
時間をかける少女 アマノ文筆クラブ
『時をかける少女』を読んだ少女だった。
時をかけられるわけじゃない。
未来人に出会ったこともない。
学校へ行って、友達と笑って、家に帰る。
毎日は、驚くほど普通だった。
それでも私は時々思った。
明日、突然時間を飛び越えられたら。
未来から誰かが現れたら。
私にしかできないことが見つかったら。
きっと、何かが変わるのに。
けれど何も起きないまま、私は大人になった。
電車に乗って仕事へ行き、買い物をして、家に帰る。
ある日、ふと思い出した。
あの頃の私は、時をかけたかったんじゃない。
特別な少女になりたかったのだ。
そして今なら少し分かる。
何も起きない毎日を重ねて、ここまで来た私も、
ずいぶん長い時間をかけて、
ひとりの大人になった。
この記事のサムネは「装丁設計室」で作っています。