
日陰でも育つ観葉植物5種と、冬の寒さで気をつけること
日陰でも育つ、と書いてあったので買いました。
冬を迎えて元気がなくなってきた鉢を抱えて、店に来られる方からよく聞く言葉です。
日当たりの悪い部屋や、薄暗い玄関。植物を置きたいけれど日が当たらない場所のために、「日陰に強い」と書かれた観葉植物を探す方は大勢いらっしゃいます。ネットで調べれば、「日陰でも育つおすすめ観葉植物」といった一覧記事がいくらでも見つかるでしょう。
けれど、その一覧を頼りに選んで、冬に葉を落としてしまう方が後を絶ちません。なぜなら、そうした記事のほとんどは「日陰に強い」という特徴だけを並べていて、寒さに耐えられる温度の数字が書かれていないからです。
「日陰でも育つ」だけで選ぶと、冬に困ります。暗い場所に置ける5品種は、耐寒温度が分かっていないからです。
枯れるのには、必ず理由があります。
① メーカーのいう「日陰」は、光が入りにくい玄関や部屋のことです

「日陰でも育つ植物を探しています」と相談されたとき、私が最初にお尋ねするのは、その部屋の明るさです。
多くの方は、直射日光が当たらない場所を一括りに「日陰」と呼んでいらっしゃいます。けれど、園芸資材メーカーの資料を丁寧に読んでいくと、日陰という言葉にははっきりとした線引きがあります。
メーカーの資料では、日陰について次のように書かれています。
ここでお話しする日陰とは、光が入りにくい玄関や部屋のことです
つまり、光そのものがほとんど届かないような空間を指して「日陰」と呼んでいるわけです。
一方で、同じ資料には「明るい半日陰」という区分も登場します。その場所を、資料はこう断っています。
リビングの奥にあるキッチンやレース越しの窓辺など、直射日光は当たらないものの比較的明るい場所
この2つは、植物にとってはまったく別の環境です。
部屋の奥であっても、窓からの光がやわらかく届いている場所なのか。それとも、昼間でも照明をつけなければ手元が見えないような、光が入りにくい場所なのか。自分が置こうとしている場所がどちらなのかを見極めないまま品種を選んでしまうと、あとで必ず無理が出ます。
ここは、カルテに書いておきましょう。
観葉植物が生育するためには日光が必要です。種類によって必要とする明るさの強さは違いますが、光が足りなければ植物はエネルギーを作れません。資料にも「室内で育てている観葉植物が枯れてしまう原因は、日光が不足しているせいかもしれません」という一文があります。
まずは、置きたい場所が「光が入りにくい場所」なのか、それとも「明るい半日陰」なのか。この2つのどちらであるかを決めることから始まります。
部屋の明るさを3つに分けて、ライトが要るかどうかまで見る考え方は、こちらのカルテにまとめています。
② 光が入りにくい場所に置けるのは、アグラオネマなど5品種です

では、もっとも光の届きにくい側には、どんな品種が置けるのでしょうか。
置き場所を3段階に整理したメーカーの資料を見ると、日陰でも育てやすいグループとして挙げられているのは、次の5つの品種だけです。
■ アグラオネマ、オキシカルジューム、シュロチク、アスプレニウム、デコラゴム
この5つは、観葉植物のなかでも耐陰性、つまり光の少ない環境に耐える力がとりわけ高い種類です。
資料には「蛍光灯や白熱球の光でも育つほど耐陰性に優れた種類もあります」と書かれています。室内の人工照明だけでも持ちこたえられるほど、光への要求が少ない性質を持っているわけです。
ただし、この記述にはとても大切な続きがあります。
「日陰に強い観葉植物も、まったくの暗闇ではうまく育ちません。定期的に日光浴をさせてあげると植物が喜びます」
いくら日陰に強いといっても、植物である以上、光合成をまったく行わずに生き続けることはできません。根から水を吸い上げ、葉で光を受け止めて栄養を作る。その営みが完全に止まってしまえば、株は少しずつ体力をすり減らしていき、やがて葉を落とします。
日陰に強い5品種であっても、暗い場所に置きっぱなしにしてよいわけではありません。ときどき明るい場所へ連れ出して、光を浴びせる時間を作ってやる必要があります。
暗い場所に置き続けると株がどう変わっていくかは、こちらのカルテで3つの段階に分けています。
③ その5品種は、耐寒温度が分かりません

