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芋出し画像
Photo byshuheisasaoka

はじたりのブラりニヌ

    「たたブラりニヌを焌いおもらうこずはできたすか
    ぀だけでいいんですけど。」

    11月䞊旬、倧奜きなパティシ゚ヌルに頌みにいった。若い頃、フランスで修行をしたずいう圌女が䜜るスむヌツはどれも絶品だ。本圓は季節ごずにラむンアップを倉える生ケヌキを食べおもらいたかったけれど事務所は遠方。そもそも打ち合わせの合間に食べるには倧掛かりになっおしたう。

    今回のおみやげは焌き菓子にしよう、ずなれば圌女のチョコブラりニヌ以倖は考えられなかった。クルミずレヌズンがたっぷり入ったずっしりずした生地にカシスずピスタチオの゜ヌスが栌子状にかかったもの。ダヌクブラりンにピンクずグリヌン、芋た目もお排萜で、口にする前から期埅床はぐんずアップ。袋から取り出すず、倧抵の人は「わぁ」ずか「うヌん」ずか思わず声を䞊げおしたうほどに玠敵なスむヌツ。

    あれからそろそろ幎になる。やっずだ。やっずこの時がやっおきた。緊急事態宣蚀盎埌から䌚えなくなった仲間たちず今床こそ本圓に䌚えるんだ。


    リモヌトワヌクになっおから、いろいろなこずがあった。長幎働き、結婚退瀟埌も垭を借りおいた䌚瀟は、請け負っおいた流通広告の仕事を敎理するため別䌚瀟ず組むこずになった。それに䌎い移転。時間ず費甚を考えれば、30分以䞊遠くなった新事務所に垭を眮くメリットはない。瀟員ならずもかく、母ずなり、フリヌランスずなった身で、やりがいや心地よい時間欲しさに通えるほど私のお財垃に䜙裕はなく、䞖の䞭が萜ち着いおも今埌は家での䜜業が䞻䜓になるのだろうずがんやり考えおいた。

    埌茩が人、自宅に近い職堎を求めお退瀟した。同僚の人は䌚瀟の倉革に賛同できず独立を決めた。残った仲間たちは皆やさしかったけれど、私のスキルを芋抜いお適切な案件を回しおくれおいた同僚が䌚瀟を離れたこずで、請け負う内容はすっかり倉わっおしたった。メむンずなるのは他の人でもできる䜜業ばかり。そんな状況を知り、代わりに怒っおくれる人もいたけれど私は玍埗しおいた。仲間が苊心しお仕事を぀ないでくれおいるのを知っおいたし、ブランクがある䞭、しかも遠方に䜏む身で働かせおもらうずいうのはきっずそういうこずなのだ。消せないさみしさは心の奥にしたいこんで、オペレヌション䜜業でも、雑務でも、リモヌトでできるこずはなんでもやった。

    でも、月日ずいうのは本圓にすごいのだ。気持ちを沈めながら積み重ねおきた時間は、い぀の間にか私を別の堎所たで運んでくれた。今の私は、独立した同僚がディレクションをする案件の䞻芁メンバヌになっおいる。打ち合わせに同行し、デザむンのアむディアを出し、キャッチコピヌを曞く。䌁画曞たがいのものも䜜らせおもらえるようになった。そしお、転職した埌茩ずもたた繋がり、新しい仕事をもらえるこずも先日決たった。20幎も前に味わっおいたモノづくりの熱い気持ちをもう䞀床取り戻す日が来るなんお数ヶ月前には思いもよらなかったこず。どんな時も、どんな圢でも、前に進むこずをあきらめずにいおよかったず思う。


    感染症が広がり収入が激枛したこずは、将来に぀いお熟考する思いがけない機䌚ずなった。ひずしきり途方に暮れたあず、たずは目の前の仕事をこなし、空いた時間で今しかできないこずをやろうず芁玄筆蚘の勉匷を始めた。瀟䌚犏祉の担い手ずなる芁玄筆蚘者には資栌が必芁で、玄幎の孊びを経お間もなく統䞀詊隓を迎える。難関だそうだ。蚀い蚳をするのが恥ずかしくお普段は黙っおいるけれど、正盎、勉匷が足りおいないず思う。仕事の繁盛期ず重なり、寝る時間を削っおも他の受講生には远い぀けないのだ。他人ず比べおも意味がないのはわかっおいるけれど、気付けばい぀も焊っおいる。でも、結果がどうであれ、身に぀けた知識は無駄にならないず信じお今はやるしかない。泣いおも笑っおもヶ月埌には結果が出おいるのだから。

    進む先に明るい光が芋えなかったずき、䞋を向いた私の目に映ったのは自分の足元だった。走れるパンプスずいうネヌミングを信じ、枛速もせずに進み続けた過去の自分。手にした充実感ず䞀緒に残ったのはヒヌルの傷ず、かかずに぀いた靎擊れの跡だった。䜕を手にしお䜕を手攟すかずいう䟡倀芳は人それぞれ。でも䞍自然なものは続かないこずになっおいるようだ。私の堎合は壊れおよかったのだず思う。

    家にいるようになり、忙しいからず手を抜いおいた家事ず向き合った。どうやったっお完璧にはできないのだからず、少しだけがんばるこずを目暙にしたら料理の楜しさを思い出した。取り蟌んだ掗濯物はできるだけ早いうちにクロヌれットに片付け、シャツには䞁寧にアむロンをかけた。息子ず映画を芳お、朝読曞甚の本を遞び、回転寿叞に行った。倩気のいい朝は家の呚りを走っお、自分のための朝食を甚意した。お颚呂䞊がりのスキンケアに時間を割き、寝る前にいく぀かのストレッチを詊した。小さなこずだけれど、今たでやらなかったこずを習慣にしたら私の䞭の䜕かが明らかに倉わった。  

    目の前の仕事ず、日々の暮らしでできるこずを少し。そうやっお過ごしおいたら倧きなチャンスが蚪れお、突然 景色が倧きく動いた。そういえば占いで読んだこずがある。遠くの運を぀かみたいならたずは手の届くずころから。本圓だ、意図せずやっおいたけれど、こういうこずなのかもしれない。

    ◇


    特別に焌いおもらったブラりニヌは倧奜評だった。やっぱりね、これは間違いないんだから。みんなの笑顔を芋ながら心で぀ぶやく。䌚えた時はこれっお、もうずっず前から決めおいたんだよ。


    幎ほど前、みんなでスむヌツを食べたあの日ずは堎所も状況も違う。人人が抱えおいる仕事も、私自身の仕事環境も倧きく倉わった。それでも、笑顔ず心の距離は昔のたた。倚少ボリュヌミヌになった男性もいたけれど、それは内緒にしおおいた。

    やみくもに蒔いた皮から芜が出たのは自分で氎を䞎え続けたからかもしれない。でも、離れた堎所から光を圓おおくれる人たちがいなければ䞊に向かっお䌞びるこずはできなかった。

    もらった光はこれから少しず぀跳ね返しおいこう。䞀緒に胞を匵っお進むために。倧䞈倫、疲れたらずっおおきのスむヌツをみんなで食べればいい。テヌブルを囲んで、マスクを倖しお、「わぁ」ずか「うヌん」ずか蚀いながら。


    倉わっおいく景色を、今床はみんなで䞀緒に芋よう。




     
     

    suzuco

     
     
    曞くこずが奜きです。人生の埌半、自分ず向き合う時間を倧切にしたくお始めたした。 / #わたしの垰りたい堎所「日々の句読点。」賞2025/ #あの倱敗があったから 入賞2021

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