
【完全保存版】ヘンダーソン④「身体を動かし、よい姿勢を保つ」を完全攻略
【完全保存版】ヘンダーソン④「身体を動かし、よい姿勢を保つ」を完全攻略
「歩ける・歩けない」だけで評価していませんか?|大腿骨骨折術後から学ぶアセスメント・看護問題・OP・TP・EP
ヘンダーソン14の基本的欲求を、1項目ずつ看護過程まで落とし込むシリーズ。
第4回は、
「身体を動かし、よい姿勢を保つ」
です。
この項目を見ると、
歩ける。
歩けない。
立てる。
立てない。
車椅子。
ベッド上。
どうしても、
移動能力だけを見てしまいがちです。
でも、本当に見るべきなのはそこだけではありません。
疼痛。
筋力。
関節可動域。
バランス。
起立。
移乗。
歩行。
姿勢。
めまい。
疲労。
呼吸状態。
転倒リスク。
本人の意欲。
認知機能。
術前の生活。
補助具。
環境。
ここまで全部つながっています。
今回は大腿骨骨折術後の高齢患者を題材に、
情報収集
→アセスメント
→充足・未充足
→看護問題
→目標
→OP・TP・EP
→評価
まで一本につなげます。
1.「身体を動かし、よい姿勢を保つ」とは何か
この基本的欲求を、
「歩行できるか」
だけで判断してはいけません。
身体を動かすということには、
寝返り。
起き上がり。
端座位。
立ち上がり。
立位。
移乗。
歩行。
車椅子移動。
食事姿勢。
排泄姿勢。
睡眠時の体位。
まで含まれます。
つまり、
日常生活を行うために、自分の身体を適切に動かし、必要な姿勢を保てているか
を見る項目です。
2.「歩けない=未充足」ではない
例えば、
両下肢麻痺があり、
歩行できない人がいるとします。
でも、
自分で車椅子へ移乗できる。
車椅子を操作できる。
食事姿勢を保てる。
自分が行きたい場所へ移動できる。
この人を、
「歩けないから未充足」
と単純に判断するのは違います。
逆に、
一応歩ける。
でも、
強い疼痛がある。
ふらつきがある。
転倒を繰り返している。
本人が怖くて動けない。
この場合は、
十分に欲求が満たされているとは言い切れません。
つまり、
その人の能力と生活に合った方法で、安全に身体を動かせているか
を見る必要があります。
3.今回の事例
85歳女性。
自宅で転倒し、
右大腿骨転子部骨折。
観血的手術を受けた。
術後はリハビリを継続中。
入院前は、
自宅内を杖で移動していた。
トイレ動作は自立。
現在は、
ベッドから車椅子への移乗時に見守りから一部介助が必要。
歩行器を使用している。
右下肢に疼痛あり。
本人は、
「また転びそうで怖い」
と話している。
起立時に時々ふらつきあり。
長時間の離床後には疲労感が強くなる。
術側下肢をかばうため、
立位時に身体が左側へ傾くことがある。
理学療法士によるリハビリを実施中。
4.この事例で「歩けるか」だけを見ると失敗する
この患者さんは、
歩行器を使用すれば歩ける。
だから、
「移動できている」
と判断していいでしょうか。
そうではありません。
疼痛がある。
ふらつきがある。
転倒への恐怖がある。
姿勢が崩れている。
疲労が強い。
入院前より介助量が増えている。
つまり、
身体を動かす能力はあるが、十分に安全・安楽・自立して動けている状態ではない。
ここを見ます。
5.K式|移動は7方向から見る
僕なら、
この項目を大きく7つに分けます。
①どこまで自分で動けるか
②動くときに痛みがあるか
③姿勢やバランスは保てるか
④動いたときに全身状態が崩れないか
⑤安全に動けるか
⑥本人は動くことをどう感じているか
⑦入院前と比べてどう変わったか
この7つです。
6.①どこまで自分で動けるか
まず、
動作を細かく分けます。
寝返り。
起き上がり。
端座位。
立ち上がり。
立位。
ベッド⇄車椅子移乗。
歩行。
方向転換。
トイレ移動。
車椅子操作。
一つずつ確認します。
「ADL一部介助」
だけでは情報が粗すぎます。
例えば、
起き上がりは自立。
立ち上がりは見守り。
移乗は一部介助。
歩行は歩行器で20m。
こうした具体的な情報の方が、
看護計画に使えます。
7.「できる」と「安全にできる」は違う
ここは重要です。
患者さんが、
「自分でできる」
と言う。
実際に、
一人で立てる。
でも、
立った直後にふらつく。
方向転換でバランスを崩す。
歩行器を適切に使えない。
これなら、
動作そのものは可能でも、安全性には問題があります。
だから、
能力だけではなく、
質を見る。
これが大事です。
8.②疼痛を見る
