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「本が好きなのに」文字を追うことに疲れてしまった夜に救われた話

    「あぁ……まただ」
    そう思うころには、瞼はかなり重くなっている。

    数分抗ってみるのだけれど、パタン──。
    諦めて読みかけの本を閉じた。そして、体はぬくぬくの毛布の奥へと吸い込まれ、意識は遠くを彷徨いはじめていた。


    本を読むのがなによりも好きだった。
    なのに最近、最後まで読み切れない。

    仕事柄、一日中パソコンと向き合って文章を読んで、書いている。
    気づけば夜には、もう文字を追いたくない日が増えていた。

    気持ちは「本を読みたい」はずなのに、
    脳と目が疲弊して、本の世界に没頭できないのだ。

    好きなのに、読めない。
    小さなモヤモヤは、積読という形になっていた。


    ***


    【選書チケット】あなたのnoteからぴったりの本を選ばせてください。


    ゆずさんの企画を見つけたとき、胸がトクンと高鳴った。
    正直な話、内容はまだ理解できていなかった。

    でも、この感じ……わたし知ってる。
    直感センサーが先に反応する感覚。

    申し込む?
    いや……でも……選んでもらって読めなかったらどうしよう(時間を割いて選んでもらったのに悪いな)

    迷っているわたしに、ベッドの横の積読たちが無言の圧を送ってくる。


    ぼくたちは、いつ読み切ってもらえるんでしょうか?


    ポチッ。
    好奇心と直感に抗えず、気づけば申し込みボタンを押していた。


    ***


    本好きで、たくさんの本を読んでいるゆずさんは、どんな本をわたしに選んでくれるんだろう?

    想像するだけで、わくわくした。
    時間に鮮やかな色がつき、流れはじめた。なにかを待ちわびるって、こんなにも素敵な感覚だったんだ……忘れていたな。


    忙しいだろうから、急かしてはいけない。
    そう思いながらも、心のなかでは「早く知りたい」と、うずうずしながら過ごしていた。


    待ちに待った、ゆずさんからの連絡。
    そこには3冊の選書と本のURL、メッセージが記されていた。

    目が開かれる思いがした。

    ゆずさんが1冊目に選んでくれたのは、コミックエッセイだったから。
    普段のわたしなら、まず手に取らないジャンルだ。

    心臓のドキドキが早まっている。
    待って。まだ早いって。自分の心臓にいい含めながら、2冊目、3冊目を目で追っていく。
    ゆずさんの温かいメッセージを読んでいたら、なんだか心がじんわりとしていた。


    noteには人柄があふれでるもの。そのnoteから本を選ぶことは、その人へ思いを馳せることでもありました。

    画像
    ゆずさんから届いた選書と温かいメッセージ


    「本を選んでもらうのなんて何年ぶりだろう……」
    ふと込みあげてくる懐かしさ。そして記憶の糸をたどっていた。

    保育園のとき以来ではないだろうか。
    母に買ってもらった『マッチ売りの少女』を、大事そうに抱えていた子どもが脳裏をかすめていった。


    「その絵本好きなの?」

    人見知りな上に転入してきたばかり。
    保育園でなかなか友達ができなかったわたしは、母に買ってもらった絵本『マッチ売りの少女』をいつも抱えていた。

    大きなストーブの前に立っていたせいで、背中がやけにぽかぽかして……真冬なのに暖かかった。

    — いさな | ebookライター×ストーリー (@isana97_) December 12, 2025


    選んでもらった3冊のなかで、真っ先に読みはじめたのはコミックエッセイだった。


    正直もう文章を読みたくない、文字を追いたくないという日がある。
    でもこのままでは脳が疲れきっていて、オーバーヒートで眠れそうにない。

    選んでもらった本は、そんな夜に心をほぐしてくれる不思議な本だった。
    熊と鮭って……と思いながら油断して読み進めていくと、確実に涙腺がもっていかれるのである。

    構成がまたよかった。
    「好き」という言葉だけじゃ物足りないくらい、大好物の世界観。
    Another Story──いわゆる視点を転換して、違うストーリーを垣間見られるのだ。

    「そうそう、世界ってひとつじゃないんだよね……」と独りごちている。
    ひとつの出来事を一方の面で見るか、また別の目を通して見るかで物事の見方や感情、それらを取り巻く事情は様変わりする。

    悩み多き思春期のころ、そんなふうに考えていた自分がいたことも、
    ふと、よみがえっていた。


    今日はここまで、パタン──。

    短編のショートストーリーを読み終え、本を閉じて眠るたび、じんわりと心が温かくなる。

    まさに、ゆずさんのメッセージにも書いてあったように、疲れた夜にぴったりの本だった。


    本って、自分で選ぶと、どうしても同じ作家や同じジャンルに偏ってしまうもの。

    だからこの年になって、誰かが自分のことを思って本を選んでくれる。
    その体験は想像以上に新鮮で、心躍らされるものだった。

    なにかを変えたいとき。
    新しい世界に、そっと触れたいとき。

    ゆずさんの選書ページから、本の世界を届けてもらう。
    そんな選択肢があるのは、とても心強くて安心感がある。


    ***


    ベッドのなか、一日の終わりに穏やかな気持ちで本のページをめくる。

    その裏側で、ゆずさんが思考を巡らせ、
    誰かのために時間を使い、本を選んでいる。

    もうひとつの世界が、確かに存在していた。

    それを想像できるようになったのも、
    ゆずさんが選んでくれた、この一冊のおかげかもしれない。


    ゆずさんの新しい企画はこちら ▼
    【Bookazine】あなたと本と。/創刊号


    ここまでお読みいただき、ありがとうございました☺️
    よかったら、こちらのエッセイも読んでもらえたら嬉しいです。

    このエッセイ集では、“心がふっと動く瞬間”をストーリー仕立てでお届けしています。
    じんわり心に残る読書時間で🍃お疲れの日にも、優しい深呼吸ができますように。

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