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Photo by950am

noteでBL企画第23弾!第三者目線の覗き見聞き耳モブBL『花が散る』

    今月もやってまいりましたnoteでBL企画~🥳
    今回は特別企画ということで、匿名さんからのリクエストお題『第三者目線の覗き見聞き耳モブBL』です!

    詳細はこちら🔽

    「信夫がすでにモブみたいなもんだろ」と思ったのですが、名前すらない完全なるモブを登場させることにしました。
    クラスメイトの女子視点なんて誰かとネタが被りそうな気もしますが、その時はその時です。
    だってさ、玉ねぎとニンジンと豚肉で何か作ってって言われたら、何人かは豚汁作るし、何人かは肉じゃが作るよね?
    そういうことです。
    (どういうこと?)
    まぁ、肉じゃがの肉は牛派の人もいると思いますけど……。

    最初、主人公のモブ女の子だけの話にしたら、せっかくの特別企画なのに5000字もいかずに終わってしまったので、響とか月さんの推しとか「お前達登場しなくてもいいだろ」みたいなのを盛り込んだら、何とか7000字を超えました。
    信夫は登場しません!!

    では、ジャンルとあらすじと、本編をどうぞ!

    ◆ジャンル◆
    青春

    ◆あらすじ◆
    私のクラスメイトの音無くんは、同じくクラスメイトの市媛と早乙女くんをやけに二人きりにさせようとしている。
    市媛と早乙女くんの気持ちに気づいている私はその様子を見るとどこかモヤモヤしてしまうのだった。
    そんなある日の放課後、私は英語科準備室で音無くんの姿を見つけて――。

    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


    男よりも女の方が他人の恋愛感情に敏感だと思う。
    昔から「女の勘」って言葉があるくらいだ。
    それは生物学的な「女」なのか、精神的な「女」なのかわからないけれど。
    とりあえず、恋愛のれの字も頭にないようなうちのクラスの男子よりは、私の方が感情の機微を読み取る力はあるはず。

    体育の授業が終わり、教室に戻ろうとするクラスメイトを見ながら、そんなことを考える。
    私の少し前には、2人組の男子が歩いていた。

    「やべっ、パンツ履き忘れた」

    「また~? ボクはちゃんと履いてるもんねー!」

    山田中山の焦った声と、音無くんのおっとりした声が聞こえてくる。
    何だこの小学生みたいな会話は。

    ……うん、この2人よりは絶対に私の方が恋愛をわかっていると思う。
    恋愛の機微がわからないのは、男子が女子よりも精神的に幼いからではないだろうか。

    っていうか山田中山、ノーパンなの?

    9月に入り、まだ暑い日が続くけれど、男子は今日が今年最後の水泳の授業だったようだ。
    女子は先週の時点で水泳は終わっていて、今日は体育館で創作ダンスをやらされていた。去年もやったけど意味わからないよね、この単元。
    しかも男子はやらないの。男女平等の世の中なのに、男女差別の名残はいたるところにある。

    「俺、パンツ履いてくるわ!」

    「先行ってるね」

    あ、やっぱりノーパンだったんだ、山田中山。
    何でパンツあるのに履いてなかったんだろう。

    「ついでに市媛と早乙女の様子見て来る」

    「ほっときなよ~。授業遅れちゃうよ」

    その場にいない二人の名前が出てきて、私の心臓が跳ねた。
    不良っぽい雰囲気の市媛と、真面目でおとなしい早乙女くん。
    対照的で同じグループに属しているとは思えない二人が一緒にいるって、何があったんだろう?

    すっきりとしない気持ちのまま教室に戻った。

    授業が始まっても、市媛と早乙女くんの姿は見えない。
    二人の不在について尋ねられて、音無くんが「早乙女くんは体調不良で保健室にいます! 市媛くんはサボりで保健室に行くって言ってましたが今
    はわかりません!」と素直過ぎる回答をしていた。

    二人が一緒にいる理由はわかったけど、気分は晴れない。
    それにしても、音無くんって市媛と仲良かったよね?
    この子、友達にも容赦ないなぁ……。


    市媛と早乙女のことが頭から離れないまま、昼休みに突入した。
    さっきの授業、先生が話してたことは全く覚えていない。かろうじてノートは書いてあるけれど、ただ書いただけって感じ。

    今も友人の話を聞いてはいるものの、あまり頭に入ってない。
    適当に相槌を打っていたら、話題の矛先が突然変わった。

    「私のことより、アンタはどうなの?」

    「何で私?」

    確か、さっきまで「彼氏と別れるかも」なんて嘆いてなかったっけ。
    彼氏のいない私は関係なくない?