大腿骨骨折術後では、
疼痛は移動に直接影響します。
疼痛が強い。
↓
動きたくない。
↓
活動量が減る。
↓
筋力が落ちる。
↓
さらに動きにくくなる。
この悪循環が起こります。
確認するのは、
安静時痛。
体動時痛。
痛みの部位。
強さ。
いつ増えるか。
鎮痛薬使用後どうなるか。
痛みが移動やリハビリへどう影響しているか。
です。
9.痛みを我慢していないか
高齢者では、
「痛いですか?」
と聞いても、
「大丈夫です」
と答えることがあります。
でも、
表情が険しい。
動作が遅い。
患側をかばう。
触れると顔をしかめる。
離床を嫌がる。
こうした場合、
言葉以外の情報も見る必要があります。
痛みは主観的症状だからこそ、言葉だけで判断しない。
10.③姿勢とバランスを見る
「よい姿勢を保つ」という部分も重要です。
例えば、
端座位で身体が傾く。
立位で左右差がある。
術側をかばって反対側へ荷重が偏る。
車椅子で骨盤がずれている。
食事中に身体が傾く。
こうした姿勢の崩れは、
移動だけでなく、
食事。
呼吸。
嚥下。
褥瘡。
疼痛。
転倒。
にも影響します。
つまり、
姿勢は単独の問題ではありません。
11.立位姿勢から見えること
今回の患者さんは、
術側下肢をかばって、
身体が左へ傾くことがあります。
ここから、
右下肢への荷重回避。
疼痛。
筋力低下。
恐怖心。
バランス低下。
などが考えられます。
ただ、
「左に傾いている」
と書くだけでは、
情報収集で止まっています。
そこから、
なぜ傾くのか
を考える。
これがアセスメントです。
12.④動いたときの全身状態を見る
移動能力は、
筋力だけで決まりません。
例えば、
立つと血圧が下がる。
めまいがする。
息切れする。
SpO₂が低下する。
動悸がある。
疲労が強い。
こうした症状があれば、
活動できる範囲は変わります。
今回の患者さんでは、
起立時にふらつきがあります。
つまり、
立ち上がり時の循環動態も確認する必要がある。
13.起立時のふらつきは軽く見ない
「少しふらついただけ」
で終わらせない。
ふらつき。
↓
転倒。
↓
再骨折。
↓
ADL低下。
↓
さらに長期入院。
という流れにもつながり得ます。
特に大腿骨骨折後は、
再転倒を避けることが重要です。
だから、
立位の安定性。
血圧。
意識。
めまい。
疲労。
補助具。
足元。
環境。
をまとめて見る。
14.⑤安全に動けるか
移動では、
安全性が非常に重要です。
見るのは、
歩行器の使い方。
履物。
床の状態。
ナースコール。
ベッド高さ。
車椅子ブレーキ。
フットレスト。
障害物。
照明。
トイレまでの導線。
など。
患者さんの能力が変わらなくても、
環境が悪ければ転倒リスクは上がります。
つまり、
転倒リスクは患者さんだけの問題ではない。
環境も含めて考える必要があります。
15.⑥本人は「動くこと」をどう感じているか
今回、
本人は、
「また転びそうで怖い」
と話しています。
これは非常に重要です。
転倒後、
身体的には動けるようになっても、
恐怖心が残ることがあります。
怖い。
↓
動かない。
↓
筋力低下。
↓
さらに不安。
↓
もっと動けない。
という悪循環に入る可能性があります。
だから、
移動の看護では、
身体だけでなく心理面も見る。
16.「無理に動かす」ではない
リハビリが必要だからといって、
「怖くても歩きましょう」
だけでは不十分です。
本人が、
なぜ怖いのか。
痛いから?
ふらつくから?
また骨折すると思っている?
歩行器の使い方が不安?
ここを聞く。
不安の原因が分かれば、
援助方法が変わります。
17.⑦入院前と比べる
この比較が大切です。
今回の患者さんは、
入院前は杖で自宅内を歩いていた。
トイレも自立。
現在は、
歩行器。
移乗に介助。
起立時ふらつき。
つまり、
明らかに移動能力が低下しています。
ここから、
目標設定
ができます。
現在だけを見るのではなく、
「その人が元々どこまでできていたか」
を見る。
これが個別性です。
18.K式アセスメント4段階
今回も、
4段階で整理します。
STEP1 今どうなっている?
歩行器歩行。
移乗に一部介助。
右下肢疼痛。
起立時ふらつき。
立位姿勢に左右差。
活動後疲労。
転倒への恐怖。
STEP2 なぜ起きている?
大腿骨骨折術後。
疼痛。
下肢筋力低下。
入院による活動量低下。
術側への荷重不安。
起立時のふらつき。
転倒経験による恐怖。
STEP3 生活にどう影響している?
