
還暦は人生の再スタート
ドキュメンタリー小説「40年間の末路」の最後に再婚を家族の前で発表した。
あれから5か月が経過した昨日。
僕たちは入籍したので、ご報告致します。
還暦祝いで最後の挨拶
人生には、ときどき、
「えっ、そんなことってあるの?」
と、自分自身でも驚いてしまうような出来事が起こる。
今年5月。
僕の還暦を祝う誕生会を、二人の娘たちが開いてくれた。
60歳。
人生のひとつの節目を迎え、娘たちに囲まれて食事をしながら、僕はなんとも幸せな気持ちになっていた。
そして、その日の最後の挨拶。
僕は、集まったみんなに向かって、突然こう告げた。
「実は、今年の秋に再婚します」
一瞬、時間が止まったような気がした。
再婚を決意したのは、昨年12月だったが、この日まで公表しなかった。
還暦を迎えた年に、もう一度、新たな人生を共に歩む人と結婚する。
人生って、本当に何が起こるかわからない。
でも、ここからが僕たちの本当の再スタートだった。
6つの「はじめまして」の先に
――僕たちは夫婦になった――
結婚する。
二人だけなら、それほど難しい話ではない。
けれど、人生を共にするということは、二人だけの問題ではない。
それぞれに家族がいる。
彼女は成人した3人の子供たちと母親と5人暮らし。
20年ほど前に前夫が他界し、実家に戻って3人の子供たちを女手一つで育て上げた。
だから僕たちは、少しずつ、時間をかけて、お互いの大切な人たちに会うことにした。
最初は6月中旬。
僕が彼女の実家近く和食レストランで初顔合わせをした。
そこには、お母さんと3人の子供たちがいた。
緊張しなかったと言えば嘘になる。
「どんな人だと思われるだろう」
お互いにそんなことを考えながら、ひとりひとりに挨拶をした。
これから家族になる人たち。
その「はじめまして」には、普通の挨拶とは少し違う重みがあった。
しかし話題の中心はTVチャンピオンだった。
特に本番の競技についての話題で盛り上がり、みんなテレビの裏話に興味津々に耳を傾けた。
そして7月上旬。
今度は彼女を僕の自宅に招いた。
僕の両親との顔合わせだ。
自分の家族に、大切な人を紹介する。
こちらもまた、独特の緊張感があった。
でも、お持ち帰りした寿司を前にして、父が特製のなめこ汁を振舞った。
使用したなめこは昨年の秋の褒章を受章した、従兄が丹精込めて栽培した最高級のなめこを使用した。
おしゃべりな父はその話を皮切りに、とても上機嫌だった。
みんなが顔を合わせ、言葉を交わすうちに、少しずつ空気が柔らかくなっていった。
「これから、この人が我が家の一員に加わるんだなぁ」
そんな実感が、少しずつ湧いてきた。
そして7月下旬には、軽井沢観光を兼ねて長野へ。
僕の妹家族が暮らす長野を訪ねた。
仕事帰りの妹宅を訪れ、彼女を紹介した。
すると妹は開口一番。
「こんな兄でいいんですか?」
と笑いながら彼女に質問した。
「とてもステキな人で、私から猛アタックしたんです」
と笑いながら答える彼女の傍で、僕はとても赤面した。
妹家族の一員でもあるゴールデンレトリバーとも対面して、終始和やかな雰囲気の中で、肩の力も抜けていった。
その夜は駅前の観光ホテルに宿泊し、翌日軽井沢の観光地や景勝地を楽しんだ。
「こうやって少しずつ、家族になっていくんだな」
と思った。
8月上旬には、茨城県内に住む彼女の妹家族と顔を合わせた。
こちらも話題はテレビチャンピオンが中心の話題だった。
そして8月下旬。
今度は僕の娘二人と彼女が宇都宮で顔を合わせた。
5月の還暦祝いを企画した娘たち。
僕から突然「再婚する」と聞かされた。
その娘たちと、これから人生を共にする彼女が、同じテーブルを囲んだ。
娘たちが妹同様、開口一番。
「こんな父でいいんですか?」
と笑いながら質問した。
「この人となら私は幸せになれそう」
と真顔で答えた。
それでも、娘たちは彼女に気を使いながら、元妻の件を話した。
この件が最終的なトリガーとなり、長女の勧めで、離婚を決意した。
その結果、彼女に出会えた。
そんなめぐり合わせに、複雑で不思議な気持ちになった。
そして9月下旬。
横浜に住む彼女の姉夫婦が、茨城の実家に来る機会があり、彼女の自宅付近の割烹料理店で最後の親族の顔合わせをした。
