
花金の終電10分前
寒さが勝つ瞬間があるほど涼しくなってくると、
仕事帰りに、気の合う仲間とちょっと暖簾をくぐりたくなる。
そして、
「熱燗!」
「人肌で!」
「おちょこ二つ!」
んぅ~ん。粋だね!
注文の台詞が躍っているのが、自分でも分かる。
「まぁまぁまぁまぁ!」
「おっ~と。」
「ツッ~ッ。」
「あっぁ~。」
「大将~っ!」
「なんか、お造り盛り合わせっ!」
口内にひろがる円やかな甘み、
喉から胃袋へ「ぽっぽっ~っ」と火照る感じ、
鼻から「ツン」と抜ける揮発性物質。
肴の旨味が何倍にもなって華開く。
目元が熱く赤く灯り出すと、話しにも花が咲く。
「じゃんじゃん、いきましょ!」
「もう一杯!」
「おっ~と。」
「次からは、手酌で。」
酒が進む、食も進む、酔いが回る、呂律が痺れて、より饒舌になる。
「シ・ュウ・デ・ン・ワ…」
「あるじゃん!あるじゃん!」
「23:55」
「駅まで10分で、どうですか?」
「だね~!」
「オッケー、毛だらけ、猫灰だらけっ~!」
「回ってきましたね~!」
「ワッハッハッハッ~と…」
「お久しぶりの花金ですねぇ~。」
「二人のため~♪ 世界はあるの~♪」
「いいっすねぇ~。」
「今度はカラオケも梯子しましょうよ!」
「BlueMoonっていう、洒落たBARで〆るってどうですか?」
「いいねぇ!いいねぇ!」
「今夜は初っ端から飛ばしちゃったからねぇ!」
「次回だねぇ!」
「次回って、来週末?」
「いいねぇ!いいねぇ!」
「また飲みに行きましょう!」
「母ちゃん、怒らないかな?」
「大丈夫!大丈夫!」
「ここの寿司が美味いから…」
「大将に、ニギニギしてもらってっ!」
「大将っ~!」
「ニギニギ、二人前っ~とぅ~。」
二人は酔っていても、終電10分前にはトレイも勘定も済ませて店を出た。
幸福了
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