
【完全保存版】ヘンダーソン⑦「体温を正常範囲に保つ」を完全攻略
【完全保存版】ヘンダーソン⑦「体温を正常範囲に保つ」を完全攻略
「熱があるから冷やす」で終わっていませんか?|肺炎・高熱から学ぶアセスメント・看護問題・OP・TP・EP
ヘンダーソン14の基本的欲求を、1項目ずつ看護過程まで落とし込むシリーズ。
第7回は、
「体温を正常範囲に保つ」
です。
体温のアセスメントというと、
「38.5℃です」
「発熱があります」
「クーリングしました」
ここで終わってしまうことがあります。
でも、
体温は数字だけを見ても看護にはなりません。
悪寒。
発汗。
顔色。
末梢冷感。
呼吸。
脈拍。
水分摂取量。
尿量。
意識状態。
感染。
薬剤。
衣類。
寝具。
室温。
本人の苦痛。
これら全部がつながっています。
今回は、
肺炎によって39℃台の高熱がある高齢患者
を題材に、
情報収集
→アセスメント
→充足・未充足
→看護問題
→目標
→OP・TP・EP
→評価
まで一本につなげます。
1.「体温を正常範囲に保つ」とは何か
この項目を見ると、
「36℃台なら正常」
と考えたくなります。
でも、
それだけではありません。
人間は、
暑ければ汗をかく。
寒ければ震える。
衣類を調整する。
布団をかける。
エアコンをつける。
水分をとる。
こうした行動によって、
自分の体温を調節しています。
つまりヘンダーソンの視点では、
その人が身体の状態や環境に応じて、適切に体温を調節できているか
を見る必要があります。
2.体温が正常なら「充足」とは限らない
例えば、
体温36.5℃。
数字だけ見れば正常。
でも、
本人は大量に汗をかいている。
衣類が濡れている。
水分がとれていない。
室温が高い。
自分では服を脱げない。
こういう状態なら、
体温調節が適切にできているとは言い切れません。
逆に、
感染症で発熱していても、
治療を受けながら、
本人が苦痛を表出でき、
衣類や寝具が調整され、
水分が確保され、
安全に経過をみられている。
なら、
看護によって体温調節を支援できている状態と考えられます。
3.今回の事例
86歳女性。
肺炎で入院。
体温39.4℃。
脈拍104回/分。
呼吸数24回/分。
SpO₂ 94%。
血圧118/64mmHg。
本人は、
「寒い。震える」
と話している。
手足に冷感あり。
毛布を希望。
その後、
解熱過程で大量の発汗あり。
寝衣が汗で湿っている。
水分摂取量は少ない。
食事摂取量3割。
尿量も普段より少ない。
本人から、
「だるくて飲む気にならない」
との発言あり。
医師指示により抗菌薬治療中。
必要時解熱鎮痛薬の指示あり。
4.「39.4℃」だけではアセスメントできない
この情報を見て、
「高熱あり」
だけで終わってはいけません。
なぜ熱が出ているのか。
今は、
熱が上がっている途中なのか。
ピークなのか。
下がっている途中なのか。
悪寒があるのか。
発汗しているのか。
水分はとれているのか。
意識はどうか。
呼吸状態は?
循環状態は?
ここまで見ます。
体温は、
時間によって変化する情報
です。
5.K式|体温は6方向から見る
僕なら、
体温のアセスメントを6方向に分けます。
①体温そのもの
②熱が上がる・下がる過程
③発熱による全身への影響
④体温調節を自分でできるか
⑤環境は適切か
⑥原因と治療経過はどうか
この6つです。
6.①まず体温そのものを見る
見るのは、
現在の体温。
最高体温。
最低体温。
発熱した時刻。
一日の推移。
解熱後の変化。
です。
単発の、
「39.0℃」
だけではなく、
どのように変化しているか
を見る。
例えば、
朝37.2℃。
昼38.3℃。
夕方39.4℃。
なら、
上昇傾向です。
逆に、
39.4℃から38.0℃、37.5℃へ低下しているなら、
解熱方向です。
7.体温は「経過」が重要
同じ38.5℃でも、
状態は違います。
急に上がった38.5℃。
昨日から続く38.5℃。
解熱薬後の38.5℃。
39.5℃から下がってきた38.5℃。
意味が違います。
だから、
体温の数字+時間経過
をセットで見ます。
8.②悪寒があるとき
今回の患者さんは、
「寒い。震える」
と話しています。
発熱時、
体温が上昇する過程では、
本人は寒く感じることがあります。
このとき、
患者さんは、
毛布をかけてほしい。
暖かくしてほしい。
と訴えることがあります。
ここで、
「熱があるから冷やしましょう」
とすぐにクーリングすると、
本人の苦痛を強めることがあります。
9.発熱=すぐ冷やす、ではない
ここは重要です。
発熱患者を見ると、
氷枕。
冷罨法。
クーリング。
をすぐ考えがちです。
でも、
悪寒・戦慄が強い時期では、
本人は強い寒さを感じています。
その状態で過度に冷やせば、
さらに震えが強くなる可能性があります。
だから、
今どの段階なのか
を観察する。
看護は、
「数字に対して処置する」
のではなく、
患者さんの状態に合わせて援助する
ものです。
10.熱が上がりきったあとはどうなる?