光が入りにくい場所に置ける5つの品種が分かりました。では、その5つを玄関や冷え込む部屋に置いて、無事に冬を越せるでしょうか。
それを確かめるために、同じメーカーが出している耐寒温度の資料を開きます。そこには、寒さに強いとされる18の品種と、それぞれが耐えられる具体的な温度が並んでいます。
その18品種の表と、先ほどの5品種を突き合わせてみました。
耐寒温度をまとめた資料に、この5つの品種は1つも載っていません。
アグラオネマも、オキシカルジュームも、シュロチクも、アスプレニウムも、デコラゴムも、18品種のなかに名前が見当たらないのです。
誤解しないでいただきたいのは、これは「寒さに弱い」という意味ではありません。
耐寒性を調べた公の表のなかに、具体的な温度の数字が記載されていない。数字が無い、という意味です。
——ええ、枯らしました。堂々と枯らしました。
「日陰に強い」と書いてあると、置き場所のことだけ考えて買ってしまいます。ですが札に書いてあるのは、たいてい光の話だけです。冬のことは、別の資料を見ないと分かりません。
耐寒温度の数字が分からないということは、その場所の気温が5℃まで下がったときに耐えられるのか、3℃で限界を迎えるのかが判断できないということです。
メーカーの別の資料では、「観葉植物の多く」としての目安として、10℃を下回ると元気をなくすと書かれています。これは品種ごとの下限温度ではありませんが、ひとつの確かな目安です。
つまり、光の条件で選んだ5品種は、寒さの条件では判断のしようがないわけです。夏のあいだ元気でも、それは寒さの答えにはなりません。
名前も寒さの数字も分からない鉢は、いちばん寒さに弱い側の7℃を下限に見ておくのが安全です。こちらのカルテにまとめています。
④ 明るい半日陰まで広げると、耐寒温度の分かる品種が4つあります

では、どうすればよいのでしょうか。
答えは、置き場所の基準を一段だけ戻すことです。「光が入りにくい場所」から、先ほど確認した「明るい半日陰」まで戻してみるのです。
リビングの奥にあるキッチンや、レース越しの窓辺。直射日光は当たらないものの、周囲の反射光で比較的明るい場所です。
この「明るい半日陰で育てられる」グループとして、資料には6つの品種が挙げられています。
■ シュガーバイン
■ アイビー
■ スパティフィラム
■ ユッカ
■ パキラ
■ ガジュマル
この6品種を、先ほどの耐寒温度18品種の資料と突き合わせてみます。
すると、はっきりと数字の付いた4つの品種が浮かび上がってきました。
■ アイビー(ヘデラ・ヘリックス)は0℃まで
■ ユッカ(青年の木)は3℃まで
■ パキラは5℃まで
■ ガジュマルは5℃まで
これが、耐寒温度の裏づけを持つ4つの答えです。
18品種の耐寒温度を低い順に並べた表は、こちらのカルテにあります。
アイビーは、資料のなかでもっとも低い0℃まで。18品種のなかで、いちばん下の段にいます。
ユッカは3℃まで耐えられます。さらにユッカには、資料の中で特別な注記が付いています。全18品種のなかで3つしかない、乾燥気味にすると耐寒性が増すという特徴を持つ品種のひとつなのです。冬は乾かし気味に、ということです。屋外での冬越しが認められている5品種のひとつでもあります。
パキラとガジュマルは、ともに5℃まで。ただし5℃を下回らないかどうかは、お住まいと部屋によります。 夜間の冷え込みは、昼に測っても分かりません。
なお、明るい半日陰に挙げられていたシュガーバインとスパティフィラムの2つは、耐寒温度の表には掲載されていませんでした。
日当たりの悪い場所で冬の寒さにも耐えさせたいのであれば、この4つの品種から選ぶのがもっとも手堅い道になります。
4つのなかで、いちばん低い数字が付いているのはアイビーです。鉢に植わった状態のものなら、届いたその日から置けます。
⑤ 明るさを取るか、寒さを取るか

