
四万十の夏、ヒラグシの醤油ラーメン
高知市へ向かう国道56号。四万十町に「ヒラグシ」という小さな食堂がある。
名前がいい。
ヒラグシ。『ヒグラシ』に似ている。蝉の声が降り注ぐ夏の日には、なおさらそう聞こえる。


日帰り取材の途中、名物のラーメンを注文。
鶏ガラとジャコのだしがきいた醤油味。チャーシュー、メンマ、かまぼこ。刻みネギを追加した。緑がどっさりとのった。
ひと口すする。
派手さはない。
けれど、酷暑に少しくたびれた胃袋には、やさしいスープが、じんわり染みてくる。
壁には手書きの短冊メニューがずらり。ラーメン、丼物、みそラーメン……。エアコンの風が通るたび、かすかに揺れる。
昼前には常連客が次々と入ってきた。
長く親しまれてきた食堂の日常。
ラーメンを食べ終え、店を出た。
冷房の効いた食堂から、一歩で真夏へ。
汗が吹き出す。
森からは蝉時雨が降ってくる。
この暑さも、この蝉の声も、過ぎてしまえば恋しくなるのだろう。
今年も夏の真ん中にいる。