
虚無僧の妖怪
某駅前、
いつものように何曲か吹き、
さて、次は何を吹こうか…とか考えながら尺八を手に突っ立っていたところ、
「うわっ、なんかいる!」
という声が聞こえ、女子高生3人組が通り過ぎて行った。
私はよく驚かれる。
のけぞってびっくりする人もいる。
子どもなんかは声をあげて驚く。
地面を見て歩いていたりスマホを見ていて、パッと目を上げたら、突然編笠被った黒っぽい格好の人が突っ立っているのだ。そりゃびっくりする。
托鉢の僧侶など見かけたことがないなら尚更、この風体の人は一体何なのか、怪し過ぎる。
もしかしたら、妖怪っぽいのかな、と、ふと思った。
自称、虚無僧の幽霊です👻
などとプロフィールに書いているのことだし、
異質さは幽霊とはあまり変わらないかもしれない。

アカウント画像、これにしようかな…
ビックリされるのとは逆に、編笠を被り尺八を吹いているすぐ側で、二、三人の人が集まってお喋りが始まり、尺八の音も虚無僧も全く聞こえない見えない状態で、まさに幽霊状態の時もある。
というか、ほとんどの場合が幽霊状態ではある…。
虚無僧生活をしていると、世間との間にすっかり大きな溝、または見えない壁のようなものが築き上げられてしまったかのように感じるのは気のせいではなく、何となく壁が見えるようになってきた。そろそろ本当に妖怪っぽくなってきてしまったのかも知れない。行く末はやはり砂かけ婆か…。
自分自身がもはや人間の枠に入っていないかもしれないということを実感しつつ、その方が気が楽で良いよな、などとほくそ笑んでおりましたら、
赤いヘルプマークを白い杖につけた男性が、
「綺麗な音ですね、暑い中頑張ってください」
と声をかけてくれました。
こんなこと、頑張る必要ないかもしれませんけど、頑張ります。涙
ところで、
虚無僧の妖怪、おりました。
猪口暮露

国立国会図書館デジタルコレクション
お猪口被ってます。
めっちゃ可愛い妖怪、笑
妖怪っぽくない。
酒に絡んでくるあたりがまた何とも…。
猪口暮露
明皇あるとき書を見給ふに、御机の上に小童あらはる。明皇叱したまへば、臣はこれ墨の精なりと奏してきへうせけるよし。此怪もその類かと、 夢のうちにおもひぬ。
このなんとも愛らしい、お猪口を笠にして、箱から出てくる虚無僧たちは、中国皇帝の逸話と、お猪口と、暮露とをひっかけて創作された妖怪らしい。見た目は虚無僧まんまですけどね。
明皇とは、中国・唐王朝の第6代皇帝玄宗(685~762)で、この妖怪が、玄宗皇帝が書を見ていたら机の上に現れた。なんじゃこりゃ!と叱ったら、家来はこれは墨の精で、演奏して消え失せますよと言う。鍾馗に退治された鬼のようなものか、と夢の中で思った、とのこと。
鍾馗とは、
しょう‐き【鍾馗】
( 中国、唐の開元年中、玄宗皇帝の夢に終南山の進士鍾馗が現われ、魔を祓(はら)い、病気をなおしたという故事に基づく ) 中国で、疫病神(えきびょうがみ)を追いはらい魔を除くと信ぜられた神。日本では、その像を、五月五日の端午の節句ののぼりに描いたり、五月人形に作ったり、魔よけの人形にしたりする。その像は、目が大きく、頬からあごにかけて濃いひげをはやし、黒い衣冠をつけ、長ぐつをはき、右手に剣を抜き持ち、時に小鬼をつかんでいる。強い者の権化・象徴とされる。
端午の節句ののぼりの絵は、
手描き武者のぼり制作いわき絵のぼり吉田さんのHPにあります↓
夢か・・・。
尺八吹いて消えていくなら、ウチにも来て欲しい。
この絵を描いたのは、妖怪画を多く描いたことで世に知られる鳥山石燕(1712-1788年)。今の大河ドラマでもお馴染みのようです。
『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)は、1784年(天明4年)に刊行された鳥山石燕の妖怪画集。
因みに、画集の表紙には『百鬼徒然袋』、目次には『百器徒然袋』とある。


ついでに、『百鬼徒然袋 巻之中』にある、
「暮露々々団」

国立国会図書館デジタルコレクション
「暮露々々団」
普化禅宗を虚無僧と言ふ。虚無空じゃくをむねとして、いたるところ薦むしろに座してもたれりとするゆへ、薦僧とも言ふよし。職人づくし歌合に、暮露々々ともよめれば、かの世捨人のきふるせるぼろぶとんにやと、夢の中におもひぬ。
暮露とボロ布団をかけた、ダジャレ的な展開で生まれた妖怪。
一体どんな悪さをするのやら。
石燕は、『徒然草』からその連想を膨らませていると言うことで、『徒然草』には宿河原のぼろぼろの話がある。
暮露が登場するのは「職人尽歌合」ではなく、「七十一番職人歌合」↓
コムジョの妖怪、色々考えてみましたけど、
夜な夜な竹の音が聞こえるが、地下足袋の足跡が多数残されている。
前方から「不生不滅」と書いた偈箱が地面をズズッズズッと進んでくる。
便所から虚無女の竹音、ツレーならぬ「クレ〜〜〜クレ〜〜〜」と聞こえてくる。
うーん、どれもイマイチ。
また思いついたら絵に描いてみます。
私からしてみれば、私以外の人全員が妖怪なんですけどね笑
参考文献
稲田篤信 田中直日編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』国書刊行会
村上健司編『妖怪事典』毎日新聞社