ここまで見てくると、ひとつの法則が見えてきます。
光が入りにくい暗い場所ほど、寒さの数字がはっきりしている品種は減っていきます。逆に、光がしっかりと入る明るい場所へ目を向けると、数字を持つ品種はさらに広がります。
置き場所の資料で、一番日当たりのよい場所を好むグループとして挙げられている5品種があります。
■ ハートカズラ
■ オーガスタ
■ ワイヤープランツ
■ ゴールドクレスト
■ ストレリチア・レギネ
この5品種を耐寒温度の表と照らし合わせると、ここにも数字の付いた品種が2つありました。
■ ストレリチア・レギネとオーガスタは5℃まで
どちらも5℃まで耐えられます。大きな窓のあるリビングのような日当たりの抜群な部屋であれば、堂々とした大きな葉を楽しむことができます。なお、ハートカズラ、ワイヤープランツ、ゴールドクレストの3つは、耐寒温度の表には載っていません。
部屋の環境を考えるときは、明るさだけを切り取っても、寒さだけを切り取ってもうまくいきません。
明るい場所に置けるのであれば、選べる品種の幅は広がります。しかし、暗い場所へ行けば行くほど、植物にとっての環境は厳しくなり、寒さの数字という安全弁を持った品種は少なくなっていきます。
明るさを優先できるのか、それとも冬の冷え込みへの強さを優先しなければならないのか。ご自宅の部屋の条件を見比べながら、無理のない着地点を見つけてください。
⑥ トイレや窓のない部屋は、どう考えるか

店でお客様とお話ししていると、「トイレに置ける観葉植物はどれですか」「窓がまったくない部屋でも育つものはありますか」という質問を本当によく受けます。
雑誌やネットの記事では、「トイレにおすすめの観葉植物」といった見出しをよく見かけます。
けれど、メーカーの資料をどれほど隅々まで探しても、場所として書かれているのは玄関や、光の入らない部屋までです。トイレも、風呂場も、窓のない納戸も、資料には一言も書かれていません。
ですから私も、トイレに置ける品種を名指しでおすすめすることはいたしません。
窓のない部屋やトイレで植物を育てられるかどうかは、品種の名前で決まるのではなく、次の2つの条件を満たしているかどうかで決まります。
■ 条件1:その場所が、まったくの暗闇に近い状態ではないか
■ 条件2:定期的に、レース越しの窓辺など明るい場所へ動かせるか
照明を消せば昼間でも真っ暗になってしまう空間は、植物にとって呼吸と光合成を維持できない過酷な場所です。そこへ植物を置きっぱなしにすれば、どんなに日陰に強い品種であっても、いずれ葉を黄色くして枯れていきます。
どうしても窓のない場所に置きたいのであれば、同じ鉢をずっと置き続けるのではなく、数日おきに明るい半日陰へ運んで日光浴をさせてあげてください。それができないのであれば、植物にとっては辛い環境になってしまいます。
なお、玄関については光の入り方だけでなく、夜間の冷え込みや隙間風といった特有の条件が重なります。玄関に置く際の詳しい判断については、玄関のカルテで詳しくお話ししています。
⑦ まとめ — 私の答え

