「彼女を救う」ために刑事としての職務を全うしようとしていたところです。
     無闇に彼女を庇うのではなく、自分の推理によって彼女の嫌疑を晴らそうと奮闘しているのがいじらしいなと思いました。(コナンにも似たようなストーリーあった気がした。小五郎さんが惹かれた人を庇おうと推理をすればするほど、彼女が犯人だという確信が深まるばかり…みたいな)。
     内海は草薙が捜査に私情を挟むことを不安視しますが、草薙はそこまで弱い人間ではなかった、そしてそのことを湯川は理解していた。本編とは関係ないけれど登場人物たちの関係性が窺えるような描写が多かったのも、ガリレオシリーズが長く愛されてきた理由なのかな、と思いました。 

     

    おわりに

     相変わらず湯川先生はかっこよかったですが、読んでみると湯川はあくまで脇役といった感じで、基本的には草薙や内海、犯人に焦点が当たって物語が進んでいることに改めて気がつきました。良くも悪くもドラマ版の湯川先生はビジュアルと存在感が素晴らしすぎて、ドラマ版ではもっと湯川先生がメインだった気がしてしまう。
     とにかく、ガリレオシリーズはやっぱり面白いということを再認識できました。
     そして、表紙のパッチワークはもしや…。
     

     


     
     

    mimimi

     
     
    一般理系大学生です。 日々の読んだもの、観たものの記録

    あなたへのおすすめ