体温が上昇しきると、
悪寒が弱くなる。
顔が赤くなる。
身体が熱く感じる。
本人が、
「暑い」
と訴える。
ことがあります。
その時は、
寝具を調整する。
衣類を調整する。
必要に応じて冷罨法。
室温を整える。
など、
身体から熱を逃がしやすい環境を考えます。
11.解熱時には発汗を見る
体温が下がるときには、
発汗が増えることがあります。
今回も、
大量の発汗があります。
ここで重要なのが、
汗をかいたこと自体で終わらないこと。
汗によって、
衣類が濡れる。
不快感。
体温低下。
水分喪失。
皮膚トラブル。
につながる可能性があります。
12.濡れた寝衣をそのままにしない
汗で寝衣が濡れている。
でも、
本人は倦怠感が強く、
自分では着替えられない。
この場合、
第6回の、
「適切な衣類を選び、着脱する」
ともつながります。
汗を拭く。
寝衣を交換する。
寝具を調整する。
必要に応じて清拭する。
こうした援助で、
体温調節と快適性の両方を支えます。
13.③発熱が全身に与える影響を見る
高熱になると、
体温だけでなく、
全身状態が変化します。
例えば、
脈拍増加。
呼吸数増加。
倦怠感。
食欲低下。
水分摂取低下。
発汗。
疲労。
脱水。
意識状態の変化。
などです。
特に高齢者では、
わずかな変化が全身状態に影響することがあります。
14.発熱と呼吸
今回、
呼吸数24回/分。
肺炎があります。
発熱すると、
身体の代謝が高まり、
呼吸や循環への負担が増えることがあります。
さらに、
肺炎そのものも呼吸状態に影響しています。
つまり、
高熱と呼吸状態を別々に見ない。
第1回の、
「正常に呼吸する」
ともつながります。
15.発熱と脈拍
体温上昇に伴って、
脈拍が増えることがあります。
今回、
脈拍104回/分。
これを、
「頻脈です」
だけで終わらせない。
発熱?
脱水?
疼痛?
不安?
循環状態?
など、
原因を考えます。
16.発熱と水分
ここは非常に重要です。
発熱。
↓
発汗。
↓
水分喪失。
さらに、
倦怠感。
↓
水分を飲みたくない。
すると、
失う水分は増えるのに、入ってくる水分は減る
という状態になります。
このまま続けば、
脱水につながる可能性があります。
17.「だるくて飲めない」は大切なS情報
今回、
本人は、
「だるくて飲む気にならない」
と話しています。
これは単なる好き嫌いではありません。
全身倦怠感によって、
水分摂取行動そのものが低下しています。
看護師は、
「水分をとってください」
だけでなく、
なぜ飲めないのか
を考える必要があります。
18.尿量も見る
発熱患者では、
飲水量だけではなく、
排尿状態も確認します。
尿量。
回数。
尿色。
濃縮。
など。
今回、
尿量が普段より少ない。
これは、
水分バランスを考える材料になります。
つまり、
第3回の排泄ともつながります。
19.④本人が体温調節できるか
健康なときは、
寒ければ服を着る。
暑ければ脱ぐ。
布団を調整する。
窓を開ける。
水を飲む。
こうした行動を自分で行えます。
でも、
高齢。
認知症。
麻痺。
重度の倦怠感。
意識障害。
寝たきり。
こうした状態では、
自分だけでは体温調節が難しくなります。
だから、
本人の体温調節能力
も見ます。
20.認知症がある場合
例えば、
真夏なのに、
厚手の上着を何枚も着る。
暑さを訴えない。
冷房を嫌がる。
逆に、
冬でも薄着。
このような場合、
気温や身体状態に応じた衣類選択が難しくなっている可能性があります。
看護師が、
室温。
発汗。
皮膚。
本人の訴え。
を確認しながら、
環境を調整する必要があります。
21.高齢者は「暑い」「寒い」が分かりにくいこともある
本人が、
「大丈夫」
と言っている。
でも、
汗が多い。
皮膚が熱い。
口腔内が乾燥。
ぐったりしている。
このような場合、
本人の訴えだけで判断しない。
S情報とO情報を組み合わせます。
22.⑤環境を見る
体温調節は、
患者さん本人の身体だけの問題ではありません。
室温。
湿度。
風。
直射日光。
寝具。
衣類。
空調。
これらも影響します。
例えば、
発熱患者に、
厚い毛布を何枚もかけたまま。
室温も高い。
これでは、
体温調節しにくくなることがあります。