三十年、この商売をやってきました。
春や夏に青々と元気に育っていた鉢が、冬の寒さで傷んで持ち込まれる姿を、私は何度も見てきました。そのたびに、「日陰でも育つと聞いていたのに」と悲しそうな顔をされるお客様がいらっしゃいます。
「日陰でも育つ」というのは、お店で買うときの言葉です。冬の寒さまで面倒を見てくれる言葉ではありません。
日当たりの悪い場所で観葉植物を元気に育てたいのであれば、次の順番で考えてみてください。
■ 順番1:置きたい場所が「光が入りにくい場所」か「明るい半日陰」かを見極める
■ 順番2:冬の冷え込みが心配なら、寒さの数字がある品種(アイビー、ユッカ、パキラ、ガジュマル)から選ぶ
■ 順番3:光が入りにくい場所に置く場合は、定期的に明るい場所へ動かして日光浴をさせられるかを確かめる
「日陰でも育つ」だけで選ばず、耐寒温度の分かる品種から選びます。
ここは、カルテに書いておきましょう。
植物の命を支えているのは、光と温度のバランスです。日陰という一面だけで選ばず、冬の寒さの数字まで揃えて迎えてあげてください。それだけで、冬越しの失敗はぐっと少なくなります。
FAQ
Q1. 寒さに強くて日陰でも育つ観葉植物はどれですか。
A. 結論:光が入りにくい場所で、寒さの数字まで揃っている品種はありません。 資料が暗い側に挙げている5品種には、耐寒温度の資料に具体的な数字がありません。もし冬の寒さも考慮して選びたいのであれば、置き場所を「明るい半日陰」まで戻し、0℃まで耐えるアイビーや、3℃までのユッカ、5℃までのパキラやガジュマルから選ぶのが確実です。
Q2. トイレに置ける観葉植物はありますか。
A. 結論:名指しで置けるといえる品種はありません。 資料が挙げている日陰の範囲は玄関や光の入らない部屋までであり、トイレや浴室などの個別の空間は含まれていません。窓がなく一日中暗いトイレでは、どれほど日陰に強い品種でも弱ってしまいます。どうしても置きたいときは、定期的にレース越しの窓辺など明るい場所へ移動させて、日光浴をさせてあげてください。
Q3. 窓のない部屋でも育ちますか。
A. 結論:まったくの暗闇では、日陰に強い品種でもうまく育ちません。 蛍光灯などの照明の光でも耐えられる品種はありますが、光合成を行うための光が完全に遮断された環境では、植物は生きられません。窓のない部屋で育てるのであれば、数日おきに明るい半日陰へ運んで光を当てるか、植物育成用のライトを補助として使う必要があります。
Q4. 一覧でよく見るポトスやモンステラはどうですか。
A. 結論:今回の2つの資料で条件が揃わないため、この記事では外しています。 一般的なまとめ記事ではよく見かける名前ですが、今回突き合わせたメーカーの置き場所資料と耐寒温度資料の両方に、確かな数字として揃っていない品種は取り上げない方針を取っています。モンステラは耐寒温度の表に5℃までとありますが、置き場所の3段階には掲載されていないため、ここでは比較の対象から外しました。
Q5. 日陰に置くなら、冬は何℃まで大丈夫ですか。
A. 結論:観葉植物の多くの目安として、10℃を下回らない環境が必要です。 品種ごとの厳密な下限温度とは別に、観葉植物の多くは10℃を下回ると元気をなくします。日陰は光が当たらないぶん土の水分も蒸発しにくく、寒さで根の吸水力が落ちているときに土が湿ったままだと、根を傷める原因になります。日陰に置く場合でも、室温は10℃以上を保つのが安心です。
日当たりの悪い部屋に緑を置きたい。その気持ちは、たいへんよく分かります。
薄暗い場所に一鉢あるだけで、部屋の空気はがらりとやわらかくなるものです。
だからこそ、「日陰でも育つ」というラベルだけで決めてしまわず、その部屋が冬にどれくらい冷え込むのかまで、少しだけ気にかけてあげてください。置き場所と寒さの数字。その両方が噛み合ったとき、植物は冬を越えて、春にまた新しい芽を伸ばしてくれます。
植物の育て方や、店先でよく受ける相談のカルテは、こちらのプロフィールにまとめてあります。
では、よい緑を。