
オチから始まる笑いを実験してみた【ショートショート】
結論から言うと、私は今、我が家の冷蔵庫の「野菜室」に住み着いた妖精と、家賃の交渉をしている。
「では、契約条件についてご説明します」
妖精は小さな眼鏡を直しながら、書類をめくった。
「待って。まず確認したいんだけど」
「はい」
「ここ、私の冷蔵庫だよね?」
「はい。ですので貸主様はあなたです」
「なのに、なんで私が契約条件の説明を受けてるの?」
「トラブル防止のためです」
「もうトラブルなんだよ」
妖精は気にせず、書類の一枚目を指した。
「まず、大根を入れる場合は事前申請をお願いします」
「なんで?」
「長物ですので」
「長物」
「居住区にはみ出します」
「野菜室だからね? 大根を入れる場所だからね?」
「もちろん大根を入れてはいけないとは申し上げておりません。最低でも前日までに申請してください」
「大根入れるのに前日から予定立てたことないよ」
「急な大根にも対応できます」
「急な大根って何」
「緊急申請書があります」
「あるんだ……」
妖精は二枚目をめくった。
「続いて、キャベツについてです」
「キャベツも申請?」
「いえ。固定資産税が発生します」
「なんで?!」
「あれを野菜として扱うには容積が大きすぎます」
「野菜だよ!」
「分類上は存じております」
「じゃあ野菜として扱って!」
「ですが、ほぼ建物です」
「キャベツだよ!」
「一玉につき月額――」
「取るな取るな。私が買ったキャベツに勝手に課税するな」
妖精は少し困った顔をした。
「では、半玉でしたら減免措置を」
「そういう問題じゃない」
「千切りの場合は非課税です」
「制度が細かいな!」
妖精は「ここまではよろしいでしょうか」と確認してきた。
「ひとつもよろしくない」
「では、家賃について」
「ようやく家賃か」
「現在は月額ミニトマト七個ですが、更新時に変動する可能性があります」
「何を基準に?」
「キュウリ相場です」
「なんで?」
「こちらにも経済がありますので」
「どちらに?」
「こちらです」
妖精は野菜室の奥を指した。
暗くて何も見えない。
「キュウリが高騰した場合、家賃も上がります」
「キュウリで払うんじゃないの?」
「ミニトマトです」
「じゃあキュウリ関係ないじゃん」
「市場とはそういうものです」
「急に経済評論家みたいなこと言うな」
妖精は淡々と書類をめくった。
「最後に、退去時の原状回復についてです」
「待ってました。それ大事」
「退去時には、野菜室を入居時より少し汚していただきます」
「逆!」
「逆?」
「原状回復って普通きれいにするの!」
「困ります」
妖精が初めて強い口調になった。
「ピカピカにされては事故物件に見えます」
「妖精界どうなってんの?」
「生活感のない部屋は怖いでしょう?」
「冷蔵庫に生活感を求めたことがない」
「多少の土、葉くずなどを残していただければ」
「掃除させて!」
「契約違反になります」
「私の冷蔵庫なのに?!」
妖精は眼鏡を直した。
「以上が主な条件となります。ご質問は?」
「あります」
「どうぞ」
「そもそも、あなたはいつから住んでるの?」
妖精は書類を確認した。
「三年前です」
「長いな!」
「なお、過去三年分のキャベツ固定資産税が未納となっております」
「私が払うの?!」
「延滞金につきましては、キュウリ相場に連動します」
「だからキュウリは何なんだよ!」
妖精は少し黙って、書類を一枚めくった。
「では最後に、契約更新の意思を確認します」
「更新しない! 出ていって!」
「承知しました」
妖精は淡々と書類にチェックを入れた。
「では、貸主様都合による退去となりますので、立ち退き料としてキャベツ三玉を請求いたします」
「だからなんで私が払うんだよ!」
「一括で難しい場合は、千切りでも結構です」
「分割払いみたいに言うな!」

いかがでしたでしょうか?
なぜ私が急にこのショートショートを作成したのか。
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さて、今日の記事はここまでです。
また次回もお楽しみに♪
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