しかし今までは全て和やかなムードとは一変し、自己紹介もそこそこに、
「お母さんの事はどうするの?」
「事実婚でもいいのでは?」
と、母親の事を心配するあまり、再婚に消極的な質問に、彼女は心折れそうになりながらも、彼女の思いを姉夫婦に伝え、僕も彼女を支援した。
振り返ってみれば、僕たちは結婚するまでに、4カ月の間に6回もの「はじめまして」を重ねた。
彼女の家族。
僕の家族。
そして、その間にいる僕たち。
ひとつひとつの出会いを積み重ねながら、少しずつ「二人」から「家族」へと輪が広がっていった。
そして、10月8日
そして昨日。
2026年10月8日。
僕たちは、彼女が住む市役所に婚姻届を提出した。
長かったような。
あっという間だったような。
そしてようやく、僕たちは正式に夫婦になった。
婚姻届を提出した瞬間、
何か劇的な音楽が流れるわけでもない。
空から紙吹雪が舞うわけでもない。
ただ、たった一枚の書類の手続きが完了するまでに90分も掛かった。
それでも無事、手続きが完了し、彼女は改姓した住民票を手にした。
「夫婦になったんだな」
そう思うと、なんとも言えない感慨があった。
入籍しただけでは終わらない
ただし、僕たちの場合は、ここで新生活が始まったわけではない。
彼女の仕事の都合もあり、現時点では籍を入れただけ。
婚姻届を出した直後に、彼女の銀行口座や運転免許証など、名義変更の手続きに追われた。
ロマンチックな「入籍日」とは、ちょっと違う。
現実はなかなか忙しい(笑)。
それでも、ひとつひとつの手続きをしながら、
「本当に結婚したんだな」
と実感していった。
そして最後に、彼女の自宅へ向かった。
お義母さんと子供たちと猫たちにも、改めて入籍したことを報告した。
「今日、正式に夫婦になりました」
その言葉を口にすると、
お義母さんは
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。
その瞬間、胸が熱くなった。
さらに、彼女の自宅から歩いて3分ほどのところにある、お義父さんのお墓へ。
花束を供え、線香を手向けた。
これから家族になることを、静かに報告した。
お義父さんには、直接お会いすることはできなかった。
でも、これから彼女と人生を歩んでいく以上、僕にとっても大切な人だ。
「これから二人で頑張ります」
心の中で、そう伝えた。
本当のスタートは、これから
もちろん、すべてが順風満帆というわけではない。
これから先、いろいろな問題が起こり、荒波に揉まれるだろう。

生活のこと。
仕事のこと。
お互いの家族のこと。
今まで別々に歩いてきた二人が、一緒に暮らしていくのだから、考え方がぶつかることだってあるかもしれない。
「再婚だから、もう大人だから、何も問題は起こらない」
そんなことはない。
むしろ、これまでそれぞれが歩んできた人生があるからこそ、簡単には譲れないものもある。
だからこそ、僕たちは焦らない。
意見が違えば話し合う。
困ったときは助け合う。
そして何より、お互いの家族を大切にする。
それが、これからの僕たちにとって大切なことだと思っている。
来年の春。
彼女が今の仕事を円満退職した後、僕の自宅の近くへ転居し、新しい仕事を始める予定だ。
そのとき、ようやく僕たちの「二人の暮らし」が本格的に始まる。
10月8日の入籍は、そのためのゴールではない。
むしろ、スタートラインだ。
二人の手で、これからの人生を
全ての手続きと、報告が終わり、自宅近くのカフェに立ち寄った。
そこで以前購入した結婚指輪を取り出し、互いに指輪の交換した。


これからの生活や将来について話し合った。
僕は60歳、妻は50歳というそれぞれの人生の節目での再婚だからこそ、
2人だけの幸せにとどまらず、お互いの家族も含めた全員が、
笑顔になれる関係を築いていきたい。
今後は課題や壁にぶつかることもあるはず。
しかし、1人で抱え込まずに2人で対話・協力し合い、同じ方向を向いて歩んでいきたい。
これまでの歩みを振り返りつつ、
支えてくれた家族や周囲の人々へ感謝を伝えるとともに、
2人で力を合わせて笑顔あふれる新しい人生がスタートする。
どうかこれからも、温かく見守ってください。
二人で力を合わせて、幸せになります。
これからも、どうぞよろしくお願いします。