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Photo byakisuke0925

96歳男、2800万円家出事件

    これまで、
    たくさんのことに「驚いて」きました。

    ・地球が秒速400メール以上で回っている

    ・清掃関連会社が
    実はドーナツ屋さんをやっている

    ・映画「シックス・センス」のラスト

    ・ざまあみやがれ!は
    「様を見やがれ」という意だった

    ・bedという英語はよく見ると象形文字

    でも、
    以下の出来事に比べれば、
    いずれも小さな驚きに思えてしまいます。

    少し長くなりますが、
    その『事件』のあらましを
    新聞記事より引用してみましょう。

    それが起こったのは、
    2013年の7月のことでした。

    【96歳男性: 現金2800万円持って家出 妻とけんかし】


    "現金2800万円を持って家出していた
    北九州市の男性(96)が28日、
    愛知県常滑市の中部国際空港で
    警察官に保護されていたことが分かった。

    妻(87)とけんかして25日に家出し、
    家族が捜索願を出していた。

    男性は、どこかで一人で生活しようと
    大金を持って旅をしていたという。


    県警中部空港署によると、
    男性は28日午後、中部空港の
    タクシー乗り場付近に1人でいたところ、
    航空会社社員から声を掛けられた。

    男性の行き先がはっきりしなかったため、
    社員が同署に連絡。署員が事情を聴くと、

    男性は「いろいろな所へ行こうと思って、
    お金を持って旅行している途中で、
    いい場所があったら住むつもりだった」


    と説明したという。

    持っていたかばんには
    1万円札の札束が28束入っていた。
    家出後に銀行で下ろしたという。

    男性は連絡を受けた家族に引き渡された。"

    …なんと、まあ。


    この記事を読み返すたびに、
    不謹慎なのですが、
    ある種の「おかしみ」を感じてしまいます。

    ご本人は
    真面目に「家出」をされているので、
    こんなことを言うと叱られそうですが、

    すべての行動が微妙にズレていて、
    どこかユーモラスを感じてしまうのです。

    まず、
    人は
    96歳になっても、
    「家出」をするんだという驚きがあります。

    それも、
    パートナーと喧嘩して
    腹が立って家を出るなんて、
    まるで若者みたいです。

    ティーンエージャーが親と喧嘩して、
    リュックサックひとつで家を飛び出すみたいな。

    しかし、
    ご本人は立腹して
    家を出ているのですが、

    しっかり銀行に寄って、
    お金を下ろし、
    2800万円もの大金を持ち歩くという冷静さ?も保っています。
    (いや、これこそが無謀なところか…?)

    そして何より凄いと思ったのは、
    96歳にして家出をして、

    「いろいろな所へ行こうと思った」
    「いい場所があったら住むつもりだった」
    という、
    なんとも前向きな姿勢です。

    はっきり云って「末来志向」です。

    私たちはついつい
    ご本人の「年齢」で、
    これから先の物語を勝手に想像してしまいがちです。

    でもよくよく考えてみれば、
    38歳で老け込んでしまう人もいれば、
    96歳で若くわがままな?人もいる、ということなのです。

    珍道中は続きます。

    大金を抱えて、
    二度と戻らない決意であったものの、
    行き先は「はっきりせず」
    転々とされていたご様子です。

    わたしも家出をしたことがあるので
    よく分かるのですが、
    若者の無鉄砲さが滲み出ています。

    そして、
    96歳のご本人は、
    バスに乗る時も、
    階段を上るときも、
    電車に揺られる際も、
    タクシーに乗っていても、
    宿を取って夜眠るときも、

    100万円の札束が28個も入ったカバンを、傍に持っていたわけです。
    (おそらく3kg近い重さがあったはず)。

    もしかすると、
    「いい場所があったら住むつもりだった」というのは、よい物件があれば(96歳にして)家を買う気もあったということでしょうか。

    ご本人は、
    中部国際空港で保護されたと記事にはあります。

    客観報道では
    「保護された」となりますが、
    ご本人的には、
    「新しい人生を探すための旅だったんだ」と
    自負されているかもしれません。

    パートナー(奥様)は
    さぞかし心配されたことでしょう。
    またご立腹だったかもしれません。

    そのようなご心情を脇において、
    失礼ながら
    わたしは書いてしまいますが、

    この方(96歳)が、
    羨しいと感じたのです。

     ——全部捨ててどこかへ行ってしまいたいという、
    誰もが密かに抱く淡い願望を、
    ご本人は、
    いとも簡単にやってのけたわけです。
     
    皆、こころの隅っこのほうで、
    「なにもかも捨てて知らないところへ行けたらなぁ…」という思いはあれど、家族や仕事や体力やお金のことを考えて、ほとんどの人は実行したりはしません。
     
    それを、
    96歳の人が
    やってしまった。
     
    時間や環境や秩序そっちのけで、
    自我が屹立してしまう様に、
    多分わたしは嫉妬しているのだと思います。
     
    最後に
    (今でも時々思うのですが)、
    そもそも
    喧嘩の原因はいったい何だったのでしょうか。

    「なんでこっちのドラッグストアで
    ティッシュペーパー買わなかったんだ!」
    みたいなことが原因で、
    もし家出をしてしまったとしたら、
    どう言葉を紡いでいいのか皆目分かりません。

    わたしは20年後も、
    この出来事を覚えていると思います。


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