    「最近、そういう話聞かないじゃん。結構モテるのに。中学の時は彼氏途切れなかったでしょ」

    「えー……そんな時期もあったねぇ~。あれは若気の至りというやつで」

    何とか話を合わせることに成功した。
    確かにそういう時期はあった。
    でも、それは恋愛というものがわからなくて、告白されて、嫌じゃなかったからとりあえずOKしたってだけで。
    相手に対しての誠意も何もない、恋愛ごっこみたいなものだった。
    今だったらそんな軽率なことはしないだろう。

    「年寄りみたいなこと言って。どういう心境の変化?」

    怪訝そうな視線を向けられて困った私は、どうにか話題を変えようと試みる。

    「そ、そんなことよりさ! 市媛と早乙女くんって仲良いよね」

    咄嗟に出た話題がそれだった。
    私の頭はどれだけこのことを引きずっているのだろう。
    不自然にも程がある。

    「そうやって話題を逸らそうとする! 別に仲良さそうには見えないけど……音無くんと仲良いからじゃない?」

    私が苦し紛れに提供した話題にも、友人は律義にのってくれた。
    こういうところ、良い奴だよね。

    「仲良さそうには見えない」と言われ、「そんなことない」と返しそうになったが、すんでのところで耐えた。

    他の子は気づいてないみたいだけど、私にはわかる。
    早乙女くんは、市媛のことが好きだ。
    そして市媛も早乙女くんのことを気にかけてるように見える。
    一緒にいる場面は少ないけど、話している時の雰囲気とか表情から察してしまったのだ。

    それに私、見ちゃったもん。
    二人で放課後の教室にいるところ。
    イチャついてるとか、告白してるとか、そういうのじゃない。
    ただノートを広げて勉強をしているだけに見えたけど、二人の間に流れる空気は、邪魔しちゃいけないって思わせるようなものだった。

    恋愛の機微に敏感な女子でも、こういう決定的な場面を見ないと見抜けないものなのだろうか。
    男子と女子で、それほど違いはないのかもしれない。

    昼休みが終わって教室に戻ると、早乙女くんは席についていたけど市媛はいなかった。色んな人から体調を心配されてる早乙女くんを見て、体育の授業の後に感じた胸の嫌な感じが再発した。

    早乙女くんが男で良かったかも、なんて考えてしまった。
    もし、彼が女生徒だったら仲良くなんてできなかっただろう。
    自分の狭量さに呆れるけど、周囲からちやほやされる同性に敵意を感じるのは当然じゃない?
    やはり精神年齢が幼いのは、男子だけではなさそうだ。


    何かを意識してしまうと、どうしてもそっちに気を取られてしまうわけで。
    でも、市媛と早乙女くんのことに関していえば、そこから1週間くらいは何もなかった。
    教室では市媛はクラスの中心メンバーと一緒にいることが多いし、早乙女くんは大体1人で本読んでるし。
    私が知ってる光景って感じ。
    変わらない日常って安心する。

    でも、ずっと変わらないままのものなんてない。

    その日の体育は、男子も女子もグラウンドでの授業だった。
    女子は陸上競技。
    私はやる気になれなくて、生理痛を言い訳に見学をしていた。
    別に腹痛とか体のだるさはないけれど、生理の時に高跳びなんてする気が起きなかった。

    グラウンドの反対側では、男子がサッカーをしていた。
    市媛の姿が見えない。
    この前の授業といい、最近サボり過ぎだろ、って心の中で指摘した。

    ベンチに座って男子たちを眺めていると、数名が一か所に集まっているのが見えた。
    何かあったのかな、なんて様子を窺っていると、音無くんのよく通る声が聞こえてきた。

    「んもー! 何でこういう時にいないの! あのすっとこどっこいー!」

    怒っているのだろうが、声とか口調はアニメのキャラクターみたいで、怖さを感じない。
    「いない」という単語に、「ああ、市媛のことだな」なんて私は察してしまった。

    「ボク、ひめちゃん探してくる!」

    やっぱり、市媛のことだった。

    「何で市媛!?」

    クラスメイトが驚きの混ざったような大声で聞き返していた。
    それに対して、音無くんはさも当然のように答える。

    「だって、おとめちゃん貧血なんだよ? ひめちゃんに運んでもらわないと!」

    その会話で、何があったのか全て把握した。
    私たちにとっては疑問しかない答えだけど、彼にとっては何もおかしくない論理なのだろう。
    早乙女くんの名前が出てきて、「またか」と嫌な想像をしてしまう。

    「いや、市媛じゃなくても良いだろ、その役目!」

    誰かの叫ぶ声。
    本当にその通り。
    この前のプールの時も二人で保健室にいたみたいだし。
    なんで市媛なの?

