
X1Dと5インチドライブ
【X1Dハック】3インチの絶望を5インチで救え!大阪・日本橋デジットから始まった自給自足のPCライフ
■ プロローグ:なぜ「3インチ」を選んでしまったのか
シャープのX1シリーズにおいて、極めて異質な存在感を放っていた「X1D」。
このマシンの最大の特徴であり、同時に最大の弱点だったのが、搭載されていた**「3インチ・コンパクト・フロッピーディスクドライブ」**だ。
5.25インチでも、後に主流となる3.5インチでもない。絶妙に小さい「3インチ」。
当時はメーカー各社に勢いがあり、「新規格を自社グループで立ち上げ、普及させる」という狂気がまかり通っていた時代だ。だが、勢いがあったのは最初だけ。言うまでもなく、3インチ規格はあっという間に廃れていった。
結果として残されたのは、ブランクディスク(生の空メディア)すらまともに手に入らないという絶望的な環境だった。
「メディアが手に入らないなら、手に入るドライブ(5インチ)を外付けで繋げばいいじゃない」
いつものように、僕の自給自足ハックが始まった。
■ 1. 型番を脳内に丸暗記して「大阪・日本橋デジット」へ当時のパソコンの背面には、ドライブ拡張用のディスクI/Fコネクタ(フラットケーブル用など)が用意されていることが多かった。
問題は肝心の「5インチFDD」だ。
新品のドライブなど買おうものなら5万〜10万円は飛んでいく。そんな金はあるはずもない僕が向かったのは、当時大阪・日本橋で愛用していたジャンク屋の聖地**「デジット」**だった。
店内を物色すると、5,000円程度の格安中古5インチドライブを発見。
しかし、ここからが運命の分かれ道だ。
当時の5インチドライブには信号仕様やコントロール規格(2DD/2HDの信号線、回転数、ピンアサインなど)に複数の種類があり、適当なものを買うとただの「5,000円のゴミ」になる。
ネット検索など存在しない時代。頼れるのは己の記憶力だけだ。
あらかじめ雑誌や資料で「X1DのI/Fで動くドライブのメーカーと型番」を頭の中に叩き込んでおき、ジャンク屋の棚からピンポイントで対象のドライブを引き抜く。
選んだのは、信頼と実績のTEAC(ティアック)製ドライブだった。---
■ 2. フラットケーブル圧着と自作電源ユニット
無事にTEACのドライブとテスト用の安物ノーブランド5インチディスクを確保し、帰宅。ここから工作の時間だ。
オリジナル拡張ケーブルの作成
本体背面の拡張コネクタに合わせ、フラットケーブルにコネクタを圧着する。ドライブ側コネクタの加工
ドライブ側はカードエッジコネクタなので、ピッチの合うコネクタを手に入れてケーブルに圧着。電源周りの構築
ドライブを動かすための電源(+12V, +5V、念のため-12V環境も考慮)を確保するため、ジャンクの電源ユニットから配線を加工して取り出す。
オシロスコープも動作保証もない。
「規格上のロジックとピンアサインさえ合っていれば、絶対に動くはずだ」という自分の知識だけを信じて、手配線のケーブルを接続した。
■ 3. 緊張のフォーマット:緑のランプが点滅した瞬間
すべての配線を終え、自作外付け5インチドライブにノーブランドのディスクを叩き込む。
電源ON。緊張の瞬間だ。
コマンドを打ち込み、キーを叩く。
『フォーマット開始』
「ガガガ……ガガガ……」
ドライブのアクセスランプが点灯し、ヘッドがステップモーターの音を響かせてディスクを刻んでいく。
フォーマット完了。
セーブ、成功。
ロード、成功。
「勝った……!!!!」
入手困難な3インチディスクの恐怖から解放され、安価で大量に手に入る5インチディスクの世界へX1Dが接続された瞬間だった。
■ エピローグ:スペックを丸暗記して街へ出た時代後年、ネットで型番を調べれば一瞬で互換性がわかり、Amazonでポチれば翌日届く時代になった。
だが、「ドライブの規格とピンアサインを脳内に叩き込み、日本橋のジャンク屋の怪しい棚からお宝を掘り当てて、圧着工具とハンダごてで動かす」というあの体験。
自作PCやハードウェアハックの原点は、間違いなくあの大阪・デジットの怪しい熱気の中にあったと思う。