
拝啓文芸部✉ 残されたメモ
祖母が亡くなった。
遺品を整理していると、仏壇の引き出しから小さな小銭入れが出てきた。
中には四十五円。
それから、小さな布切れ。
何だろうと思って開いてみると、古びた紙が一枚、綺麗に折り畳まれていた。
紙はもう、触れるのが怖いくらい薄くなっている。
そっと広げた。
鉛筆で書かれた、ぐにゃぐにゃの文字。
字を覚えたばかりの子どもが、一生懸命書いたような――
おばあちゃん
その一言だけだった。
「……お母さん、まだ持ってたのね」
隣で母が、寂しそうに笑った。
「これ、あんたが小さい頃に書いたのよ」
覚えていなかった。
でも祖母は、ずっと覚えていたらしい。
もう一度、紙を丁寧に折る。
手紙を書こうと思った。
楽しかったこと。
悲しかったこと。
泣きたくなったこと。
好きな人ができたこと。
本当は、もっと話したかったこと。
それから――
あの頃より、ずっと上手に字を書けるようになったこと。
新しい便箋を一枚取り出す。
今度は、たった一言では足りそうにない。
ペンを持って、最初の一行を書く。
拝啓 おばあちゃん
寂しくなりました。