    「桃色片思いのメンバーとして、探さないわけにはいかないな。音無、俺も手伝うぜ」

    山田中山が音無くんの肩を叩いたが、周囲の混乱は増すばかりだった。

    「何その会!?」

    周囲のクラスメイトが至極当然の質問をしている。
    うん、私も気になったよ。

    「先生、ひめちゃん探してきていいですか?」

    あ、音無くんが全部を無視した。
    こういうところ、すごいなぁって思う。

    「駄目です」

    「えっ……」

    体育教師は当然のように生徒の申し出を却下した。
    そりゃそうだ。

    「何でそれが許されると思ったんだよ!?」

    あからさまにガッカリする音無くんに対し、クラスメイトからのツッコミが飛ぶ。
    「だって」とふてくされた顔をする音無くんと呆れた顔のクラスメイトと体育教師。
    何故か頷いている山田中山。
    ……山田中山はさっき早乙女くん探しに行くとか言ってなかったっけ?
    桃色片思いの会はどうした?

    多勢に無勢とも言える状況だけど、音無くん頑固だからなぁ。
    どうなることやら。

    体育の見学をしてるふりをしつつ男子の様子を眺めていると、校舎からうちのクラスの担任が走ってくるのが見えた。保護者の登場だ。

    「何かありましたか?」

    「ちーちゃん!」

    嬉しそうな顔で音無くんが駆け寄っている。
    他の生徒の何とも言えない顔よ。
    千影先生が体育の授業に現れるのは今回が初じゃない。
    何回か見たことがある。

    前に跳び箱のテストがある時に、音無くんが「ちーちゃん見に来てね! ボク、8段跳べるよ!」ってアピールしてて、本当に見に来たって喜んでいたのを覚えている。
    千影先生、この時間は授業がないらしい。
    まさか、体育で何かあった時のために授業入れてないとか……ないよね?

    千影先生はしゃがんで不満そうな顔の音無くんに目線を合わせた。
    幼女みたいな容姿の音無くんと成人男性の先生がこうして並ぶと事案以外の何物でもないのだけれど、見慣れてるせいかしっくりくる組み合わせだ。
    市媛と早乙女くんの組み合わせとは大違い。

    「どうしたの、泣きそうな顔して。まさか……」

    「違います。やめてください。殺気放たないでください」

    急に体育教師が焦り出した。
    千影先生、普段は穏やかだけど怒ると怖いもんね。

    「おとめちゃん貧血なんだけど、ひめちゃん授業サボってていないの。だから、おとめちゃんを保健室に運べないの」

    ……音無くんの、その説明でわかるかな!?
    ずっとここで聞き耳を立てていた私が、ようやく把握できる程度の説明だよ?

    「ああ、そういうことか」

    先生、この説明でわかるんだ……。

    「音無くん、市媛くんは授業をサボってるから、こんなチャンスを逃すんだよ。自業自得です。それよりも早乙女くんを保健室に運んであげよう。保健係は?」

    「ひめちゃん」

    「次のホームルームで、保健係は変えようか。誰か早乙女くんと一緒に保健室に行ってくれるかな」

    千影先生の登場で、永遠に平行線になりそうだった会話が終わった。
    もう1つのグラウンドではクラスメイト達が高跳びをしていて、バーの落ちる音がした。

    私は何を見ていたのだろう。
    とんだ茶番だった。
    ここ最近感じていなかったもやもやが、久しぶりに胸に燻ぶった。
    この不快感には一向に慣れる気配がない。
    どうしたら、治まるのだろう。


    放課後、図書室で宿題を終わらせて帰ろうとしたところ、教室に忘れ物をしていることに気付いた。
    帰宅部の生徒は帰り、部活動のある生徒は教室にはいない。人のいない廊下は不気味で、長居したくない一心から速足で教室に向かう。
    英語科準備室の前を通ると、開けたままのドアの向こうにクラスメイトの姿を見つけた。
    何でこんなところに彼がいるのだろう、という疑問が出たが、私たちの担任の担当科目を思い出して、納得した。
    きっと音無くんは千影先生を待っているのだ。
    一人で部屋に佇む姿が気になり、つい声をかけてしまった。

