
公務員の2大派閥、拙速派と巧遅派の終わらない闘争。そして日本人の幼稚さ。
仕事は60点でも速いほうがいい。
仕事は遅くても100点じゃないとダメだ。
ざっくり言うと、公務員の中にはこの2つの流派がある。
両者の間の溝は埋まらない。
この対立から生じる不和は計り知れない。
しかも、
「この仕事は拙速に、あの仕事は巧遅で。」
「いやいや、この仕事は巧遅で、あの仕事は拙速で。」
みたいに人それぞれ個別の業務に対する重みづけが異なる。
そして、正解は無い。
だから、永遠に平行線だ。
「でも、管理職ってものがいるでしょ。上司に判断を仰げばいいでしょ。」
そう思う人もいるかもしれない。
だが、役所の管理職は議会対応に意識が向いていて、部下のマネジメントに目が向かない。
「担当者間で調整して、うまいことやってよ。」と言って終わりだ。
それで「管理職かよ。」と思う。
拙速派と巧遅派のどっちかが折れればまだ良い。
しかし、公務員というのは悪い意味で真面目な人が多い。
「ここで折れるわけにはいかない。」と俄然、意地になる。
拙速派は「でも時間ないだろ。締切は明後日だぞ。」と言う。ごもっともだ。
巧遅派は「じゃあ不正確な数値を入力するのかよ。」と言う。ごもっともだ。
上司は「速く、そして、完璧に。」と言う。
私は「お前が決めないなら黙っとけ。」と思う。
地方公務員の仕事は「ここにある重さ5kgの箱を16時から17時までの間に、ここからあそこまで100個運びなさい。ただし使用可能な公用車に積載できるのは6個まで。」みたいなものが多い。
知識や能力で劇的に効率化するものは少ない。
これはペーパーワークでも同様だ。
拙速派は「でも昨年度は60個で足りたよ。100個も運ぶ必要はない。60個なら間に合う。それより17時までにこの作業を終わらせないといけない。」と言う。
巧遅派は「いや、たとえ17時に間に合わなくても100個運ぶべきだ。」と言う。
互いに相手のことを内心で「あいつは仕事ができない。」と見下し合う。
明らかにどちらかが正しいときもある。
また、明らかに間違っている人の意見がなぜか多数決で尊重されてしまって結果的に失敗に終わることもある。
こんな感じだから、役所は採用試験の際に「人柄重視」と言う。
喧嘩っ早い人なら口論になってしまうからね。
日本人は意見の衝突にアレルギーを持っている。
自分の意見を否定されたら、自分の人格まで否定された気持ちになる人が多い。
日本人は対話や議論ができない。
主語が大きいし、偏見のように聞こえるだろうけど、これに関しては否定し難いと思う。
日本人の対話や議論は、たいてい力で決着がつく。
偉い人や尊敬されている人が「カラスは白」と言えば、みんなが「うん、そういうことにしよう。」と考えて動く。
「この議論を続けても時間の浪費にしかならないし、めんどくさいだろ。」みたいな空気になったら、もう終わり。カラスは白になる。
そして、日本にかけられた呪いである「和の文化」というものがある。
最後は、「なんやかんやあったけど、みんなが調和しました。」という体裁で終わらせないと気が休まらない人が多い。
対立的な緊張関係をニュートラルに受け止められる人が少ない。
なんとかして、みんなが納得した、というストーリーにしたがる。病気だと思う。
さらに、衝突や摩擦自体が嫌いな人も多い。
だから、その場では相手に反論しないが、反感が収まらずに陰口で反撃して溜飲を下げる人が多いのだ。
「あのときはこっちが引くしかなかったけど、あの人が言ってることっておかしいよ!」と。
「馬鹿野郎!後でグチグチ言うならその場で反論しろよ!」と僕は思う。
でもこういう意見を僕がマイルドに言うと、「でもね、ああいう時に反論しちゃうと収拾がつかないじゃん。」と言われてしまう。
そして「争いは何も生まないよ。」などと言われてしまう。
バカが・・・。
じゃあ陰口を言うなよ。きちんと負け犬になれよ。
負けることさえできないのに、戦うこともしない。
陰口のほうが争い方として破壊的だぞ。
どうせ相手に伝わるんだから。
「争いは何も生まないよ。」だと?
じゃあ陰口は何か良いものを生むのか?
でも、これって個人の問題ではなく日本文化という大きな幽霊のせいなんだよ。
義務教育過程においても、人と争わないことを徹底的に刷り込まれる。
そして、対話や議論は「争い」として感受される。
救いが無い。
公務員は、自分の目の前で明らかにバカなことをしている人を見ても、その人を否定せず、一緒にバカなことをする心意気が求められる。
そこに進歩はない。
争いが無いだけだ。
仕事を家に持ち帰るために公文書をリュックに詰め込んでいる職員を見ても、見て見ぬふりするような職員が「成熟した大人」として評価される。
アホか。
そりゃ不祥事や離職は絶えないよ。見て見ぬふりするんだから。
だが、いつまでもこういうことを気にしていたら疲れてしまう。
僕もだんだん染まってきてしまった。
疲れちゃったから。
もし目の前で公金を横領している職員がいたら「そんなことやめろよ」とは思わない。
「俺が見てないところでやれよ!」と思うだろう。
極端な喩えをするとこんな感じ。