自力移動が制限される。
トイレ移動に援助が必要。
行動範囲が狭くなる。
活動への自信が低下。
生活上の自立度低下。
STEP4 このままだとどうなる?
活動量低下。
さらなる筋力低下。
ADL低下。
廃用。
転倒。
再骨折。
活動意欲低下。
退院後生活への影響。
などが考えられます。
19.アセスメント文章にする
例えば、
このようにまとめられます。
右大腿骨転子部骨折術後であり、現在は歩行器を使用して移動しているが、ベッドから車椅子への移乗には一部介助を必要としている。右下肢の疼痛があり、術側をかばうことで立位時に身体が左側へ傾くことがあり、筋力低下や荷重への不安も姿勢保持に影響していると考える。また、起立時にふらつきがあり、本人から「また転びそうで怖い」との発言もみられていることから、身体機能だけでなく転倒経験による恐怖心も活動を制限している。入院前は杖を使用して自宅内を移動し、トイレ動作も自立していたことから、現在は本人本来の移動能力が低下している状態であり、「身体を動かし、よい姿勢を保つ」という基本的欲求は未充足であると判断する。この状態が続くと活動量低下による筋力低下やADL低下、再転倒につながる可能性があるため、安全を確保しながら段階的に活動範囲を拡大する援助が必要である。
これが、
ただ、
「歩行器使用。移乗一部介助。」
と書くのとの違いです。
20.充足・未充足の判断
今回なら、
未充足
と判断します。
理由は、
単に歩行器を使っているからではありません。
入院前より移動能力が低下。
疼痛がある。
ふらつきがある。
姿勢が崩れる。
転倒への恐怖がある。
介助が必要。
つまり、
本人が望む生活レベルで、
安全・安楽に身体を動かせていません。
21.看護問題
看護問題としては、
例えば、
術後疼痛および下肢筋力低下に関連した移動能力の低下
という方向。
あるいは、
恐怖心を中心に考えるなら、
再転倒への恐怖に関連した活動性低下
なども考えられます。
ただし、
学校の指定された看護問題表現に合わせる必要があります。
大事なのは、
患者さんに起きていることと原因がつながっているか。
です。
22.長期目標
例えば、
本人が安全な方法で移動し、退院後の生活に必要な移動能力を獲得できる。
または、
疼痛をコントロールしながら、本人の能力に応じた方法で日常生活に必要な移動を行える。
と考えられます。
23.短期目標
例えば、
移乗時に適切な手順で安全に動作できる。
起立時に著明なふらつきを認めず立位保持できる。
疼痛出現時に無理をせず援助を求めることができる。
歩行器を正しく使用して病棟内を移動できる。
本人が転倒への不安を表出できる。
短期目標は、
患者さんの状態によって変えます。
24.OP|何を見る?
この項目では、
「歩行状態」
だけでは足りません。
例えば、
疼痛部位。
疼痛強度。
安静時痛。
体動時痛。
鎮痛薬使用状況。
下肢筋力。
関節可動域。
起き上がり。
端座位保持。
立ち上がり。
立位保持。
移乗。
歩行距離。
歩行状態。
ふらつき。
めまい。
血圧。
脈拍。
SpO₂。
疲労。
表情。
姿勢。
荷重状況。
補助具の使用状況。
転倒への不安。
認知機能。
指示理解。
履物。
環境。
リハビリ状況。
などを確認します。
25.「歩行距離」だけで評価しない
昨日10m。
今日20m。
数字だけ見れば、
改善しています。
でも、
今日20m歩いたあと、
強い疲労。
疼痛増強。
翌日離床拒否。
なら、
単純に「歩行能力向上」とは言い切れません。
距離+患者さんの反応
をセットで見る。
26.TP|何をする?
例えば、
疼痛の程度を確認し、
必要時に鎮痛薬の効果が得られる時間帯を考慮して離床する。
ベッド周囲の環境を整える。
起立時はふらつきに注意して見守る。
患者さんの能力に応じて介助量を調整する。
歩行器や車椅子を安全に使用できるよう整える。
適切な履物を使用する。
疲労状態に応じて休息を取り入れる。
本人ができる動作は本人に行ってもらう。
理学療法士等と移動方法を共有する。
トイレや食事など日常生活の中でも、
可能な範囲で活動機会を確保する。
こうした援助が考えられます。
27.「全部介助」は優しい看護とは限らない
ここは大事です。
転ばせたくない。
時間がない。
だから全部やる。
車椅子へ乗せる。
ズボンを上げる。
ベッドまで運ぶ。
確かに安全に見えます。
でも、
患者さん自身ができる動作まで奪うと、
活動能力がさらに低下する可能性があります。
だから、
安全を守りながら、できる部分は本人に行ってもらう。
これが大切です。