
『パン屋に生まれて』お題・焼きたてのパン #風まかせ文芸部
*参加させて頂きます。よろしくお願い致します。<( _ _ )>~✨
*パン屋に生まれて
俺の実家はパン屋だった。
隣接していた住居で「新作だ!」と言って、
父にいつも、いつも・・・毒見させられていた。
美味いと思えるものも、そうでないものもあった。
パンの焼ける香ばしい匂いと、父と、母の笑顔と
笑いに満ちた温かい幸せがあった。
あの日・・・・までは ──
☆☆☆
小6の時、部活の夏休み合宿で家を離れていた時、
家が全焼して父と母が死んだ。
放火の疑いもあったが事件にはならなかった。
俺は・・・
その日以来、パンを食べることをやめた。
☆☆☆☆
年月が過ぎて・・・様々なことの後に
俺は好きな人と結婚した。
女の子も生まれて・・・幸せだった。
だが、そんな家庭にいても呪われたように、
頑なにパンを口にすることはなかった。
☆☆☆
娘が小3になった ある日。
「学校の家庭科室で・・・わたしが作ったの ♪」と言って
娘は初めて作って持ち帰ったパンを、もう一度焼いて・・・
俺の目の前に・・・置いた。
妻が心配そうに・・・それでも、優しい笑顔で見ていた。
不意に
父の・・・覗き込むような顔が浮かんだ。
母の・・・いつもの笑顔が浮かんだ。
今、俺の前には
妻と娘の・・・俺を見つめる眼があった。
俺は・・・俺は
二人の見ている前で
娘が初めて作った焼きたてのパンを
・・・・泣きながら ☆
夢中で 食べていた!!!!
《了》
*このお話はフィクションです。