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琉球の颚に蚗した囁き

    第二話䞇里の波涛はずうず、届かない颚🌊

    あの日、那芇の枯から進貢船が旅立っおから二幎の歳月が流れた。

    季節が巡るたび、東シナ海は時に穏やかな碧を芋せ、

    時に牙を剥く。

    二十歳だった真鶎たなづるは二十二歳になり、

    二十䞉歳だった暜金たるがねは二十五歳になっおいた。

    匕き裂かれた二人の間には、

    ただ気の遠くなるような広倧な海ず、

    過酷な珟実だけが暪たわっおいた。

    荒れ狂う倧颚ず、揺るがぬ誓い

    「波が来るぞ ロヌプを離すな 掎たっおいろ」

    怒号、雚の叩き぀ける音、粟床を増す波の咆哮。

    䞭囜明からの垰路、進貢船は狂暎な

    「倧颚うふかじ※台颚」に捕たっおいた。

    山のようにそびえ立぀挆黒のうねりが、

    巚倧な船䜓を朚の葉のように匄ぶ。

    船䜓が「ギギギ  」ずきしみ、

    今にも空䞭分解しそうな恐ろしい音が響き枡る。

    「暜金、垆を䞋げろ このたたじゃマストがぞし折られお、

    船ごずひっくり返るぞ」

    「うおおおおおおッ」

    ずぶ濡れになりながら叫んだのは、二十五歳になった暜金だった。

    二幎の歳月は、圌をただの「若者」から

    「本物の海の男」ぞず倉えおいた。

    匷い朮颚ずギラギラずした倪陜に晒され続けた肌は、

    焊げ茶色に硬く匕き締たり、

    幟床も倪い麻ロヌプを限界たで匕き絞った肩や背䞭には、

    頑匷な筋肉が鎧のように匵り付いおいる。

    激しい揺れ。甲板を掗う冷たい海氎が、暜金の足をすくい、

    身䜓を吹き飛ばそうずする。

    その衝撃で、藍染めの短衣の胞元から、

    䜕かがこがれ萜ちそうになった。

    「あ――っ」

    芖線の先に、癜く擊り切れ、すでに緑の色を倱っお

    灰色に也いたアダン葉の手守りお守りがあった。

    真鶎が出航前倜に「ただの厄陀け」ずしお

    ぶっきらがうに抌し付けおきた、あのお守りだ。

    「死んでも、倱くさねえ  」

    暜金は猛る荒波に手を䌞ばし、指先を泥だらけにしながら、

    間䞀髪でお守りを掎み取った。

    それを濡れた肌着の奥、心臓の最も近い堎所ぞギュッず抌し蟌む。

    足銖で海氎に濡れるアダンのアンクレットが、

    かすかに光ったような気がした。

    真鶎、俺はただ死ねない  

    嵐の蜟音のなか、暜金はボロボロのお守りを噛み締め、

    荒れ狂う海を睚み぀けた。

    お前に、あの䞭囜の郜のたばゆい景色を芋せるたでは。

    あの青いガラスの茝きを、お前の髪に食るたでは  

    絶察に生きお垰る

    冷たい雚ず、垂堎の孀独

    同じ頃、那芇の町も激しい雚に煙っおいた。

    商人宿の䞀宀。薄暗い油灯の䞋で、

    二十二歳になった真鶎は䞀人、朚補のそろばんを匟いおいた。

    パチ、パチ、ず也いた音が静かな郚屋に響く。

    真鶎は自身の機転ず努力で、

    今や小さな店を持぀たでに成長しおいた。

    しかし、その衚情はか぀おないほどに沈んでいた。

    「たた、本土からの仕入れ倀が䞊がっおる  。

    これじゃあ、たずもな商売にならない  」

    圓時の琉球は「䞉山時代」。

    北山・䞭山・南山の勢力争いが激化し、

    陞の亀易ルヌトは乱れに乱れおいた。

    さらに、新参者で若い女である真鶎の台頭をよく思わない、

    垂堎を牛耳る叀参の倧商人たちが、

    組織的に圌女の店ぞの商品の流通を差し止めるずいう

    嫌がらせを始めおいた。

    『おいおい、真鶎。女だおらに意地を匵るねぇ』

    昌間、垂堎の裏路地で倧商人に蚀われた蚀葉が、

    冷たい泥氎のように脳裏をよぎる。

    『お前ももう二十二だろ

    い぀垰るかもわからん男を埅ち続けお、

    店も朰しかけお、銬鹿なこずだ。

    商売なんかさっさず蟞めお、うちの若い衆の嫁にでもなれば、

    飢え死にしない皋床には食わせおやるぜ』

    悔しさに唇を噛み締め、爪が手の平に食い蟌む。

    呚囲の同䞖代の友人たちはみんな結婚し、

    すでに幌い我が子を抱いお幞せそうに暮らしおいた。

    「い぀たで、生死もわからない幌銎染を埅っおいるんだ」

    「あきらめお珟実を芋ろ」

    ずいう呚囲の冷ややかな芖線や、芪切を装った説埗。

    それが日々、真鶎の心を静かに削り取っおいく。

    「バカにしないでよ  。私は自分の力で立っおみせるっお、

    あの人に玄束したんだから」

    真鶎は窓を開け、雚の吹き蟌む倜空を芋䞊げた。

    その手は、毎朝敎える台所の「火之神ヒヌカン」

    の灰のように冷たくなっおいた。

    「暜金  あんた、今どこにいるの

    本圓に、生きおいるの  」

    朮颚に蚗した琉歌、䞍穏な圱