    「音無くん?」

    「あれ~? こんな時間にどうしたの?」

    暗い室内とは対照的な明るい声。
    いつも教室で聞いているのんびりした声と人懐っこい笑顔にほっとした。

    「私は図書館に寄ってたんだ」

    「ボクはちーちゃん待ってるの。ね、時間ある? 暇だからお話相手になってよ。お菓子あるよ」

    私の予想は的中したみたいだ。
    まぁ、うちのクラスの全員が同じ予想をするだろうけど。
    体育の授業の時もだけど、先生、過保護だもんなぁ……。

    特に急いでる帰る用事はないし、目の前のクラスメイトの誘いを断ることがためらわれて、私は言われるままに英語科準備室に入った。
    室内に入ると、ぼんやりとしていた部屋の全容が見えた。
    机と椅子と棚しかない殺風景な部屋だ。
    それでも、音無くんのいる周辺だけは生活感があった。さっきまで宿題をしていたのか、教科書とノートが開かれたまま置かれていた。

    うちの学校は科目ごとに準備室がある。大きな地図を使う社会科とか実験がある理科の準備室は入ったことがあるけど、英語や国語の準備室には用がなかった。

    「ルマンド好き? たくさんあるから食べて」

    学校ではお菓子の持ち込みは禁止されているのに、音無くんは堂々と渡してきた。紫色のパッケージ。

    「ありがと。ルマンド好きだから嬉しいよ」

    机の下に、ダンボールいっぱいのルマンドが見えた。
    ……箱買い?
    そんなにルマンドが好きなのだろうか。
    でも、音無くんがルマンド好きって言ったら、千影先生買い占めそう。

    「飲み物、水でいい? コーヒー淹れる機械がいつもあるんだけど、見当たらなくて。ちーちゃんが職員室に持ってっちゃったみたい」

    お構いなく、と言ったけど、音無くんは紙コップにミネラルウォーターを入れてくれた。見ると部屋の隅に小さな冷蔵庫があった。戸棚にはマグカップが並んでいる。放課後に過ごすには、意外と充実している部屋なのかもしれない。

    私は紙コップに口をつけ、一口飲んだ。
    水は……水だ。
    でも、冷えた水は美味しい。

    私が喉を潤していると、音無くんが話しかけてきた。

    「実は弁論大会の作文、ボクはまだ手をつけてないんだ。何書こうかな~」

    彼は聞き上手だし、さりげなく話題をふるのも上手だ。
    あまり教室での接点はないけれど、ルマンドをつまみながらの雑談は十分に盛り上がった。

    校庭から運動部の掛け声が聞こえる。
    バットがボールを打つ音も聞こえてくるから、きっと今日は野球部が練習をしているのだろう。
    ふいに、今日の体育の授業での出来事を思い出した。
    音無くんの不可思議な言動。クラスメイトたちはいつものことだと気にもしていなかったようだけど、体育教師は混乱していた。
    あの後、どうなったのかはわからない。
    次の授業では早乙女君の姿も市媛の姿もなかったけど。

    「……音無くんはさぁ、何で早乙女くんと市媛を一緒にさせたいの?」

    この質問には、私の純粋な疑問と、一握りの不満が混ざっていた。

    「体育の授業の話? 聞こえてたんだ」

    不思議そうな顔をする音無くんを見て、失言だったと後悔した。
    あの場に私はいなかった。
    聞き耳を立てていたのだと暴露したようなものだ。

    「ごめん、変なこと言った。忘れて」

    こんな話をしちゃいけなかった。
    さっさと話を打ち止めにしたかったのに、音無くんはそれを許してくれなかった。
    はっきりとした彼の声が耳に入ってくる。

    「友達だから」

    「え?」

    「おとめちゃんも、ひめちゃんも、友達だから。友達のことは、応援したくなるでしょ?」

    音無くんが歌うように話す。

    「あの2人、ほんとは両思いなの。でも、それをボクが言っちゃうのは違うでしょ。だから気づいて欲しいの」

    まっすぐにこちらを見つめる大きな目から視線がはずせなかった。
    何だろう。
    可愛いんだけど、威圧感があるというか。
    千影先生と同じだ。
    御しやすそうに見えるのに、どこか逆らえない雰囲気。

    「君は? いないの、お付き合いしてる人とか、好きな人とか」

    たわいもない雑談。高校生ならよくあるコイバナ。
    普通に答えればいいのに、この質問に間違えたことを言ってはいけないと感じてしまった。
    音無くんの声は穏やかで優しい。なのに、まるで尋問を受けているような気持ちになる。

