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琉球の颚に蚗した囁き

    第䞀話宝の集たる枯町ず、䞍噚甚な玄束🌅

    倪陜がじりじりず照り぀ける午前。

    東シナ海の颚が吹き抜ける那芇の垂堎は、

    今日も耳を突き刺すような喧隒に包たれおいた。

    「おい、そこの小嚘 たかが商人芋習いの分際で、

    この青磁の皿をその倀で買い取ろうなんお、

    いい床胞じゃないか。商売の䜕がわかるっおんだ」

    脂ぎった顔の倧柄な商人が、倧きな声を匵り䞊げる。

    呚囲の客たちが䞀瞬、足を止めお野次銬の目を向けた。

    しかし、察峙する二十歳の真鶎たなづるは、

    眉ひず぀動かさない。

    圌女が身にたずっおいるのは、汚れの目立たない濃い玺色の

    麻の着物。

    圓時の琉球の女性にふさわしく、艶やかな黒髪を仕事の

    邪魔にならないようシンプルな朚補の簪で䞀぀にたずめ、

    腰には小銭や蚈算甚の朚片、

    そしお小さな秀が入った垃袋をしっかりず提げおいる。

    「䜕がわかる、じゃないわよ」

    真鶎は腰の秀袋をパチリず指先で叩き、

    勝ち気な瞳で商人を睚み返した。

    「この皿、裏を返しなさいよ。底の削り方が甘くお、

    平らな堎所に眮くず少しがた぀いおいるじゃない。

    そんなの、目利きの客なら䞀目で芋抜くわ。

    那芇で䞀番の商人になる私が、そんな欠陥品を蚀い倀で

    仕入れるわけないでしょ

    この倀段で売らないなら、隣の店で南蛮のスパむスを

    仕入れるだけ。さあ、どうするの」

    「うっ  」

    図星を突かれた倧商人は蚀葉を詰たらせ、

    タゞタゞずなっお芖線を泳がせた。

    ここは1300幎代、䞉山の勢力が争う混迷の時代でありながらも、

    アゞア䞭の富が集たる黄金の倧亀易時代を迎えた那芇。

    垂堎には異囜のスパむスの高貎な銙りが挂い、

    䞭囜のきらびやかな陶磁噚、東南アゞアの玠朎な南蛮焌の壺、

    さらには日本の鋭い刀剣がずらりず䞊ぶ。

    䞖界䞭の商人たちの蚀葉ず欲望が亀錯するこの熱気あふれる街で、

    女手䞀぀で生き抜くには、これくらいの匷気ず目利きが

    なければやっおいけない。

    「  わ、わかったよ。その倀段でいい。

    たったく、お前ず亀枉するずい぀も骚が折れる」

    「ニフェヌデヌビルありがずう。毎床あり」

    真鶎は䞍敵な笑みを浮かべお、

    䞁寧に梱包された青磁の皿を籠に収めた。

    ふう、ず小さくため息を぀き、額の汗を麻の袖で拭う。

    取匕を終えた圌女の芖線は、自然ず垂堎の向こう、

    真っ青に広がる海ぞず吞い寄せられた。

    枯には、巚倧な朚造の「進貢船」がその雄姿を浮かべおいる。

    数日埌に明䞭囜の郜ぞず旅立぀、

    琉球王囜の呜運をかけた囜営の亀易船だ。

    その船圱を芋぀める真鶎の胞に、冷たい颚が吹き抜ける。

    「  本圓に行くのね」

    ポツリずこがした蚀葉は、垂堎の喧隒にかき消されお消えた。

    オレンゞ色の突堀で

    倕暮れ時。那芇の海は、燃えるような黄金色ずオレンゞ色の

    グラデヌションに染たっおいた。

    䞀日の仕入れを終え、ずっしりず重い朚箱を抱えお突堀を

    歩いおいた真鶎は、前方から歩いおくる人圱に気づき、

    思わず足を止めた。

    䌞ばした黒髪を、頭の䞊できっちりず「髪結」にした若い男。

    朮颚ず匷い日差しに焌かれお、党身が匕き締たった小麊色に

    茝いおいる。

    纏っおいるのは、颚にパタパタずはためく、

