顧客視点は、そもそも顧客は無限にいるので、めっちゃ難しい
マーケティングでは、よく「顧客視点で考えましょう」と言われます。
言っていること自体はその通りです。
ただ、実際にやろうとするとかなり難しい。
なぜ難しいのか。
結論、自社視点は基本的に1つなのに対して、顧客視点は複数存在するからです。

自社から見れば、視点は1つ
自社視点で考えることは、それほど難しくありません。
例えば樹脂シートを製造している会社であれば、
どんな製品を作っているのか
どんな材質を扱っているのか
どんな加工ができるのか
どんな技術的な強みがあるのか
を整理すればよいからです。
もちろん、これ自体も簡単ではありません。
ただし、起点はあくまで「自社」です。
自社という1つの場所から外を見るので、考える方向は比較的シンプルです。
一方で、顧客は複数存在する
顧客視点になると、一気に話が複雑になります。
そもそも「顧客」という1人の人間がいるわけではありません。
同じ製品でも、
自動車業界の人が見る場合もあれば、建材業界の人が見る場合もあります。
研究開発の人が見る場合もあれば、設計、生産技術、購買の人が見る場合もあります。
さらに、それぞれが抱えている課題も違います。
ある人は「軽量化したい」と考えているかもしれません。
ある人は「制振性を上げたい」と考えているかもしれません。
ある人は「PVCの代替材料を探している」かもしれません。
また別の人は、そもそも材料名を知らず、「こういう用途に使える素材はないか」というところから探しているかもしれません。
つまり顧客視点とは、単純に
「自社視点を顧客視点にひっくり返す」
という話ではありません。
1つの視点を、複数の視点へ展開する作業です。
ここに顧客視点の難しさがあります。
顧客ごとに、見えている世界が違う

さらに難しいのは、顧客によって「製品の見え方」そのものが違うことです。
メーカーから見れば、1つの製品です。
しかし顧客から見ると、その製品にたどり着く入口はいくつもあります。
例えば同じシート材でも、
「樹脂シート」と検索する人もいれば、
「難燃 シート」と検索する人もいます。
「自動車 防音 材料」と探す人もいれば、
「PVC 代替 素材」から探す人もいる。
同じ製品なのに、顧客が立っている場所によって、見つけ方がまったく違います。
ここを理解しないままWebサイトを作ると、自社が使っている製品名や技術名だけが並んだサイトになります。
その結果、その言葉を知っている人にしか見つけてもらえません。
Webマーケティングは「定置網漁」

私は、製造業のWebマーケティングは定置網漁に近いと思っています。
魚がどこを泳いでいるのかを考えて、通り道に網を張っておく。
Webマーケティングも同じです。
顧客が、
用途から探すのであれば、用途の場所に網を張る。
課題から探すのであれば、課題の場所に網を張る。
材料から探すのであれば、材料の場所に網を張る。
業界から探すのであれば、業界の場所に網を張る。
例えば、
製品
技術
材料
用途
業界
課題
加工方法
比較
評価方法
といった形で、顧客が存在しそうな場所にそれぞれ入口を作っていきます。
SEOでキーワードを広げることも、製品ページだけではなく用途ページや課題解決ページを作ることも、基本的には同じ考え方です。
顧客がいる可能性のある場所に、複数の網を張る。
これがWebサイトの役割だと考えています。
だから顧客視点は、思考負荷が高い
「顧客視点が大切です」
という言葉だけを見ると、非常に当たり前に聞こえます。
ただ、実務としてはかなり思考負荷の高い作業です。
自社視点であれば、
自社 → 製品 → 技術 → 特徴
と考えればよい。
しかし顧客視点では、
誰が顧客なのか。
どの業界にいるのか。
どんな立場なのか。
何に困っているのか。
どんな言葉を使うのか。
何を起点に情報を探すのか。
どのタイミングで自社製品が候補に入るのか。
まで考えなければなりません。
しかも、それを顧客の数だけ考える必要があります。
だから難しいのです。
顧客視点とは「複眼」で市場を見ること
顧客視点というと、
「お客様の気持ちになって考えましょう」
という精神論になりがちです。
ただ、Webマーケティングにおいて必要なのは、もう少し構造的な話だと思っています。
自社視点は単眼です。
顧客視点は複眼です。
1つの製品を、異なる業界、異なる用途、異なる課題、異なる担当者の視点から何度も見直していく。
そして、それぞれの顧客が存在する場所にWeb上の入口を作る。
その結果として、Webサイトは単なる「自社を紹介する場所」ではなくなります。
複数の市場に、複数の定置網を張るための装置になります。

顧客視点が難しいのは、顧客のことを考えることが難しいからではありません。
顧客が複数存在し、その数だけ異なる世界の見え方が存在するからです。
製造業のWebマーケティングを考えるうえでは、この前提を持っているかどうかで、Webサイトの作り方はかなり変わると思っています。