
ショートショート|藤巻先輩と⼭⽥くんの沖縄旅⾏~ハブに気をつけて!
沖縄の離島は、青い海と白い砂浜に囲まれていた。
濃い緑の木々から、セミの声が聞こえている。
人影はなく、ただ波の音だけが、静かな島に響いていた。
そんな島の道を、藤巻先輩と山田くんが歩いている
「いやぁ、⼭⽥くん。沖縄の島っていうのはいいねぇ。まるで気持ちが洗われるようじゃないか」
「いいですよね、藤巻せんぱい︕ あまり⼈がいない島ってのが、またいいですね。早くコテージに⾏きましょうよ。もしかしたら⼥学⽣たちが泊まりに来てるかもしれないですよ」
「⼭⽥くん、ちょっと待って。オレ、そこの草むらでオシッコしてくるから」
「えっ? ちょっと、先輩。もう、こんなときに勘弁してくださいよ」
しばらくすると草むらから、叫び声が聞こえた。
「わぁあああああ︕ 助けてーーー︕ や…⼭⽥くん︕」
「どうしたんですか︖ 先輩︕」
「ハブに…ハブに咬まれた。うあぁあ、毒がーー︕ ⼭⽥くん、早く、毒を吸い出してくれー︕」
「わかりました。先輩、まかせてください。どこを? どこを咬まれたんですか︖」
「ちょうど、ズボンから出したところを…」
「えっ︖︕ どこ︖…」
「⼭⽥くん、早くーー︕ 早く吸い出してくれないと死んでしまう︕」
「いや、でも。あっ︕そのヘビ…真⾯⽬なヘビで、毒とかないんじゃないかな︖」
「真⾯⽬なハブなんていないよ︕ 毒もってるから︕ 早くー!」
「いや、あの……」
「何してるんだ⼭⽥くん︕ 早く! 死んでしまう」
「あの…毒が体全体にまわると危険ですから、切り落とした⽅が、あとあといいんじゃないでしょうか︖」
「よくないよ︕ とにかく毒を吸い出してくれーー。苦しい」
「あっ、先輩。あんなとこにキノコが︕」
「そんなものはいい︕︕ こっちだ︕ こっちのキノコをなんとかしてくれ」
「先輩〜、キノコったって、藤巻先輩のはエノキダケでしょ︖」
「松茸だよ︕ きみ、松茸好きだって⾔ってただろ︕ いいから、はやくー、苦しいーー︕︕」
「わかりましたよ。じゃ、イチニッサンっでいきますからね︕ いきますよ︕ イチ、ニ…えーっとなんだっけ︖ イチ、ニ、… あれっ、先輩、その先が思い出せない」
「サンだろ、サン︕ 早くー︕」
「そうでした。サンですよ、サン︕ 英語でサンは太陽ね。ところで先輩、なんかこういう綺麗な場所にいると、⼈⽣なんてどうでもいい気になりませんか。このまま毒に⾝を任せても…」
「⼭⽥くん︕」
「はいはい、わかってますよ。吸えばいいんでしょ、吸えば。私も覚悟を決めました︕ なんか緊張するなー。⾏きますよー」
「早くーーー」
「あれっ、緊張したらもお腹がイタくなってきちゃった。先輩、ちょっと待っててくださいね。」
「ちょっ、どこに行くんだ︕ ⼭⽥くん︕」
ガサガサと茂みの⾳がする。
「わあっーー、先輩ーーー︕ 」
「⼭⽥くーん、どうしたんだー︖」
「しゃがんだ途端に、肛⾨をハブに咬まれましたー︕」
「なんできみは、こんなトコでノグソなんかするんだ︕ ハブがいるだろ︕」
「せ…先輩、ボ…ボクのお尻の毒を吸いだしてくださーい。苦しい」
「…」
「先輩、早く~!」
「⼭⽥くん、…お互いに⾃分の毒は⾃分で吸い出そう。オレは、頑張ればなんとかなるかもしれない。もう少しで届きそうなんだ。あと少し。イテテテ…うぅ…背⾻が…軋む。もうちょっとで」
ポキッ(藤巻の背⾻が折れる⾳)
藤︓「はうッ︕」
ドサッ(藤巻が倒れる⾳)
⼭︓「先輩ぃ! ボクも⾃分で頑張りますから。でも先輩よりも、難易度が高いよ。でも吸い出さないと。届くかな。イテテ、イタイよ。うぅ…背⾻が…折れそう…苦しいー」
ポキッ(⼭⽥の背⾻が折れる⾳)
⼭︓「はうッ︕」
ドサッ(⼭⽥が倒れる⾳)
美しい沖縄の離島。
ただ波の音とセミの声だけが、静かな島に響いていた。