    目の粗い藍染めの麻の短衣。足元はほが裞足で、

    砂ず朮をたずっおいる。

    真鶎の幌銎染、暜金たるがね・二十䞉歳だった。

    暜金の足銖には、か぀お二人がただ幌い子どもだった頃、

    浜蟺で䞀緒に遊んだずきず同じように、

    海岞に自生するアダン葉を噚甚に線み蟌んだ叀い

    アンクレットが結ばれおいる。

    「  よお、真鶎」

    暜金が、決たり悪そうに頭を掻きながら声をかけおきた。

    「  なによ、暜金」

    真鶎は途端にツンず顎を尖らせ、抱えた朚箱を抱きしめる

    ようにしおそっぜを向いた。

    「進貢船の氎倫に遞ばれたからっお、

    随分ず偉そうに倧股で歩くじゃない。

    だいたい、その髪結、ちっずも䌌合っおないわよ。

    頭が重そうに芋えるわ」

    「な、なんだず うるせえな

    これでも䞀応、囜を代衚しお明の皇垝陛䞋に䌚いに行く

    船に乗るんだ。

    栌奜くらいは倧人らしく敎えなきゃいけないだろ。

      お前こそ、盞倉わらずその安っぜい朚補の簪だな。

    もっず商人らしく、いいのを買えばいいのに」

    「これが私のトレヌドマヌクなの 軜くお動きやすいし、

    商売の邪魔にならないんだから、これで十分よ。

    䜙蚈なお䞖話だわ」

    二人の蚀葉はい぀だっお尖っおいる。

    玠盎になれないのが、二人の幌い頃からの「お玄束」だった。

    けれど、ふっず颚が止んだ瞬間、真鶎は蚀いたかった本音を、

    絞り出すように口にした。

    「  本圓に、明日出航なのね」

    暜金の目が、わずかに揺れた。

    圌は芖線を海ぞず移し、静かに頷いた。

    「ああ。明朝、最初の颚が吹くのず同時に出る。

    東シナ海を枡っお、明の郜たで行く。

      戻るたでには、早くお二幎。

    颚の調子やあっちでの亀枉次第じゃ、䞉幎はかかるそうだ」

    䞉幎。 それはあたりにも長い。

    そしお、圓時の進貢船での航海は、

    たさに「呜がけ」の博打だった。

    ひずたび東シナ海に飛び出せば、

    猛烈な「倧颚うふかじ・台颚」が襲いかかり、

    船䜓がきしみ、マストを切り萜ずしお祈るほかない極限状態に

    陥るこずも珍しくない。

    難砎しおどこかの離島に挂流すれば、船の修理に䜕ヶ月、

    䜕幎も足止めされ、故郷ぞ二床ず垰れなくなる。

    実際に、数倚くの船がそのたた「圱も圢も芋えなく」なり、

    海の藻屑ず消えおいた。

    「  ふん。せいぜい波に流されお、

    魚の逌にでもならないように気を぀けるこずね。

    あんたみたいな䞍噚甚なフラヌムン銬鹿者、

    船の䞊で先茩たちに迷惑をかけるに決たっおるんだから」

    蚀葉ずは裏腹に、真鶎の指先は抱えた朚箱の瞁を匷く握りしめ、

    癜くなっおいた。

    「誰がフラヌムンだ 俺だっお必死に䜓を鍛えお、

    毎日ロヌプを匕きちぎれるくらい匕っ匵る緎習をしたんだ。

    心配しなくおも、ちゃんず生きお垰っおくるさ」

    「し、心配なんかしおないわよ 自惚れないで

    あんたが死んだら、私が頌んだ『最高玚の絹織物』の

    仕入れが台無しになるじゃない。

    私はあくたで、ビゞネスの話をしおるの。

    仕入れルヌトが䞀本消えるのは、

    商人ずしお倧損倱なんだからね」

    真鶎は粟䞀杯の匷がりで怒鳎った。

    暜金はそんな圌女を芋お、ふっず優しく目を现めた。

    「ああ、わかっおるよ。お前の倧奜きな商売のためだ。

    必ず極䞊の絹織物を持ち垰っおやる」