    「私? 私は特に」

    務めて普通を装ったが、不自然に愛想のない声が出てしまった。
    口から漏れた音が相手にどんな印象を与えるのか考えると、一気に不安になった。

    「じゃあね、良いこと教えてあげる!」

    どうやら私の回答は正解だったようだ。
    正解とか、不正解とかないのだけれど。
    音無くんの笑顔と明るい声にどこか安堵している自分がいた。

    「B組の御子柴くん、知ってる? サッカー部の。君のこと、可愛いって言ってたよ」

    「……ほんとに?」

    にわかには信じられなかった。
    私と御子柴くんはほとんど接点がない。たまに廊下とか全校朝礼とかですれ違ったり見かけたりするけど、本当にそれくらいで。

    「うん。御子柴くん、去年同じクラスで仲良くしてたの。今もよくお話するんだけど、その時に聞いたんだ」

    機嫌良く話す姿を可愛いと思う反面、どこか複雑な気持ちになった。

    やっぱり男は他人の恋愛感情に疎い。
    だって私がずっと市媛のことを好きだったって、気づいてないんだもん。

    音無くんは早乙女くんの恋敵といえる私に対して、別の男を薦めてきている。
    そのキラキラとした瞳は純粋そのもので、少しの悪意も感じられない。
    きっと彼の中では「とても良いことをしている」という認識なのだろう。

    残酷だね、音無くん。
    その無邪気さが今は憎らしい。

    市媛の気持ちが早乙女くんに向かっているのはわかっていたけど、第三者に現実を突き付けられると胸が痛む。
    まだ二人は付き合っていないし、私にもチャンスはあるかな、なんていう淡い期待が散っていくのを感じた。

    私は溜息をひとつ吐いて、まばたきをした。
    そして、音無くんの目を見つめ直す。

    「B組の御子柴くん……あのチャラそうな人だよね」

    「見た目はちょっと軽そうだけど、優しいよ。お菓子くれるし、お掃除とか手伝ってくれるし。それから……あっ、化学とか理系科目得意だよ。文武両道!」

    一生懸命友人の良いところを挙げる様子が微笑ましい。御子柴くんのことはよく知らないけど、悪い人ではないんだな、というのがわかる。
    変な噂も聞かないしね。

    「音無くんがそう言うなら……紹介してもらおうかな」

    気のあるような返事をすると、音無くんは嬉しそうな顔を見せた。
    友だちのことは応援したいと言っていたし、こういうお節介をするのが好きなんだろう。

    脈無しの恋にいつまでも囚われるほど、私も暇じゃない。
    音無くんが天使みたいな微笑みを見せてくれるから、それにのっかってもいいかもしれない。
    そう、思っただけ。


    放課後の英語教諭室。
    話し相手もおらず手持ち無沙汰になった響は、窓から外の様子を窺った。
    グラウンドでは野球部の主将が部員に何か呼び掛けている。後片付けでもしているのだろうか。彼らはもうすぐ部活動を終え、帰るのだろう。
    遠くに夕焼けが見える。
    だが、響の待ち人はしばらくは来そうにない。

    視線を移すと、先程まで一緒にいたクラスメイトが校門を通り過ぎようとしているところだった。その足取りは軽い。
    彼女の後ろ姿を見下ろしながら響は呟いた。

    「おとめちゃんとひめちゃんの邪魔、しないでね?」

    《了》

    ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

    ストーリーよりも何よりも、体育の授業ってどんなものだったかを想像するのが大変でした😂

    うちの高校は男女別だったけど、一般的にはどうなんだろう。
    一緒の授業の学校もあると思うけど、響たちの通ってる学校は私立だし、男女一緒に体育の授業は受けさせないだろうな~というイメージがあります。

    プールも室内プールだと季節感がないので、この学校は外にプールがある設定。
    でも室内プールじゃない場合って、男女別の授業ってどうするんだろう? と思って、そこも調べて書きました。
    夏しかできないし、男女別にすると授業時間減っちゃうし。
    と疑問だったのですが、2クラス合同で授業とかするんだ。ほうほう。
    勉強になりました✨

    タイトルは宮本輝の「青が散る」のパクリです。

    今回、いつもより大変でした!
    視点がモブってことと、2人が一緒の空間にいないこと、っていう最低限の条件はこなせたかしら?
    BL要素は薄れちゃったけど、いつもこんなもんだからいいでしょ。

    匿名のリクエスト主さんが気に入る作品になってるといいなぁと思いつつ、「他の参加者さんがめっちゃ良い作品を書くだろうから、私はこれでいいか!」と開き直っております😂

    ではでは、私は文フリの準備に戻ります~!
    読むのが遅くなりそうですが、皆さんの作品も楽しみにしております✨

     
     
    会社勤めの傍ら執筆してます。エブリスタへの投稿がメイン。 オフラインでは文学フリマに出没します。次回は2026年11月の文学フリマ東京43に参加予定! noteでは気ままに日々の雑記を綴っていくつもりです。 疲れない程度に更新します。

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