    嵐が去った翌日の倕暮れ。

    空は燃えるような茜色ず、䞍気味な玫色が混ざり合う、

    異様なグラデヌションを描いおいた。

    真鶎は仕入れの合間に、か぀お暜金ず別れたあの海岞の

    岩堎に立っおいた。

    寄せおは返す癜い波を芋぀めながら、

    圌女は切ない胞の内を抑えきれず、

    東シナ海の颚に向かっお静かに歌を口ずさんだ。

    それは、胞に秘めた愛を颚に蚗す「琉歌りゅうか」だった。

    「枡る船人の海を枡っおいくあの人の」

    「行方しらねどもどこにいるかは分からないけれど」

    「せめお吹く颚のせめおこの吹く颚が」

    「䌝蚀こずづおよしも私の想いを届けおおくれ」

    颚が真鶎の黒髪を揺らし、たずめ髪からこがれた埌れ毛が

    頬に匵り付く。

    そのずき、圌女の埌ろから垂堎の仲間が神劙な面持ちで

    近づいおきた。

    「真鶎  やっぱりここにいたのか」

    「  なによ。仕入れの䌝祚なら、さっき党郚確認したわよ」

    わざず普段通りの匷い口調で振り返る真鶎。

    だが、仲間の顔を芋お、胞に冷たい䞍穏な颚が吹き抜けた。

    「違うんだ。  さっき、枯に入っおきた商船の連䞭から聞いた。

    暜金の乗った進貢船が  䞭囜を出たあず、東シナ海で消息を絶ったらしい。

    激しい嵐倧颚に巻き蟌たれお、圱も圢も芋えなくなったっお  」

    真鶎の芖界が、䞀瞬で真っ暗になった。

    耳の奥で、ドクン、ず心臓が跳ね䞊がる。

    「  嘘。嘘よ」

    「真鶎、もう二幎だ。珟実を芋なきゃいけない。

    い぀たでも䞀人で意地を匵っおいたら、

    垂堎での居堎所も本圓になくなっおしたうぞ」

    「うるさいッ」

    真鶎は叫んでいた。 目の前の仲間の胞元を突き攟し、

    キッず睚み぀ける。その倧きな瞳には、激しい涙がにじんでいた。

    「あの男が、そんな簡単に死ぬわけないでしょ

    あの䞍噚甚で、頑䞈な、倧銬鹿者が  

    誰がなんず蚀おうず、私は絶察に信じない。

    あい぀は  あい぀は絶察に垰っおくる」

    螵を返し、涙を振り払うように走り去る真鶎。

    だが、䞀人になった商人宿の垃団の䞭で、

    圌女は膝を抱え、声を殺しお泣き続けた。

    信じたい。けれど、抌し寄せる「死」ずいう珟実の重みが、

    圌女の小さな肩に重くのしかかっおいた。

    離島の枯、呜がけの䌝蚀

    同じ頃、那芇から遠く離れた南の離島八重山や宮叀のあたり。

    そこには、倧颚によっお満身創痍ずなり、

    蟛うじお難砎を免れた進貢船の姿があった。

    船䜓は激しく損壊し、マストは折れ、

    船䜓に空いた穎を塞ぐ修理のために、

    圌らはこの島での長期足止めを䜙儀なくされおいた。

    枯の片隅で、暜金は那芇ぞず向かう臚時の圹人船を芋぀け、

    その船長に必死にすがり぀いおいた。

    「頌みたす これを  この包みず手玙を、

    那芇の垂堎にいる『真鶎』ずいう女に届けおやっおください

    お願いしたす」

    「ふん、䞀介の氎倫の個人的な荷物など、

    圹人の船に茉せられるか。ただでさえ荷が重いのだ」

    圹人は冷たくあしらい、タラップを䞊がろうずする。

    暜金は躊躇うこずなく、その堎に膝を぀き、

    泥だらけの地面に額を擊り付けた。

    「お願いしたす 俺たちの船は修理にあず半幎  いや、

    䞀幎はかかるかもしれない。

    圌女は  那芇で埅぀あい぀は、俺が死んだず思っおいる

    はずなんです これだけは、どうしおも届けおやりたい  

    俺の呜はどうなっおもいい、これだけは  」

    倧柄な暜金が、プラむドも捚おお必死に懇願する姿に、

    圹人は足を止めた。

    暜金の手には、朮颚で汚れた垃包みが握られおいた。

    その包みの隙間から、倕日に照らされお䞀瞬、

    息を呑むほどに矎しい青い光がこがれ出た。

    それは、明の郜で暜金が呜がけで手に入れた、

    透き通るような「青いガラスの簪かんざし」だった。

    「  ふん。そこたで蚀うなら、気が向けば届けおやる。

    期埅はするな」

    圹人は面倒くさそうに包みをひったくるず、

    船の䞭ぞず消えおいった。

    動き出す圹人船を芋送りながら、暜金は胞に手を圓おた。

    傷だらけの手、塩で真っ癜になった足銖のアンクレット。

    「真鶎、埅っおおくれ。俺は生きおいる。

    お前ずの玄束を果たすたで、絶察に倒れはしない」

    海を挟んだ二人の想いは、嵐を越え、

    届かないはずの颚に乗っお、ゆっくりず動き出そうずしおいた。

    最埌たでお読みいただきありがずうございたす💗

     
     
    創䜜物語を曞いおいたす。心の隙間を埋めるために、曞いおいたす。よろしくお願いしたす。

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