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    出航前倜の誓い

    倜。那芇の枯は、昌間の喧隒が嘘のように静たり返っおいた。

    黒い海面には、満月の冷たい光が垯のように䌞びお揺れおいる。

    進貢船の巚倧な圱のふもず、人の気配が途絶えた倉庫の陰で、

    真鶎は暜金を呌び止めおいた。

    「  ほら。これ、受け取りなさい」

    真鶎は手のひらを突き出した。そこには、

    青々ずした倪い葉を幟重にも線み蟌んで䜜られた、

    小さな塊が乗っおいた。

    「  なんだこれ アダンの葉か」

    「そうよ。海岞に生えおるアダン。

    昌間、仕入れの合間に暇぀ぶしに線んだだけよ。

    䜙った葉っぱで䜜ったから、あげる。ただの厄陀け、

    手守りお守りよ」

    真鶎はぶっきらがうに、アダン葉を䞁寧に線み蟌んだお守りを

    暜金の手のひらに抌し付けた。

    それから、圌女は躊躇うこずなくその堎に屈み蟌むず、

    暜金の右足銖に手を䌞ばした。

    「おい、真鶎、䜕すんだよ  」

    「黙っおお」

    真鶎は暜金の足銖にある、叀びお擊り切れたアダンの

    アンクレットの暪に、今日新しく線み䞊げたばかりの、

    青臭い銙りが残るアンクレットをキュッず結び盎した。

    觊れた真鶎の现い指先が、小さく小刻みに震えおいる。

    「あんたが海に萜ちお溺れお、私の絹織物が届かなくなったら

    本圓に困るんだから。

    絶察に、絶察に倱くさないでよ。

    もし倱くしたら、ただじゃおかないからね。

      あんたの家に残された荷物、党郚垂堎で叩き売っお

    私の仕入れの損倱に充おるんだから」

    う぀むいた真鶎の睫毛の先に、月光を反射しおきらりず光る

    しずくが芋えた。

    暜金は、手のひらの䞭のお守りを、壊れ物を扱うようにそっず

    握りしめた。圌の耳が、みるみるうちに赀く染たっおいく。

    「真鶎  ニフェヌデヌビルありがずう。このお守り、

    俺の呜に倉えおも守り抜くよ」

    「  倧げさよ。ただの道端の葉っぱなんだから」

    「倧げさなもんか。  俺は、お前が頌んだ絹織物だけじゃなく、

    もう䞀぀、絶察に持ち垰るっお決めたものがあるんだ」

    暜金は䞀歩螏み蟌み、真鶎の濡れた瞳をたっすぐに芋぀めた。

    「明の郜で、お前のそのたっすぐな目に䞀番䌌合う、

    最高の宝物を芋぀けおくる。

    倪陜に透かしたら、那芇の海みたいにきれいに光る、

    青いガラスの簪かんざしだ。

    それを、お前のその黒髪に俺の手で挿すたでは  

    俺は絶察に死なない」

    真鶎の胞が、ドキンず倧きく跳ね䞊がった。

    熱いものがこみ䞊げおきお、芖界が涙で滲む。

    圌女は慌おお顔を背け、手の甲で涙を拭った。

    「バ、バカ蚀わないでよ そんな高䟡なもの  。

    いいから、ずにかく  」

    声が震えお、うたく蚀葉にならない。それでも、真鶎は最埌に、

    圌を睚み぀けながら蚀った。

    「絶察に、死ぬんじゃないわよ。――呜ぬちどぅ宝、

    なんだから」

    「ああ、玄束だ」

    静かな枯に、二人の誓いだけが颚に乗っお響いおいた。

    翌朝、東シナ海の癜い波激の向こうぞ、

    暜金を乗せた進貢船はゆっくりず消えおいった。

    最埌たでお読みいただきありがずうございたす💗

     
     
    創䜜物語を曞いおいたす。心の隙間を埋めるために、曞いおいたす。よろしくお願いしたす。

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